「多様性と調和」をテーマとした東京2020では、オリンピック開会式史上初めて、男女が旗手を務めたほか、プラカードベアラーは、障がい者やLGBTQI+コミュニティの人々など、多様なボランティアから選ばれました。
また最終聖火ランナーには女子テニスの大坂なおみ選手、日本の旗手のひとりには男子バスケットボールのエースで、NBAの八村塁選手と、多様なバックグラウンドを持つ選手が抜擢されましたたが、開会式には日本の先住民族であるアイヌの人々は含まれませんでした。
開会式では当初、アイヌ民族による舞踊が予定され、準備が進められていましたが、東京2020組織委員会は昨年、このパフォーマンスの見送りを決定しました。

パフォーマンスチームのディレクターである秋辺デボさんは、見送りの理由は聞いていないとし、「非常に残念」と語ります。
「アイヌ民族を外して、なぜ共存共栄を謳うことができるのか、理解できません」
アイヌ民族の起源
アイヌ民族の起源は明確ではありませんが、紀元前11,000~6,000年の縄文時代の人々の子孫であると言われ、現在の北海道である日本列島の北部に暮らしていました。

何世紀にも渡り差別や迫害を受けていてたアイヌ民族は現在、日本に19万~24万人いると推定されていますが、伝統的な言語を流暢に話せるのはごく少数だと言われ、ユネスコはアイヌの言語を「絶滅の危機」と認定しています。
2019年、日本政府はようやくアイヌを日本の先住民族と認め、かつて忘れ去られていた先住民族の文化を認識、尊重し、継承することに積極的になっています。また日本では昨年、アイヌ民族の歴史と文化を紹介する初の国立博物館が北海道白老町にオープンしたばかりです。

「アイヌ文化は認知されてきています」と話す秋辺さん。
「オリンピックの主催者は政府でありません。そのため、アイヌ民族に対する理解にギャップがあったと思いますし、さまざまな事情があったと想像します」

一方で、8月5日から8日までマラソンと競歩のイベントが行われる札幌の大通公園で、「ウポポ・ヤン・リムセ・ヤン」(歌いなさい、踊りなさい)と題した歌と踊りを披露する機会を得たことに感謝していると言います。
「アイヌの人たちにとって、歌や踊りは非常に大切なものです。何世紀にもわたって私たちの文化や精神性を伝えてきたものです」
「あきらめずに前向きに、最高のパフォーマンスをしたいと思います」

今回の舞台テーマは3つ。はじめの「イランカラプテ」はあいさつであり、選手や審判などへ「あなたの心にそっと触れせてください」という思いが込められていると話します。2つ目の「カント オロ ワ ヤクサク ノ アランケプ シネプ カイサム」には、「天から役目なしに降ろされたものはひとつもない」というアイヌの信念が込められており、秋辺さんは、パラリンピックにはピッタリであると言います。
「身障者、目の見えない人、腕がない人。競技に出られない人もたくさんいます。人間同士に限らず海、川、山、ねずみなど、みんな天から役目があって暮らしているのです」
そして3つ目のテーマ、「ウレシパ モシリ」では、「お互い育てあって暮らす大地」を表現。
「平和の精神、民族の調和、オリンピックはアイヌの考えと根底で繋がっているのです」
札幌の大通り公園を舞台に開催される今回のアイヌ舞踊は、Youtubeチャンネル、「ウポポイ民族共生象徴空間」にてライブ配信されます。
「観客はいないかもしれませんが、私たちはこのパフォーマンスにすべてを捧げています。世界中の人々にもそれを感じてもらいたいと思います」
公演は8月5日(20:00-20:30 AEST)、6日(16:30-17:10 AEST)、7日 (7:00-7:40 AEST)、8日 (7:00-7:40 AEST)を予定しています。

火木土の夜10時はおやすみ前にSBSの日本語ラジオ!
ポッドキャストから過去のストーリーを聴くこともできます。
SBS 日本語放送のFacebookもお忘れなく。
