2022/2023年度連邦予算案 「勝ち組」と「負け組」は?

急上昇する生活コストが主な焦点となった、2022/23年度年度の連邦予算案。「勝ち組」と「負け組」を見てみましょう。

Winners and losers

Source: SBS

600万人へ支給される250ドルの一時金から、ガソリン価格の軽減措置まで、ジョシュ・フライデンバーグ蔵相が昨夜発表した2022/23年度連邦予算案。「勝ち組」と「負け組」に分けてその主な内容を見てみましょう。
Winners
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労働者と求職者

ジョシュ・フライデンバーグ蔵相は予算発表の冒頭でまず、国内の失業率について述べました。

現在の失業率は4%で、これは「過去48年間で最低水準」。9月期にはさらに減少し3.75%となる見込みで、この逼迫した労働市場は、労働者や求職者にとっては朗報です。

賃金の伸びも「過去10年間で最も速いペース」で加速するとされており、賃金価格指数の伸びは2021-22年の2.75%から2022-23年には3.25%に上昇すると予測されています。

「逼迫した労働市場により賃金は急速に回復しており、平均収入は2022年6月期までの1年間を通じて時間当たり5%増加する見込み」と予算書は記しています。

国防

2022/23年度予算案では、防衛と安全保障が重要な柱となっており、政府は「世界は戦略的競争が激化する時代に入った」として、ルールに基づく国際秩序が「脅かされている」と警告しています。

「この地域で、そして世界で、特に自己主張を強める中国において、この現象が起きている」と政府は述べています。

これを受け、2022/23年度予算案では、オーストラリアの攻撃的・防御的サイバー能力を開発するために99億ドルという巨額の予算が組まれており、このプログラムは「レッドスパイス」と名付けられています。

オーストラリアの国防費は、2021/22年の446億2000万ドル(GDP比2.1%)から、2022/23年には480億ドル(GDP比2.2%近く)まで増加することになります。

アフガニスタン難民

タリバン政権を逃れ来豪するアフガニスタンの難民は、オーストラリアで新たな生活を始められる可能性が高くなります。政府は、2022/23年から4年間にわたり、1万6500人のアフガニスタン人に対し、人道的ビザを提供することを発表しました。

これは人道的ビザプログラムにより、あらゆる国の人々に提供される年間1万3750人分のビザに追加して提供されます。

低・中所得者

政府はパンデミックやウクライナ侵攻、異常気象などによる、生活面のプレッシャーを緩和するため、家庭や企業に「一時的かつ対象を絞った」救済を約束しました。

これには1000万人以上の低・中所得者を対象とした420ドルの控除額(タックス・オフセット)も含まれ、2021/22年のタックス・リターンを提出する2022年7月1日から適用される予定です。この一回限りの支払いにより、41億ドルの税収減が見込まれています。

年金受給者及びコンセッションカード保有者

対象となるオーストラリアの年金受給者、生活保護受給者、退役軍人、コンセッションカード保有者には250ドルの一時金が支払われます。

これは600万人を対象に自動的に支払われ、その総額は15億ドルとなります。恩恵を受ける人の半数以上は年金生活者です。

経済

本予算では、「労働市場と個人消費の勢いが予想以上に強い」ことを背景に、経済成長率の見通しを上方修正しました。

実質GDPは2021-22年に4.25%、2022-23年に3.5%、2023-24年、2024-25年、2025-26年に2.5%成長すると予想されています。

ドライバー

燃料費が1リットルあたり2ドルを超えて高騰している中、政府は6ヵ月間、ガソリンとディーゼルの燃料税(物品税)を半額にします。ドライバーにとっては1リットルあたり22セントの節約になる一方で、国は30億ドルの負担を抱えることになります。政府は、この減税により、少なくとも1台の車を所有する世帯に平均約300ドルの恩恵がもたらされるとしています。

フライデンバーズ蔵相は、燃料税の引き下げは家庭を助け、「インフレに下方圧力」をかけると主張しています。

「これは6ヵ月間の一時的な措置ですが、生活費の軽減に繋がります」と記者団に語りました。

消費者監視団体は、小売業者が「燃料税の引き下げを、できるだけ早く消費者へ還元する」ことを期待していると述べています。

オーストラリア競争・消費者委員会(ACCC)のジーナ・キャス・ゴットリーブ議長は今回の発表を受け、今後 6 ヵ月間、委員会の石油チームは価格監視業務に注力し、小売業者が消費者 に燃料税の引き下げをしっかり還元しているかを見極めるとしました。

中小企業

1万人分の技能労働者の受け入れ枠が増えることで、労働者不足に悩む中小企業は期待を寄せられます。

また2022/23年の会計年度には、バックパッカー希望者のための1万1,000人の受け入れが追加されます。

オーストラリア地方部

政府は、「オーストラリアが生産と成長の新たなフロンティアに突き進むための変革的インフラ」に71億ドルを注ぎ込むことを約束しており、「我が国の繁栄」を後押しする鍵と考えられている4つの地域に焦点を当てています。

  • アジアへの玄関口であるダーウィンを通じてノーザンテリトリーの輸出を確保するためのインフラ整備に26億ドル。さらに、政府の89億ドルの国家水グリッド基金から3億60万ドルを拠出し、ダーウィン広域圏の水の安全保障を向上させる。
  • クイーンズランド州北部および中部における水インフラおよびサプライチェーンプロジェクトのために17億ドルを拠出する。
  • ピルバラ地域において、低排出ガス生産の増加による北西部経済の多角化を支援するために 15 億ドルを拠出する。
  • ハンター地域には、サプライチェーンの効率を高め、輸出を促進するための輸送および港湾インフラプロジェクトに7億5000万ドルを拠出する。
Losers
Source: SBS

賃借人と住宅市場からはじき出された人々

オーストラリアの多くの地域で住宅価格と家賃が高騰しており、政府は何千人ものオーストラリア人が住宅市場に参入する足がかりとなるような制度に何百万ドルもつぎ込んでいます。

しかし、経済学者のガブリエラ・デスーザ氏によると、これらの制度は住宅の購入可能性を改善し、多くの人がマイホームを持つことを現実のものにするためにはほとんど役に立たないと述べています。

「主要都市の住宅価格の中央値が100万ドル以上になるのを見ると、それはバケツの中の一滴に過ぎません」と彼女は述べています。

環境

山火事や洪水など、オーストラリアは近年異常気象に悩まされていますが、予算書には「気候変動」という言葉は一度しか出てきませんでした。

「オーストラリアは、2050年までに排出量をゼロにする道を歩み、気候変動という世界的に重要な課題への対応に一役買っています。税金ではなく、技術が私たちをそこに導いてくれるでしょう」とフライデンバーグ蔵相は火曜日の演説で述べました。

芸術(アート)

芸術(アート)界はCOVID-19で最も大きな打撃を受け、現在も回復に努めていますが、2022/23年度予算案ではほとんど手立てがなく、今後数年で支出が削減される見込みです。

予算書によると、芸術への資金は2021/22年の9億8900万ドルから2022/23年には7億9900万ドル、2023/24年にはさらに7億3600万ドルに減少すると記されています。

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Published

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By Isabelle Lane
Presented by Yumi Oba

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