オーストラリアの先住民や英語を母国語としない人々は、過去10ヶ月間に数千万ドルの詐欺損害に遭っていることがわかりました。
オーストラリア競争・消費者委員会の詐欺報告サービス「スキャムウォッチ」が発表した新しいデータによると、今年1月1日から10月31日までの間に、英語を第二言語とする人々は3,620万ドルの詐欺被害に遭っており、これは昨年の同時期と比較して約93%も増加しています。
オーストラリアの先住民も大きな被害を受けており、被害総額は前年の同期比約138%増の460万ドルに達しています。
また今回発表されたデーターでは、コミュニティがどのような種類の被害に遭っているかも明らかになりました。
先住民、並びに英語を母国語としない人々からは、これまでに3067件のフィッシング被害の報告が寄せられています。フィッシングはあらゆる手口を使い、銀行口座などの個人情報を入手しようとする詐欺です。
また金銭要求に従わない場合脅迫するという手口は2090件報告されています。
この他にもなりすまし詐欺1647件、オンライン・ショッピング詐欺1454件、架空請求詐欺1062件がスキャムウォッチにより報告されています。
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詐欺師は弱者を標的に
今回発表された詐欺被害件数について、豪エスニック・コミュニティ・カウンシルのモハマド・アルカファジCEOは、「非常に憂慮すべきもの」とし、多文化コミュニティは特にこの種の犯罪の被害に遭いやすいと指摘しました。
「私も今日、オーストラリア国境警備隊を装った人物から電話を受けました。オーストラリアに来たばかりの移民家族であったら、センターリンクや政府を装った電話やメールを受け取っても、それが偽物だとは思わないことが想像できると思います。彼らは真剣に受け取るでしょう」
「詐欺師は痛いところを突いてくるので、被害者は要求に応えてしまうのです」
ビクトリア州アボリジナル・リーガル・サービスの民法・人権部門の主任弁護士であるアレックス・ウォルターズ氏によると、クライアントの多くがオーストラリア税務局(ATO)を装った詐欺に遭っていると言います。

Federation of Ethnic Communities Councils of Australia CEO Mohammed Al-Khafaji. Source: SBS
「よくあるのはATOを名乗るロボットコールで、『税金の未払い』があるとし、支払わなないと『刑務所に入れられる』と脅すものです」
「他にもアイデンティティーが盗まれ、逮捕状が出ていると主張する別のロボコールも報告されています」
詐欺の中には司法制度を引き合いに出すものもあるため、過剰に代表される先住民は特に「危険である」とウォルターズ氏は語ります。
詐欺防止意識を高めるためには
アルカファジ氏は、 COVID-19パンデミックでは、草の根レベルでの健康問題について多様なコミュニティの意識を高める重要性を学ぶことができたとし、詐欺も同じく、取り扱うべきであると述べています。
「スキャムウォッチやATOのような組織はこれまで、詐欺に関する資料を翻訳してきました。しかし、ウェブサイトの奥深くに埋め込まれていては、誰もアクセスすることができません」
アルカファジ氏は「他の誰よりもコミュニティを理解している」コミュニティ組織とパートナーシップを組むべきであると指摘しています。
「経験から言えるのは、詐欺に関するものであろうと、ワクチン接種に関するものであろうと、成功するには、コミュニティに投資し、信頼できるメッセンジャーが情報を広められるよう環境を整えることです」
ウォルターズ氏もこれに同意しています。
「この種の情報を提供するには、コミュニティに入って、直接人々と話すことが最も効果的です」
ウォルターズ氏は、スパムコールやテキストメッセージをブロックする、適切なプライバシー保護機能を備えた電気通信業界の規約も歓迎されるだろうと述べています。
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