ゴールドコーストの焼き鳥店などが労働関連法に違反し、従業員に対して賃金を過小に支払い、勤務データを改ざんしてその事実を隠ぺいしようとしたとして、職場の違法行為を取り締まるフェアワーク・オンブズマンが焼き鳥店などを相手取り起こした訴訟で、オーストラリア連邦巡回裁判所が、店舗の運営会社などに28万4,000オーストラリアドルの罰金の支払いを命じたことが分かった。フェアワーク・オンブズマンが19日に声明を発表した。
フェアワーク・オンブズマンによると、賃金を過小に支払っていたのは、サーファーズパラダイスの焼き鳥店、サムライズ・パラダイスと、その近くで営業していたジャパニーズ・カリー・ハウス・カワイイの2店舗。ジャパニーズ・カリー・ハウス・カワイイは現在営業していない。被害に遭った人のほとんどは20代の日本人の若者で、ワーキングホリデービザでオーストラリアに入国していた。
フェアワーク・オンブズマンの調査によると、この2店の従業員は、週末や祝日勤務などに関係なく、時給が一律8~11オーストラリアドルだった。調査の対象となった2015年のわずか4カ月間に、従業員9人に対する正当な賃金の未払い額は6万オーストラリアドル近くにも達していた。法律が定める最低賃金は当時、時給18.47オーストラリアドル。週末や祝日に働く場合のペナルティレートは時給26.03~46.18オーストラリアドルだった。
サムライズ・パラダイスは現在も営業を続けている。フェイスブックへの投稿では20日、現在は店舗の所有者が代わっており、、前オーナーの下で起きた賃金の過小支払い問題とは関係がないとしている。
この2店舗を経営していたのは、サムライズ・パラダイス・ピーティーワイ・リミテッド。罰金額はそれぞれ、会社が24万6,400オーストラリアドル、会社を経営していた前オーナーに対して3万8,000オーストラリアドル。被害に遭った従業員に対してはすでに、差額が全額支払われている。
上限に近い高額罰金
今回課された罰金の額は28万4,000オーストラリアドルと、罰金の上限に近い大きな金額となった。その背景には、サムライズ・パラダイス・ピーティーワイ・リミテッドが、当局から忠告を受けたにもかかわらず業務データを改ざんし、不正を隠そうとしたことにある。フェアワーク・オンブズマンによる調査は当初、ゴールドコーストの飲食店全体を対象とした取り締まりキャンペーンの一環で、特に同社をターゲットにしたものではなかったが、調査を通じて、同社が2度にわたって改ざんしたデータを提出し、不正を隠ぺいしようとしていたことが分かった。
オーストラリア連邦巡回裁判所のサルバトーレ・バスタ裁判官は、データを改ざんしないよう忠告されたにもかかわらず、同社が再びデータを改ざんしたことは「最も悪質な犯罪だ」と断じた。同社による若者の搾取は「明らかに故意に」行われていたことであり、その内容の悪質さが、高額の罰金判決につながったとしている。
フェアワーク・オンブズマンのナタリー・ジェイムス氏は、財務や給与データの改ざんなどに対する雇用主への罰金額は今後さらに引き上げられる可能性があると釘を刺す。さらに、言葉や文化の違う国や地域から来た人が、同じ文化を持ち、言葉を話す人たちのコミュニティーの中で搾取されることに対して懸念を強めているとしている。