未曾有の被害をもたらした東日本大震災から10年。
福島第一原発事故により避難を余儀なくされている人々は、復興作業が進む現在でも3万人に及ぶと言われています。そしてここ遠く離れたオーストラリアでも、震災から10年が経過した今も、福島原発事故により心を痛めている方たちがいます。
ハイライト
- 爆発した福島第一原発からはオーストラリアのウランが確認されている
- ウラン採掘土地の伝統的所有者は、深い義務感と責任感を感じている
- 放射能除染は現在も続き、何万人もの人々が今でも避難を余儀なくされている
爆発した福島第一原発からは、南オーストラリア州・オリンピック・ダム(BHP社)と、今年1月に閉鎖されたノーザンテリトリーのレンジャー鉱山で採掘されたウランが含まれていました。

ノーベル平和賞を受賞したICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)の共同創設者であり、IPPNW(核戦争防止国際医師会議)の共同会長でもあるティルマン・ラフ博士は、「オーストラリアと福島は深い関係がある」と言います。
「アボリジニやトレス海峡諸島の人々は、自分たちの土地や水域からもたらされる影響に対して、深い文化的な義務感と責任感を持っている」とラフ博士は述べます。
オーストラリアでは、「7万年以上にわたって土地を所有してきたファースト・ネーションズの人々の意志に反して」ウランが採掘されてきたと言うラフ博士。
「オーストラリアで採掘された岩石は日本で放射性汚染物となり、地下水や太平洋に漏れ続けています。このことは、伝統的な土地の所有者たちに大きな苦悩をもたらしているのです」

レンジャー鉱山が位置するカカドゥのミラル族の長老、イヴォンヌ・マルガルさんは震災直後、ミラル族を代表して、国連事務総長に手紙を書き、福島の人々への悲しみと、原子力産業に反対し続けていることを表明しました。
書簡に対する正式な回答は国連からありませんでしたが、世界中の人がミラル族の思いを知ることができました。
「ミラル族の土地と、原発事故の繋がりを共有することは重要です」と語るのは、ミラル族を代表するグンジェイミ先住民公社。
世界の人々には、私たちミラル族がウランの影響について責任を感じていることを理解してほしい
「世界の人々には、私たちミラル族が、ウランの影響について責任を感じていることを理解してほしい」
レンジャー鉱山は今年1月に閉鎖されましたが、ミラル族の人々は40年以上にも渡り、ウラン採掘の影響を受けながら暮らしてきたと言います。

「私たちは、その危険性と長期にわたる影響を身をもって理解しています」
「ウランの供給をはじめ、1990年代のジャビルカウラン鉱山の反対運動における日本コミュニティによる支援、そして福島での悲劇的な出来事と、日本とミラル族には長年の繋がりがあります」
2014年には、震災当時の首相であった菅直人氏がミラル族を訪問し、ウランによる影響がミラル族の土地にもあることを確認しました。
「日本では多くの人々が福島原発事故の影響を未だに受けていることを知り、ミラル族は悲しんでいます。私たちミラル族の思いの中にはいつも日本の皆さんがいることを知ってほしいです」

福島原発事故から10年
日本政府はこの10年間、表土除去を積極的に行ってきましたが、取り除かれた表土や草木などの処理は現在でも課題となっています。
福島の教訓を世界へ発信するNPO「ふくしま地球市民発伝所」の藤岡恵美子事務局長は、「放射線廃棄物は、ただ移動されただけで、私たちの身の回りからは消えていません」と語ります。

原発から再生可能エネルギーへ
「福島原発事故の再発やそれ以上の事態を防ぐ唯一の方法は、エネルギー効率と再生可能エネルギーを急速に構築し、原子力発電を段階的に廃止することです。そして日本はすでにそれを証明してきました」とラフ教授は語ります。
日本は震災以前、エネルギーの約30%を原子力発電で供給してきましたが、震災後は国内の原子力発電所をすべて停止。現在再稼働しているのはわずか4基に留まります。一方で原子力発電所の停止により、 化石燃料への依存度もさらに高まりました。
2050年までにカーボンニュートラルを目指す日本ですが、現在エネルギーの90%を外国からの輸入に頼っているほか、再生可能エネルギーの導入も世界に比べて遅れているため、大きな課題となっています。
世界原子力協会のシニアコミュニケーションマネージャーであるジョナサン・コブ博士によると、日本の原子力発電が停止したことで、高価で汚染度の高い化石燃料への依存度がさらに高まり、電力の4分の3は石炭、石油、ガスで賄われるようになったと言います。
「日本人にとって、これは健康にも経済にも、そして地球環境にも悪い影響を与えています」

「自然エネルギーだけに頼り、2050年までにカーボンニュートラルを目指すのは、非常にリスクのある提案です」とコブ博士はSBS日本語放送に語りました。
「日本では、風力や太陽光などの間欠的な自然エネルギーに成長のチャンスがあります。しかし、水力発電をさらに発展させる機会は限られており、エネルギー貯蔵も未熟であるため、このような断続的な発電だけでは、産業界や消費者が必要とする安定した電力供給を行うことはできないでしょう」
コブ博士は、日本の原子炉は詳細な調査が行われており、より厳格な新しい規制体制の下でのみ再稼働が許可されているとし、日本の梶山弘志エネルギー大臣が先日、ファインナンシャル・タイムズ紙に対し、2050年までに温室効果ガスを実質「ゼロ」にするという目標を達成するためには、原子力エネルギーが「不可欠」であると述べたことを指摘しています。
オーストラリアは、経済的に回収可能なウラン資源の40%を有し、世界のウラン取引の30%を占めていると言われています。しかし、ラフ博士によれば、「被害の割には経済への貢献度は低い」と言います。
年間10億ドルを超えることはなく、雇用者数も数百人にすぎない。「これは、オーストラリアのチーズやワインの輸出額よりも少ないのです」とラフ博士は述べています。
「オーストラリアは放射線となる原料を供給するのではなく、世界における自然エネルギーのリーダーになるべきなのです」
火木土の夜10時はおやすみ前にSBSの日本語ラジオ!
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