異なる文化を持つ人との会話では、意図せずに相手を怒らせてしまうことがあります。特に先住民の人と話をする際は、彼らに対する誤解や作り話、ステレオタイプ的な見方がオーストラリアで根強く残っていることで、うっかり相手を傷つけてしまうことがあります。
1.侮辱的な呼び方
オーストラリアの先住民を表す言葉は通常「Aboriginal」や「Indigenous」で、先住民の人を指す際には問題ありません。
ただし「Aboriginal」という言葉を「Abo」と縮めて使うことは、過去の歴史からみて先住民の人にとって非常に侮辱的です。「Koon」や「Boong」といった差別用語と同じ扱いになります。一般的に使用しないほうが良い単語です。
また、先住民の友人や同僚に対して「どのネーションに属しているのか」を聞くことは好ましいこととされます。「すべての先住民が同じではないからです」とティース―ジョンソンさんは説明します。
「私たちは異なる慣習や言葉を持った多くの多様なネーションに属しています。植民地化でその多くが消滅してしまいましたが、それでも当初700あった言語のうち約250の言語が残っています」
2.「先住民の血が何パーセント入っていますか」
これは先住民の人が最も侮辱的に感じる質問の1つです。「先住民の血が16分の1入っているとか、100%先住民だとかいうことは全く問題になりません。大事なのは土地やコミュニティーとのつながりです」とティース―ジョンソンさんは語ります。
3.「先住民はタダで家がもらえる」
一部では先住民に対して政府による住宅支援プログラムが提供されていますが、すべての先住民がその対象というわけではありません。
多くの先住民が貧しいコミュニティーでわずかな公的サポートを受けて、またはサポート無しで生活しており、毎日食べていくのがやっとという厳しい状況にある人もいます。
このような経済的困窮にある人たち、そして大都市に住む裕福な先住民の人に対しても、「(先住民は)タダでいろいろなものが手に入り、恵まれている」などと話しかけることは非常に失礼な行為になります。
4.「acknowledgement」の欠如
イベントの開会式などで、先住民による土地への歓迎のセレモニーや、その土地の伝統的なカストディアンである先住民が言及されるのを見聞きすることがあるでしょう。
「先住民の文化を知っている人は皆、先住民がどれほど深く土地と結びついているかを知っています。その土地の伝統的なカストディアンである先住民について触れないということは、先住民の存在を無視していることになります」と、ティース―ジョンソンさんは語ります。
イベントを開催する際に、土地の伝統的なカストディアンである先住民に言及することは、先住民に対して敬意を払うことになります。もし規模の大きなイベントを行う際は、伝統的な土地への歓迎セレモニーを行うことが望ましいでしょう。
5.先住民でない人たちだけで先住民について語る
おそらく先住民の人にとって一番いらただしいのは、先住民でない人たちだけで先住民について語っているのを見聞きしたときです。
「特にメインストリームのメディアで目立つことですが、先住民でない人たちが、先住民の専門家や指導者の話を入れずに、先住民の問題について議論していることがあります。これは誤った情報が人種差別やステレオタイプ的な考えなどにつながり、オーストラリアの先住民に対して非常に大きな打撃を与えます」と、ティース―ジョンソンさんは語ります。
また、最後に英語での表記についてですが、尊敬の証として、「Aboriginal」や「Indigenous」は必ず、大文字のAとIを使います。Gomeroiなど先住民のネーションの名前も大文字から始まります。