普段はかなりの人見知りであるという、ニューサウスウェールズ州出身のメグミさんは、コスプレをすると外見だけでなく、完全に変身すると話します。
「他人と会話をすることができ、友達を作ることができます。まったくの別人です」
「コスプレはセルフ・ディベロップメント(自己啓発)に繋がりました」
ハイライト
- コスプレ市場は拡大し、コスプレに対する意識も変化している
- コスプレは自分に自信をつけるためのツールでもある
- 今年のシドニー・マンガ・アンド・アニメショー(SMASH!)は完売
メグミさんと同様、コスプレをする人の多くは、映画やシリーズ、ゲームのキャラクターに扮して演じることで、自分に自信を持つことができると話します。
ビクトリア州出身のエイブリーさんは、コスプレを「人生より大きなもの」と表現。
フルタイムのコスプレイヤーである彼女は、写真の販売やコミッションサービス、ファンのスポンサーシップで生計を立てています。
「コスプレをすると、自信だけでなく強さも出てきて、通路に紛れ込んでしまうような世界でも存在感を発揮できるんです」と彼女は話します。
コスプレイヤーの中には、好きなキャラクターだけを演じ続ける人もいますが、エイブリーさんは、「愛してやまないキャラクターだけをコスプレする」と説明します。
世界のコスチューム市場の成長に反映されるように、コスプレ人口は増加の一途をたどっています。

Megu (left) and Avery (right) Source: Kopkapon/Avery/SMASH!
コスプレはアメリカで1940年代頃に行われたSF大会が発祥と言われていますが、「コスプレ」という造語は1983年に、「コスチュームプレイ」の略語として日本で生まれました。それ以降、コスプレは不朽のジャパニーズポップカルチャーとして定着してきました。
しかし、世間の意見は必ずしも肯定的なものばかりではありませんでした。

Elaborate and enhanced cosplay is on the rise Source: SMASH
日本で17年に渡り、衣装の制作・販売に携わってきた有限会社アスコミュニケーションズの石渡義一 取締役社長によると、コスプレはかつて「内気で、協調性がなく、孤独な人」による趣味とのレッテルを貼られてきたと言います。
1980年代、アニメは「子供が観るもの」との考えた方が根強かったと話す石渡さん。そのためアニメ好きの大人は「恥ずかしい」と思われ、アニメのキャラクターなどに扮装するコスプレに至っては「さらにネガティブ」であったと説明します。
80年代後半になると、「コスプレ」という単語は浸透し、より認識が広がるものの、「セーラー服やナース服といった職業制服コスプレもひとくくりに報道されることによって、コスプレ=性的サービスを提供するお店といったイメージも一緒に広がってしまいました」。
むしろ、アニメを観ない一般層にとっては、こちらの方が一般的になり、当時、友達にコスプレ趣味を公言するということは厳しいものでした
しかし、『ガンダム』や『新世紀エヴァンゲリオン』など、アニメの視聴者層が徐々に大人も含むようになると、コスプレイヤーの固定観念も変化。さらにはインターネットやソーシャルメディアの登場により、コスプレイヤー同士のネット上でのつながりが容易になりました。
コスプレイヤーは年齢や職業、地域に関係なくつながり、その情熱を共有することができるようになったのです。そして、それはオーストラリアでも起こっているのです。
シドニー・マンガ・アンド・アニメショー(SMASH!)のコスプレコーディネーターのジョアン・ボンドックさんによると、15年前にコンベンションが始まった当初は、一般の人はコスプレが何なのかさえ知らなかったそうです。

Cosplayers showcasing their passion and creativity Source: SMASH!
しかし最近はその人気が急上昇していると言います。
以前は、コスプレイヤーを外見で判断し、ネガティブに捉える人が多かったのですが、最近は受け入れられるようになったのです
シドニーのコンベンションセンターICCで7月16日から17日の2日間にかけて開催される今年のSMASH!は数週間前に完売。
コロナパンデミックにより、約2年ぶりとなるイベントで、多くのコスプレイヤーは「より精巧で強化されたコスプレ」を披露することを熱望しているとボンドックさんは説明します。
「人は、誰もが変身願望があると思います」と話す石渡さん。

Cosplay is one of the feature event at Sydney Manga and Anime Show. Source: SMASH!
子供の頃には変身ヒーローや魔法少女に憧れますが、大人になるにつれてその感情は心の奥底へとしまい込んでしまうのではないでしょうか、「大人はこうあるべきだ」という常識に囚われて
「コスプレは、年齢に関係なく、その殻を解放してくれると考えています」
15歳の学生、ジェニカさんにとって、コスプレは「日常から逃れるための手段」と語ります。
「ほとんどの人は、中身よりもまずコスチュームに注目します。そのためコスプレをすることで自信がつき、その役を演じきることで、人々を喜ばせることができるのです」
ビクトリア州在住の学生で、フルタイムのコスプレイヤーでもあるジェマさんも、コスプレを「素晴らしいエスケープ」と表現しています。
「コスプレをすると、別世界にいるような気分になり、少しの間、現実逃避することができるんです」
コスプレは、他人と積極的に関わる「外向きの趣味」であるため、不登校で引きこもっている子を外へと連れ出す「最適なツール」でもあると説明する石渡さん。

Jenica (left) and Gemma (right) Source: Jenica/Gemma/SMASH!
「コスプレを一度行えば、次はもっと良くキャラクターの再現度を高くと、技術的な要求は高くなっていきます。そのためにはコスプレ友達を作り、先輩に技術を教えてもらわなければなりません。すると人との交流の仕方や、年上への敬語の使い方などを自然と覚えていくのです」
火木土の夜10時はおやすみ前にSBSの日本語ラジオ!