プラスチック・化学物質汚染 地球の安全基準超え

人間が生み出した化学物質やプラスチック廃棄物の世界的拡散が、地球の安全基準をはるかに超え、生物多様性に影響を与え、生物を殺していることが新たな研究で明らかになりました。

Chemicals and plastics are affecting biodiversity, piling additional stress on already stressed ecosystems.

Chemicals and plastics are affecting biodiversity, piling additional stress on already stressed ecosystems. Source: AAP

世界各地で大量に排出される化学物質やプラスチック廃棄物は、人類や地球にとって安全な基準を超えており、生産量の上限を設けることが緊急に必要であると科学者が初めて結論づけました。

市場には推定35万種類の化学物質が存在するとされ、その多くが自然界に放出されています。

この新たな研究の共著者である、ベサニー・カーニー・アルムロスは、AFPのインタビューで「今日、私たちが目にし始めている影響は、地球とそのシステムの重要な機能に影響を与えるほど大きなものです」と警告しました。

ストックホルム・レジリエンス・センターによるこの研究は、今月末にナイロビで開かれる国連の会議に先立って発表。国連環境計画のインガー・アンダーセン代表によると、この会議では海洋に流出するプラスチック汚染への取り組みについて議論される見込みです。

化学物質とプラスチックは生物多様性に影響を与え、すでに危機的な状況に置かれている生態系にさらなるストレスを与えています。
A Skeleton Sea faz arte com o lixo encontrado no mar
A Skeleton Sea faz peças de arte com lixo encontrado no mar português Source: AAP, SIPA USA
農薬は生物を無差別に殺し、プラスチックは生物に摂取されます。

「化学物質の中には、ホルモンシステムに干渉し、野生生物の成長、代謝、繁殖を阻害するものもあります」とカーニー・アルムロス氏は言います。

これらの物質が環境中に放出されるのを防ぐためにさらなる努力が必要ですが、科学者たちによると、今必要なのは生産量の上限など、より抜本的な解決策であると訴えています。

生産上限が必要

世界ではリサイクリングが実施されていますが、その結果は、十分と言えるには程遠いのが現状です。

2000年以降、プラスチックの生産量が2倍の3億6,700万トンに増えたにもかかわらず、現在リサイクルされているのは世界のプラスチックの10%以下です。

最近の研究によると、地球上のプラスチックの総重量は、現在、全生物のバイオマスの4倍に達しているそうです。

「私たちは『もう十分!』と声を大にして言いたいです。これ以上許容できないと思います」と、スウェーデンを拠点とする研究者は述べています。

「これ以上生産してはいけない、という上限を設ける必要があるのかもしれません」
75% of all dead green turtles and 57% of all loggerhead turtles in Sharjah had eaten marine debris, including plastic bags, bottle caps, rope and fishing nets
75% of all dead green turtles and 57% of all loggerhead turtles in Sharjah had eaten marine debris, including plastic bags, bottle caps, rope and fishing nets Source: AAP
ストックホルム・レジリエンス・センターは、数年前から、温室効果ガス排出や淡水利用、オゾン層など、地球の安定性に影響を与える9つの分野で「地球の限界」に関する研究を行ってきました。

その目的は、人類が「安全な活動領域」にいるのか、それとも限界を超え、地球の未来を脅かしているのかを見極めることです。

プラスチックや抗生物質、農薬、非天然金属など、人工的な化学製品の影響については、これまで大きな疑問が持たれていましたが、その答えは複雑です。

カーニー・アルムロス氏によると我々はこれらの曝露による大規模かつ長期的な影響を「理解し始めたばかり」です。

製品が何千種類にも上るだけでなく、それらがもたらすリスクに関するデータは存在しないか、企業秘密として分類されていることが多く、また化学物質は比較的最近のもので、そのほとんどは過去70年間に開発されたものです。

「35万種類の物質について話しているのです」
Volunteers of the Plastic Free association, clean up the "Plastic Beach" of Volturno, Italy.
Volunteers of the Plastic Free association, clean up the "Plastic Beach" of Volturno, Italy. Source: AAP/Vincenzo Izzo/Sipa USA
「私たちは、それらの大部分について、生産量や安定性に関する知識を持ち合わせていません。環境中での運命や毒性についてもです」

「大半については、手がかりがないのです」

欧州連合のREACH規則のような最も包括的なデータベースでさえ、15万件の製品しかカバーされておらず、詳細な毒性研究の対象となったのはそのうちの3分の1に過ぎません。

「特効薬なんてない」

この現状を踏まえ、研究チームは既知の情報に焦点を当てて研究を進めましたが、この部分的な情報だけでも、十分に憂慮すべき結論を導き出すことができたのです。

「経年変化と環境中に放出された生産量の傾向を見ると...そして、私たちが知っているわずかな影響と結びつけると、すべての矢印は間違った方向を向いていると言えるでしょう」とカーニー・アルムロス氏は述べています。

一方、「この状況を元に戻す時間はまだある」としながらも、「国際レベルでの...緊急かつ野心的な行動」が必要であると訴えています。

「特効薬はないんです」
「なぜなら、これらの化学物質や材料の多くは、今現在、私たちが使っているものであり、私たちの生活に必要なものだからです」

生産段階や廃棄物処理段階でどれだけ努力しても、生産量を減らさないと問題は変わらないと彼女は話します。

「生産量が増えれば増えるほど、排出量も増えるのです」

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Published

Presented by Yumi Oba
Source: AFP, SBS

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