エリザベス女王を偲ぶ予定外の休日で、病院や中小企業が大混乱へ

9月22日(木)、多くのオーストラリア人はエリザベス2世女王を追悼するために仕事と学校を休みますが、誰もがそれを喜んでいるわけではありません。

A picture of the queen next to flowers

A portrait of Queen Elizabeth II next to flowers placed outside of Buckingham Palace in London on 11 September 2022. Source: AFP / Stephane De Sakutin / via Getty Images

オーストラリアでは、喪に服すための休日は歓迎されないという意見もあります
  • 既に生活コストの圧迫を感じているスモールビジネスの経営者やカジュアルワーカーは、この休日は状況をさらに厳しくすると述べています
  • 病院の診療科によっては閉鎖を余儀なくされ、何千もの予約が再スケジュールされるかもしれないと医師たちは述べています
医療関係者、患者、働く親、カジュアルワーカー、スモールビジネス経営者は、エリザベス二世女王に敬意を払うために発表された9月22日の一回きりの休日について、喪に服す日は混乱を招くとともにコストがかかるとして不満を表明しています。

オーストラリア全土が休日となる「喪に服す日」は、女王の国葬の3日後となる9月22日に執り行われます。
国葬に主席するめ訪英中のアンソニー・アルバニージー首相とデービット・ハーリー総督は、21日にロンドンから帰国する予定です。

一回きりの休日を発表したアルバニージー首相は、すべてのオーストラリア人に対して、「どこにいても、女王陛下の並外れた生涯の功績を一旦立ち止まって振り返る時間を取るよう」奨励すると述べました。

キャンベラでは、午前11時から国会議事堂の大ホールでナショナルメモリアルサービスが行われ、その後1分間の黙祷が捧げられます。

「なぜ不満?」

予定外の休日は、多くオーストラリア人から歓迎されている一方で、ソーシャルメディアでは、休日を「オーストラリアらしくない」と批判するコメントも見られ、賛否両論の声が飛び交っています。

スモールビジネスの経営者や休日により収入を失うカジュアルワーカーにとっては、休日を心から喜べないのが現状です。

エコノミストのスティーブン・クークラス氏によると、この休日は経済に15億ドルの損失をもたらすと推定しています。

「生産性が低下し、実際の経済活動に支障をきたすでしょう」

スモールビジネス経営者やカジュアルワーカーはコスト負担を強いられることに

クリスティン・スカリーさんは、ビクトリア州のダンデノンレンジで馬のマッサージと馬の栄養学を教えるスモールビジネス経営者です。

彼女によると、4人のスタッフに休日を与え、顧客を逃した場合、約3,000ドルのコストがかかると推定しています。

「その日に予約しているお客がいるので、その方を移動させるか、あるいはとにかく会うか、整理する必要があります。スタッフと話し合って、どうするかを決めるつもりです」と彼女はSBS ニュースに語りました。

「96歳の君主が亡くなったために、休みをとったスタッフの費用をスモールビジネスが負担しなければならないというのは不公平だと思います」

Christine Scully owns a small business that teaches horse massage and equine nutrition in Victoria's Dandenong Ranges.
Christine Scully says the one-off day of mourning will cost her business about $3,000. Source: SBS
「王室から私たちのビジネスへのインプットは全くありません。休みを取りたいと思うのは勝手ですが、そのためにビジネスがお金を払う必要はないと思います」

オーストラリア中小企業団体協議会のアレクシ・ボイドCEOは、さまざまな業種の会員から「さまざまな反応がある」と述べています。

「例えば、人の移動が増えることで利益を得る企業や、観光客が集まりやすい地域にある企業は、この日を本当に歓迎すべき機会であり、売り上げを伸ばすための素晴らしい日だと考えています」
「その一方で、その他のスモールビジネス部門からは、物流をどうするか、顧客のアポイントメントをどう管理するかということに関して、かなりのストレスを感じています」

企業は9月22日にフルタイム従業員に給与を支払わなければなりませんが、カジュアルワーカーは全く給与を受け取らないことになり、すでに生活費の圧迫に悩まされている人々にとっては打撃となります。
オーストラリア統計局によると、オーストラリアには240万人のカジュアルワーカーがおり、従業員の23%、雇用者全体の19%を占めています。また独立したコントラクターも100万人おり、全雇用者の7.8%を占めています。

シドニー西部のカジュアル教師であるマリア・R・バーバリーニさんは、春休みを控えたこのタイミングの休日は、家族にとって困難な状況になると語りました。

「私はカジュアル教師で、家賃や請求書を支払うために働く必要がるのです。生活費が高騰し、ニューサウスウェールズ州では学校が休みに入るため、1日分の給与を失うことは大打撃となります」

「普段は祝祭日が好きですが、多くの人と違って、私は祝祭日には給料をもらえません」
一方、9月22日が春休内でない州やテリトリーでは、多くの働く親が、仕事を休むか、または保育所を探すことを余儀なくされ、コストが懸念されています。

オーストラリア証券取引所ASXも顧客をどうするか、検討していると言います。

ASXは通常、国の祝祭日には休業しており、広報担当者は「22日もそうなる見込みだ」としていますが、予定外の休日により、顧客との確認事項や物流など、あらゆることを検討する必要があると述べています。

「マーケットにはできるだけ早くお知らせします」

病院にとっては「困難」で「混乱状況」

9月22日、一部の民間医療センターやクリニックは営業を続けるかもしれませんが、多くの診療科では、スタッフ不足のため閉鎖を余儀なくされるかもしれません。

メルボルンのセント・ヴィンセント・ホスピタルとロイヤル・チルドレンズ・ホスピタルに勤務する耳鼻咽喉科医エリック・レヴィ氏は、病院は膨大かつ多様な労働力に依存しており、彼らの不在は大混乱を引き起こすだろうと述べました。

「オーストラリア中の病院で、すでに何百、何千もの患者が予約されている可能性があります」と、レヴィ医師はSBSニュースに語りました。

「なぜオープンしない?と疑問に思う人もいるかもしれませんが、それはホスピタルを運営する上で何千にもの人が必要であることを理解していないのです」

「事務員、清掃員、看護師、医療従事者、その他大勢の人が、現場でサービスを提供する必要があるのです」

このような人たちを働かせるには、祝祭日手当が必要で、病院にとっては大変な負担になるとも指摘しています。

レヴィ氏は、地方や州外から来院する予定だった患者や、継続的な治療が必要ながん治療患者も含む60人以上の予約をリスケジュールすることを余儀なくされたと明かしました。

リスケジュールをされた患者の中には、春休み中に回復することを計画に22日に予約を入れていた子供もいました。

一方、アンソニー・アルバニージー首相は、月曜日、この休日に手術は行われるべきで、適切であると述べています。
「『祝日に手術は行われない 』という考えは、もちろん正しくありません。もちろん医療処置は常に優先されるべきです」

「今回初めて国家のヘッドが交代されたのです。70年間それを務めたエリザベス2世の貢献に感謝する必要があるのです」

「一日限りの休日と喪に服す日は適切な対応です」




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Published

By Caroline Riches, John Baldock, Akash Arora
Presented by Yumi Oba
Source: SBS

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