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コロナワクチンについて多言語で発信する重要性

誤っった情報の拡散を防ぎ、命を救う可能性を高めるため、オーストラリアの多文化コミュニティのリーダーたちは、COVID-19ワクチンの情報をそれぞれの言語で、複数のプラットフォームを使用して明確に伝える重要性を訴えています。

Vaccine messaging

Vaccine messaging Source: SBS News/Nick Mooney

オーストラリアの多言語・多文化コミュニティに、正確なコロナウイルス情報を提供することは、そう簡単ではないことが、このパンデミックの間証明されてきました。

連邦政府や州政府が発信した保健メッセージの翻訳ミスが明らかになったほか、ニューサウスウェールズ州の一部の多文化コミュニティではCOVID-19の検査は有料であるといった誤った認識を持つ人たちがいることも先月わかりました。

英語で発信された誤報を訂正するのはまだしも、数十言語で発信された場合はどうでしょうか。

連邦政府は先週、COVID-19ワクチンに関する2390万ドルの情報キャンペーンを発表しましたが、このキャンペーンがオーストラリアの多文化コミュニティのすべてに伝わるかどうかについて、懸念が高まっています。

各コミュニティのリーダーたちは、当局が多文化・多言語のオーストラリア人に、ワクチンについて、それぞれの言語で、複数のプラットフォームを使用して明確に伝える重要性を訴えています。

蔓延する陰謀論

豪アラビック評議会のローランド・ジャブブール会長は、自分たちの言語によるワクチン情報をどこで入手できるかわからず、混乱が起きており、一部のアラブコミュニティでは、自ら情報をリサーチする者もおり、適切ではないと述べています。

「コミュニティの人々は会話をするなかで、時には正確ではない情報を伝えあってしまうこともあります。多くの陰謀論も広まっています」とジャブブール会長は述べており、これに対抗するには、当局がパンデミックの残りの期間を通して、「コミュニティのリーダーを巻き込むことが重要」であると言います。

「コミュニティグループのリーダーたちから助けを求めることで、コミュニティの人々は『信頼できる情報源』であると認識するようになります」
ソーシャルワーカーで、シドニーを拠点とするアフリカのユースリーダーであるマレー・ジョ・カマラさんは、オーストラリアの若いアフリカ人の間で、特にソーシャルメディアを通じて、誤った情報が広まっていると述べています。

カマラさんは、コミュニティのネットワークを活用することが、不正確な情報を断ち切るのに大いに役立つことに同意しています。

「情報が信頼できる組織やコミュニティグループからのものであれば、人々はそれを真剣に受け止めることができます」

「私たちのコミュニティにはスポーツ・グループやソーシャル・グループなど、さまざまなユースグループがあります。メッセージがそれらの人々から発信されるのであれば、それは彼らにとって非常に重要なものになるでしょう」とカマラさんは述べています。

主流メディアを利用しない人もいる

アフリカヘルス・オーストラリアのヴィンセント・オグ会長は、オーストラリアで暮らすアフリカ系コミュニティは、ワクチンの情報を得るため、必ずしも主流メディアや従来の情報源を利用するわけではない、と述べています。

「コミュニティは常に主流メディアから情報を得ているわけではないので、コミュニティ、特に英語を話さない背景を持つ人々が通常利用しているチャンネルや手段、情報源を探る必要があります」と彼は言います。

「地域の言語を使って情報を翻訳することができるコミュニティベースの組織があれば、人々は情報源を理解し、信頼し始めるでしょう」
Dr Vincent Ogu, the chair of Africa Health Australia.
داکتر وینسنت اوگو، رییس سازمان صحی آفریقا-آسترالیا Source: SBS News/Bernadette Clarke
一部の多文化グループでは、情報が正確に翻訳されていることを確認するために、独自にワクチン情報を作成しています。

豪ヒンドゥー評議会のプラカシュ・ミータ会長は、「(ワクチンの)実施が始まったらすぐにチラシを作成し、全会員組織に配布しようと考えており、この他にもヒンドゥー教コミュニティの医師や政府の代表者を招いてウェビナーを開催します」と述べています。


ミータ会長は、ヒンディー語、タミル語、パンジャブ語での情報は、オーストラリアのヒンドゥー教コミュニティの高齢者にとって大きなメリットになると述べています。

「オーストラリアのヒンドゥー教徒のほとんどは英語を理解していますが、高齢者や親御さんの中には英語を理解していない人もいるかもしれませんので、これらの人々にワクチンを推奨することができます」

生死に関わる問題

ビクトリア州で最も文化的に多様なエリアである、ホブソンズ・ベイのGPであるムケシュ・ハイカーワル医師は、「英語を話さないコミュニティに正しいワクチン情報を提供することで、命を救うことができる」と述べています。

「私たちは、多様性に富んだオーストラリアのコミュニティの一員として、そのすべての人が、何が起きているかをしっかりと把握する必要があります」

「多言語での発信が必要であり、それを書面で伝えたり、動画で伝えたり、ソーシャルメディアなどのあらゆるプラットフォームで、発信する必要があります」
ハイカーワル医師は、言語的に多様なコミュニティには、オーストラリアのイングリッシュ・スピーカーの人々と同じ基準でワクチンのメッセージを伝える必要があり、GPはその手助けができる、ユニークな立場にあると述べています。

「ワクチン接種は何世代にもわたって命を救ってきたものです。オーストラリアではGPによって行われてきました」

「GPには多言語を話す人が多く存在し、彼らは患者の母国語で理解を深めることができ、心配や恐怖心を和らげることができます」

すべての人に情報を届けるため、政府は何をしているのか?

保健省は、2390万ドルの新しいワクチン情報キャンペーンは、「文化的、言語的に多様なコミュニティを含むすべてのオーストラリア人を支援する」としています。

「翻訳された資料を含め、理解できる情報を提供することが重要であり、その作業は現在進行中である」と広報担当者はSBSニュースに語りました。

「多文化コミュニティのための広告以外のリソースも開発中で、ラジオや紙面記事、動画、コミュニティリーダーが動画を作成するためのガイド、多言語のウェブコンテンツ、ソーシャルメディアへの投稿、ポスター、ニュースレターなどが含まれています」

広報担当者によると、情報に応じて「タイムリーなアップデート」を提供する予定であるそうです。

また保健省は、SBSと協力して、ワクチンの安全性や承認プロセス、優先グループ、情報の入手方法などを説明するビデオコンテンツの最終調整を行っています。SBSは、63の言語で情報を収録しており、2月22日に公開する予定です。

ワクチンの提供施設が決まり次第、各州政府は現地での翻訳者サービスなどについても公表する予定です。

無料でワクチンを接種できるビザカテゴリーとは?

一部の多文化コミュニティでは、誰がワクチンを受けることができるのかという点で混乱が生じています。

オーストラリア政府は、オーストラリア国民、永住者、そして「ほとんどのビザ保有者」にワクチンを無料で提供すると発表しています。

つまり、オーストラリアでは、学生ビザ、ワーキングビザ、スキルドビザ、家族ビザ、パートナービザ、難民ビザ、人道ビザ、地域ビザ、ブリッジングビザ、特別ビザなどのビザ保持者は誰でも無料でワクチンを受けることができます。

ただし、以下4種類のビザをお持ちの方は対象外となります。

サブクラス600 - 観光客
サブクラス771 - トランジット
サブクラス651 - eビジター
サブクラス 601 - 電子観光ビザ(ETA)

内務省によると、現在、約6万9,000人がこれら4つのビザを取得してオーストラリアに滞在しているようです。

これらのビザはいずれも滞在ビザではなく、観光や友人・家族の訪問などを目的とした72時間から12ヶ月の短期間のビザであり、所持者に就労権は与えられていません。

しかし、保健省によると、政府はこれら4つのカテゴリーのビザ保有者も「検討」しており、オーストラリアのワクチン展開計画に適合するかどうか、またどこで適合するかを探っているようです。

Additional reporting by Amelia Dunn.
オーストラリアでは、他人から1.5メートル以上離れていなければなりません。お住まいの州における集まりの人数制限をご確認ください。風邪やインフルエンザの症状が出ている場合は、家に留まり、医師に電話して検査を手配するか、1800 020 080のコロナウイルス健康情報ホットラインに連絡しましょう。

ニュースや情報は、sbs.com.au/coronavirusで63カ国語で提供されています。

お住まいのテリトリーのガイドラインをご確認ください: NSWVictoriaQueenslandWestern AustraliaSouth AustraliaNorthern TerritoryACTTasmania.

 

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Published

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By Claudia Farhart
Presented by Yumi Oba

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