アジア勢のワールドカップになるか? FIFA女子サッカーワールドカップ2023

共催国のオーストラリアはワールドカップを機に女子サッカーの認知度を加速させましたが、他のアジア勢はどうなのでしょうか?

 Ji So-yun (South Korea), Yui Hasegawa (Japan) and Wang Shanshan (China)

From left: Ji So-yun (South Korea), Yui Hasegawa (Japan) and Wang Shanshan (China) Credit: From left: JUNG YEON-JE/AFP via Getty Images/Kenta Harada/Getty Images/Thananuwat Srirasant/Getty Images

7月20日オーストラリアとニュージーランドで開幕を迎えるFIFA女子ワールドカップ2023。

前大会、ラウンド16で全滅したアジア勢は、自分たちの力を証明し直すために4年という長い歳月を待ってきました。
日本は2011年の大会で優勝、続いた2015年では準優勝という結果を残していますが、圧倒的な強さを見せてきたのは欧米諸国です。

本大会、出場枠が24ヵ国から32ヵ国に拡大されたことにより、AFCの強豪国には、ワールドカップ初出場のフィリピンとベトナムが加わります。

各国、それぞれの課題に直面しながらも本大会に挑みます。

中国

2022年AFC女子アジアカップで優勝し、16年ぶりにトップに返り咲いた「スチール・ローズ」。

優勝は女子チームの認知や尊敬を高めたほか、女子サッカーの人気を上げ、次世代の選手たちにとっては大いなる刺激となりました。しかしその同時に、女子チームと男子チームの賃金格差をめぐる議論にも火をつけました。

これに対し、アリペイなど多くの中国企業が賞金提供に乗り出し、『グローバル・タイムズ』紙はチームが優勝後に470万米ドルを稼いだと推定しています。
本大会、高級ブランド、プラダが公式ウェアを提携するなど、前代未聞の経済的支援にもかかわらず、ピッチ上では幸運に恵まれなかった中国。デンマーク、ハイチ、イングランドとの「死のグループ」(グループD)に引き分けられました。

 メルボルン在住のスポーツ・コメンテーター、リー・ピングカング氏はSBS中国語放送の取材に対し、「3つの対戦相手どれも簡単ではない。グループリーグ突破の可能性はあるものの、チームはとてもとてもハードに準備する必要がある」と語りました。

しかし、アデレードの学生、トリニティーさんのような忠実なファンが、すでに同都市で開催される全中国代表のチケットを購入しているように、オーストラリアの中国コミュニティーが応援し、後押しすることに期待が高まっています。

「グループステージを突破し、ノックアウトステージに進み、最終的に決勝に進むことを願っています。中国チームにはその力があると信じています」

現在アメリカでプレーするワン・シュアン、元アジア年間最優秀選手のワン・シャンシャン、女子スーパーリーグ(WSL)で初の中国人選手となったタン・ジャリなど、ベテラン勢が揃う中国は、ノックアウトステージまで駒を進める可能性を大いに秘めています。

日本

2011年のドイツ大会で初優勝を飾った「なでしこジャパン」。その歴史的勝利は東日本大震災で打ちのめされていた日本に勇気を与えると同時に、女子サッカーの認知と人気を高めました。

しかし、近年は東京五輪での準々決勝敗退など、結果を残すことができていません。

そんななでしこを立て直し、再び頂点へと導くため、2021年に就任した池田太監督。
6月行ったSBS日本語放送のインタビューで監督は、欧米諸国における女子サッカーの成長について「ものすごいスピードを感じる」と言及。日本も追いつけるように、プロ女子リーグ、WEリーグの設立など、あらゆる努力をしてきたと話しました。

「日本の女子サッカーの発展にとって、決勝トーナメントに進出することはとても重要なことです」

池田監督は「自信をもって」23人のメンバーを選出。マンチェスター・シティの長谷川唯、ポートランド・ソーンズの杉田妃和、エンジェル・シティの遠藤純を筆頭に、前回大会2人であった海外勢を9人に増やし、大会に挑みます。
PORTUGAL WOMEN'S SOCCER
Japan player Mina Tanaka (C) celebrates after scoring the 1-1, during a friendly soccer match between Portugal and Japan, ahead of Women's World Cup 2023 preparation, at D. Afonso Henriques stadium in Guimaraes, Portugal, 07 April 2023. Credit: ESTELA SILVA/EPA/AAP Image
かつてないほど多くの日本人選手が海外の舞台で成功を収めている一方で、国内ではワールドカップまで1週間となった7月13日まで大会の放送が決まらないなど、女子サッカーをめぐる課題はまだ目立ちます。

放送が危ぶまれる中、ネット上では日本が女子サッカーのレベルアップにどれだけ真剣に取り組んでいるのか、と疑問を投げかける声が相次ぎました。

女子ワールドカップに今回初めて帯同するのは、男子日本代表には2004年から携わってきたシェフの西芳照さんです。もはやチームにとって欠かすことができない存在となった西さんは、男子チームから長年尊敬されてきた人物でもあり、昨年のカタール大会ではキャプテンマークを渡され集合写真に写るなど、本大会で重要な役割を果たすのは言うまでもありません。
Nishi Chef.jpeg
Japan's chef, Yoshiteru Nishi, will no doubt play a key role in the World Cup. Credit: Japan Football Association
SBS日本語放送でのインタビューでは(7月25日放送予定)喜んでもらえ、栄養があり、回復を助ける料理を提供しており、試合前はうなぎ、試合後はカレーという男子チームでは定番となっていたルーティーンを取り入れると明かしました。

世界一奪還を目指すなでしこジャパンは、大会最後の試合となったパナマ戦で、5-0で勝利をあげています。

韓国

チ・ソヨン(チェルシーに6年間在籍)、チョ・ソヒョン(トッテナム)、イ・グンミン(ブライトン)など、韓国人選手は近年、欧州サッカー界で頭角を現していますが、ワールドカップでは、ラウンド16が最高結果となっています。

チームのポテンシャルを最大限に引き出そうと、イングランド出身のコリン・ベルが2019年にヘッドコーチに就任。2022年AFC女子アジアカップで準優勝を果たした彼の肩には、大きな信頼と期待が寄せられています。
South Korean women national football team Colin Bell.jpg
Republic of Korea head coach Colin Bell at Sydney airport. Credit: SBS Korean
7月11日、シドニーに到着したベル監督は、SBS 韓国語のインタビューに応じ、アジアは女子サッカーの進化に向けて「前進している」ことを認め、各協会は「より多くの投資」をしていると語りました。

SBS韓国放送のプロデューサー、ジャスティン・パク氏は、女子サッカーのプロリーグはまだないものの、有名人や伝説的な選手が集まり、女子サッカーを紹介するテレビ番組『キック・ゴール』のように、女子サッカーの人気度は上がっていると言います。

注目は、チームの最年少で、チームにとっては史上初となるハーフ、アメリカ人の父と韓国人の母を持つケーシー・ユージン・フェア。
大会前に開催された直近3試合で快勝している「テグク・レディース」。

また、シドニーのオリンピック・パークで開催された2015年男子アジアカップ決勝のオーストラリア戦でも大きな声援を送ったオーストラリアの韓国コミュニティーからの強力なサポートも確信されています。

韓国総領事のテウ・リー氏はSBS韓国語放送の取材に対し、「私たちは、スタジアムで多様かつ組織的な応援ができるよう、韓国系コミュニティーと協力していきます」と語りました。

「今回のワールドカップは、在オーストラリア韓国人コミュニティが団結し、一緒に代表チームを応援する良い機会です」

フィリピン

2022年のAFF女子選手権で優勝するなど、東南アジアの女子サッカー界で長く活躍してきた「フィリピーナ」ですが、ワールドカップ出場は今回が初めて。

SBSフィリピノ放送のエグゼクティブ・プロデューサー、エディネル・マグティベイは、この歴史的な節目は「国の誇り」と説明します。

フィリピンでサッカーはバスケットボールやボクシングほどの人気はない一方で、オーストラリア人で元マチルダズのアレン・スタジッチ監督率いる女子代表チームの最近の活躍が、サッカーの勢いを後押ししていると言います。また地域リーグや草の根プログラムの設立も、このスポーツの成長に貢献しています。

フィリピーナには多様な選手が所属していますが、その中にはAリーグのウェスタン・ユナイテッドでプレーするジャクリン・サウィッキとアンジー・ビアードというおなじみの顔もいます。ビアードはフィリピン代表に忠誠を誓う前にマチルダスで3試合に出場しています。
MicrosoftTeams-image.png
Canadian-born Jaclyn Sawicki. Credit: MARIA MONTAYRE/Philippine Women's National Football Team
サウィッキのカナダからフィリピンへの移籍は、フィリピン人の母親への愛情がきっかけでした。

「異なる文化の中で育ったけれど、フィリピン人であることを誇りに思っていることを伝えるためです」とSBSフィリピノ放送に語りました。

フィリピン代表はスイス、ニュージーランド、ノルウェーと対戦します。

「技術的にも戦術的にも、私たちは遅れているかもしれない...。でも、私たちは皆、戦い、情熱、意欲、そしてわずかな時間の中で積み重ねてきた努力のすべてを持っています」

しかし日本同様、フィリピンも放送が決まらず、国内での観戦が危ぶまれていましたが、Cignal TVが開会2日前に手を上げ、決定しています。

グループリーグはすべてニュージーランドで行なわれますが、先週シドニーに立ち寄ったフィリピン代表を見送るために何百人ものファンが集まったように、ここオーストラリアにも多くのファンがいます。

ベトナム

サッカーはベトナムで最も人気のあるスポーツである一方で、女子サッカーをめぐっては発展途上の域です。

「ゴールデンスター・ウーマン・ウォリアーズ」として知られるベトナム女子代表は1990年に設立されていますが、チームが初試合を行うまでにはさらに7年を要しました。

ワールドカップに初めて出場すること自体が快挙ですが、その道は決して容易ではありませんでした。

2022年AFC女子アジアカップの準備中に、23人の代表選手のうち20人がCOVID-19に感染。ベストからは程遠いコンディションであったものの準決勝まで進んだベトナムは、最終的に優勝した中国に破れます。しかし、プレーオフでタイとチャイニーズ・タイペイを下し、世界舞台への出場権を獲得しました。
ワールドカップではオランダ、ポルトガル、アメリカという強敵に立ち向かう一方で、ニュージーランドのベトナム人コミュニティは興奮に包まれています。

2020年からオークランドで活動しているベトナム人サッカーチーム、バトンFCのメンバーであるクアン・チャンさんは、「ベトナム人にとっては非常に珍しい機会。予選を突破した彼らを本当に誇りに思います」と話します。

またコミュニティーではベトナム国旗やTシャツ、ステッカーなどを販売し、アットホームな雰囲気を感じられると言います。

SBSベトナム語放送のプロデューサー、トゥイ・グエンは、「人々はあらゆる方法でコミュニケーションを図り、チームを助けようとしている」と説明します。

注目は昨年、ポルトガルのレンクFCヴィラヴェルデンセと契約し、ヨーロッパのプロクラブに入団した初のベトナム人女子選手となったフイン・ヌです。

火木土の夜10時はおやすみ前にSBSの日本語オーディオ!
ポッドキャストから過去のストーリーを聴くこともできます。
SBS 日本語放送のFacebookもお忘れなく。

Share

Published

By Yumi Oba, Justin Park, Edinel Magtibay, Koma Cheng, Thuy Nguyen
Source: SBS

Share this with family and friends


Follow SBS Japanese

Download our apps
SBS Audio
SBS On Demand

Listen to our podcasts
Independent news and stories connecting you to life in Australia and Japanese-speaking Australians.
Ease into the English language and Australian culture. We make learning English convenient, fun and practical.
Get the latest with our exclusive in-language podcasts on your favourite podcast apps.

Watch on SBS
SBS Japanese News

SBS Japanese News

Watch it onDemand