COVID陽性でもプレイできるアスリートに賛否両論

この夏、COVID-19の陽性反応が出たテニス選手やクリケット選手は主要大会への出場が許可されましたが、専門家は、ウイルスとの共存にはまだ注意が必要であると述べています。

A man wearing an Australian cricket hoodie and a face mask

Australian cricketer Matthew Renshaw was allowed to play in the third Test against South Africa in Sydney despite testing positive to COVID-19. Source: Getty / Cameron Spencer

Key Points
  • テニス・オーストラリアは、COVID-19の陽性反応が出た選手も全豪オープンに参加できることを確認
  • 陽性反応が出たクリケット選手もこの夏、競技への参加が許可されています
  • 専門家は、COVID-19に対する考え方の変化を示すものとする一方で、公衆衛生に危険な影響を及ぼす可能性があると警告
新型コロナウイルスワクチン未接種のため、昨年の全豪オープンに参加できず、オーストラリアから追放された元世界ランキング1位のノバク・ジョコビッチ。

世界から注目を集めた全豪オープンから1年、オーストラリアにおけるCOVID-19の規制は大きく変わりました。

テニス・オーストラリアは9日、COVID-19に陽性反応を示した選手でもトーナメントに参加できる可能性を示唆しました。

これは、クリケット選手のマシュー・レンショーが、陽性反応が出たにもかかわらず、オーストラリア代表として南アフリカとのシドニー・テストに出場したほか、メルボルンのスター選手、マーカス・ストイニスとジョー・バーンズも同じく、陽性であるもビッグバッシュ・リーグの試合に出場したことを受けてのことです。
全豪オープンのトーナメントディレクターであるクレイグ・タイリー氏は、このルールの変更は、強制検査と自己隔離がほとんど廃止された「オーストラリア全土の状況を反映したもの」だとし、具合が悪いときには近づかないことを推奨し、医療スタッフも選手個人の健康を引き続き監視すると付け加えました。

コート上のCOVID-19を心配する必要は?

2022年、全豪オープンの選手たちはワクチン接種や毎日の検査など一連の厳しい条件を強いられたほか、観客も収容人数の50%に制限されていました。

今年の大会にはこれらの制限はなく、観客数に関しては過去の記録を塗り替えることが予測されています。
Novak Djokovic playing tennis
Novak Djokovic, seen here playing in the Adelaide International, will play in this year's Australian Open tournament after missing out last year due to COVID-19 restrictions. Source: Getty / Sarah Reed
しかし専門家は、COVID-19と共存する上で注意は引き続き必要であると訴えています。

ラ・トローブ大学のジョエル・ミラー准教授は、テニス選手がCOVID-19に感染した状況でコートに立つことによって重大な健康リスクに繋がる可能性は「低い」とする一方で、同様の体制を職場や一般社会に広く適用すべきではないと述べています。

「テニスそのものは、選手同士が(コート上で)危険にさらされることはあまりありませんから、その点では、試合中の選手のリスクは大きくないと思います」

「1年前や2年前にあったような大きなリスクはないと思いますが、これが常態化することは問題です」。

COVID-19 に対する体制はゆるすぎ?

アデレード大学の疫学者エマ・ミラー准教授は、SBSニュースに対し、規則の緩和は科学的、さらには社会経済的要因の組み合わせに起因するものだと語りました。

「対象者の多くは、少なくとも2回のワクチン接種を受けており、重症化からある程度保護されています」

「また、経済が開放される上での政治的なメリットもあります」

「特にスポーツ会場などでは、マスクの着用が義務付けられています」。

ミラー准教授は、スポーツ競技におけるルールの緩和には驚かないとする一方で、公衆衛生に対する人々に意識の変化や報告の欠如は、伝染性の新しい変異株や患者数の増加という点で危険であると述べています。
「私は、これはちょっとした公衆衛生上の悲劇だと思っています。新しい変異株や派生型の危険性に気づける唯一の方法は、入院したり、亡くなってしまう人の増加です」

「私は、COVID-19と共存することに抵抗がありますが、スポーツの世界では、このようなルールが適用されるのも理解できます」

では一般市民は陽性でも職場復帰できる?

プロのテニスやクリケットの選手は、現在COVID-19に感染していても競技に参加することが可能ですが、専門家は同様の体制を職場に適用すべきではないと述べています。

ラトローブ大学のミラー博士は、COVID-19に感染した状態で職場に戻ることは、同僚やその家族により重大なリスクをもたらす可能性があると訴えています。
Two cricket batsmen sitting in chairs on the sidelines. One (right) has a large towel over his shoulders.
Melbourne Stars cricketers Joe Burns (left) and Marcus Stoinis both tested positive for COVID-19 ahead of their Big Bash League match against the Sydney Thunder in Canberra last month but were allowed to play. Source: AAP / Lukas Coch
「COVID-19に感染して出勤する人が数人いたとしても、公衆衛生上の集団的なリスクにはなりませんが、同僚や同僚の家庭内関係者にはリスクが生じます」

「同僚と密接に働いている場所では、それは潜在的に本当に大きなリスクです。癌を患っている人や臓器移植を受けた人がいるかもしれません」
ミラー博士は、自己隔離のルールが適用されなくなった現在も、COVID-19に陽性反応を示した人は、他の人との接触を最小限に抑え、感染のリスクを減らす努力をする必要があると強調しています。

「雇用主は、従業員が陽性と判定された場合、出勤することを期待しないで欲しいですし、家にいれば、同僚に与えるリスクも少なくなります」

テニス・オーストラリアの広報担当者は、全豪オープンでは、すべての感染性疾患の予防と管理に重点を置いた、さまざまな健康対策が実施されるとSBS Newsに語っています。

「我々は、選手とそのチーム、そしてスタッフと協力し、全員が簡単な感染対策に従って健康管理を行い、病気のリスクを最小限に抑えるようにしています」

「感染症の症状がある選手は、治療管理のために医療チームの助言を受ける必要があります。また、彼らは別の施設を利用することができます」

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Published

By Jessica Bahr, Yumi Oba
Presented by Yumi Oba
Source: SBS

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