山上信吾・駐オーストラリア大使が21日、キャンベラのナショナル・プレス・クラブで、日豪関係の現状と今後の展望について講演しました。日本大使がこの場で講演を行うのは6年ぶりとなります。
大使は、日豪の関係は貿易や投資だけでなく、共通の価値観、戦力的利益に支えられ、また地域と世界の秩序を育み、平和を守ることに努めてきたとし、今後の関係については、講演当時に開催されていた五輪ソフトボールの日豪戦を背景に、「満塁ホームランが打てる状態にある」と述べました。その一方で、日豪両国が直面している機会と課題に満足する余裕はなく、今後15年に渡る日豪の未来像を3つの角度、1)経済パートナーシップ 2)気候変動パートナーシップ、3)安全保障パートナーシップから、描きました。
経済パートナーシップについては、菅首相とモリソン首相の言葉を引用し、「貿易は政治的圧力をかける道具として使われるべきではない」と強調し、オーストラリアが現在進行中の貿易紛争を、対話によって解決しようとする努力を、日本は全面的に支持し、称賛すると述べました。
気候変動パートナーシップついては、日本は協力体制であることを示し、先月の日豪首脳会議で一致した技術を通じた脱炭素化に触れ、オーストラリアが水素製造と輸出の世界的リーダーになることを期待すると述べました。日本は2030年までに、年間300万トンの水素を利用することを目指しており、その一部が、世界初のパイロット・プロジェクトでもある、豪ラトローブ・バレーの水素エネルギー・サプライ・チェーンで生産されること、日本の民間企業が水素の未来を実現したいという強い思いがあることなどを例に挙げ、両国のパートナーシップを強調しました。
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日豪首脳会談 脱炭素化へ向けたパートナーシップで一致
「東シナ海の重要性について言及せずには帰れない」と述べた山上大使は、この地域は南シナ海と同様に、オーストラリアの安全保障と経済的利益にとっても極めて重要な場所であり、日豪がコミュニケーションと協力を深める必要があると訴えました。
その具体的な協力についてSBSニュースから問われると、5月に行われた日米豪仏共同訓練「ARC21」、合同軍事演習、情報共有などを例に挙げ、「協力できる範囲は日に日に拡大している」と述べました。
「私たちが協力してこそ、法のもと、すべての国が平等に平和、繁栄、安定を享受できる自由で開かれたインド太平洋を確保することができます」
最後に山上大使は、日豪の最大の財産は、尊敬と寛容によって強化され続けてきた「相互信頼」であるとし、これを基盤に、何でもやり遂げることができると述べました。
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