コロナ変異株に新名称 スティグマや差別を避けるため国名使わず

コロナウイルス変異株の名称は、これまで初めて検出された国・地域で呼ばれることが多く、それは差別に繋がると指摘。WHOはギリシャのアルファベットを採用することを発表しました。

A file photo of the WHO's technical lead on the coronavirus pandemic, Maria van Kerkhove.

A file photo of the WHO's technical lead on the coronavirus pandemic, Maria van Kerkhove. Source: Getty

世界保健機関(WHO)が5月31日、新型コロナウイルスの変異株に対する名称を、ギリシャ語のアルファベットに変更することを発表しました。

この新たなシステムは、現在蔓延している4種を含む「懸念される変異株(Variants of Concern・VOC)」や、「注目すべき変異株(Variants of Interest・VOI)」に適用され、初めに検出された国・地域への偏見や差別を避け、議論の容易化を目的としています。

「これは既存の科学的な名称に取って代わるものではなく、一般的な議論の助けになることを目的としている」と、WHOのCOVID-19技術責任者、マリア・ヴァン・ケルコフ氏は述べています。

この新しいシステムにより、これまでイギリスのB.1.1.7と呼ばれた変異株は「アルファ」に、南アフリカで初めて発見されたB.1.351は「ベータ」、ブラジルのP.1が「ガンマ」という名称になります。
一方、インドで最初に検出された変異株B.1.617は、サブ系統に分かれており、「懸念される変異株」とされるB.1.617.2は「デルタ」に、「注目すべき変異株」のB.1.617.1は「カッパ」と呼ばれます。

変異株の名称はこれまで、それぞれの変異に対して2つの科学的名称が使用されてきたほか、同じ変異を表すために異なる地理的名称が使用されるなど、混乱を招いてきました。例えば、イギリス国内では、他の国では「イギリス変異株(British variant)」と呼ばれているものを、最初に発見されたイングランド南東部の郡である「ケント変異株(Kent variant)」と呼ぶなど、今回の新名称により、議論や報道が簡素化されることが期待されています。

一方で、B.1.1.7.2のような系統名は、その名前が突然変異の情報を伝えるため、科学界では今後も使用され続けるだろうと言います。

スティグマと差別

WHOは声明で、「学名には利点がある一方で、覚えづらい他、言いにくく、誤った報告がなされやすい」と説明。

「その結果、人々は変異株が発見された場所で呼ぶようになりましたが、これでは汚名を着せられ、差別に繋がります」
「このような事態を避け、公的なコミュニケーションを容易化するために、WHOは各国の当局やメディアなどにこれらの新しい名称を採用することを奨励しています」

今月初めには、ジョー・バイデン米大統領が、COVID-19パンデミックにより急増した、アジア系アメリカ人への攻撃に対応することを目的としたヘイトクライム法に署名しました。
米国の反過激派団体によると、アジア系アメリカ人に対する攻撃やヘイトクライムの件数は、パンデミックの始まりから爆発的に増加しており、それはCOVID-19を「チャイナ・ウイルス」と繰り返し言及したドナルド・トランプ前大統領に責任があると述べています。
数ヵ月前から変異株の名称を簡略化することを掲げてきたWHOは、今回採用したギリシャ語のアルファベット全24文字を使い果たしたあとのことについては「未定」としています。

発表によると、すでに「イプシロン」、「ゼータ」、「エータ」、「シータ」、「イオータ」は「注目すべき変異株」に当てられています。

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Published

Presented by Yumi Oba
Source: AFP, SBS

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