オーストラリアのイタリアン・レストランのメニューでガーリック・ブレッドをよく目にします。しかし、それは全くイタリア的ではないということをご存知でしたか?
イタリアンっぽく聞こえるチキン・パーミジャーナはどうでしょう。それもチキン・リゾットも違うのです。
オーストラリアやアメリカの様な国々でとても人気の料理は実はイタリア料理をヒントに作られたり、真似て作られたものなのです。
SBSイタリア語チームは、メルボルンにある有名イタリアン・レストラン「グロッシ・フロレンティーノ」のセレブ・シェフ、ガイ・グロッシ氏といっしょにそれらの料理とルーツを追います。
オーストラリアの人気料理
チキン・パルミジャーナ
オーストラリアの典型的なパブ料理「チキン・パルミジャーナ」は名前こそイタリアっぽいですが、実はぜんぜんイタリア料理ではないのです。むしろ、正真正銘のイタリア料理ナスのパーミジャーナとチキン・シュニッツェルを掛け合わせたもので、発祥はアメリカです。
調理した肉にトマトソースをかけたイタリアのピザイオーラという料理にも良く似ています。
「アメリカで誕生し、オーストラリアでパブの定番料理として受け入れられました。とても満足する(お腹を満たす)料理と言えます。」とグロッシ氏は語ります。

Chicken parmigiana Source: Flickr/avlxyz CC BY-SA 2.0
パンにガーリックとオリーブオイルやバター、そしてハーブなどを載せたこの「ガーリック・ブレッド」はカリカリに焼かれて、しっとりジューシーに仕上がれば完璧です。
しかし、イタリアのレストランにあるメニューの中からは見つけることは出来ません。
チキン・パスタ又はリゾット

Garlic Bread Source: Flickr/Haynes CC BY-SA 2.0
チキンとパスタかアルボリオ米で作ったリゾットは、得に冬にとても満足出来る簡単な料理ですが、イタリアではあまり人気はありません。
むしろ、鳥や鴨などの家禽類をパスタ料理にすることはイタリアでは稀で、そういう組み合わせにゾッとするイタリア人も多いです。
スパゲティー・ボロネーゼ

Chicken Risotto Source: Flickr/alangkelly CC BY-SA 2.0
オーストラリアの家庭料理で人気があるのがこの通称「スパッグ・ボル」。イタリアで見つけることはありますが、オーストラリアのものとは違います。
イタリアではミート・ソースに合わせるのはスパゲッティではなく、きしめんの様なタリアテッレ・パスタや短いパスタです。
「もしソースがキチンと準備されれば、すばらしい料理です。得にタリアテッレやフェタチーニと合わせたら最高です。」とグロッシ氏は語ります。

Spag Bog Source: Flickr/dbgg1979 CC BY 2.0
北アメリカの料理
フェタチーニ・アルフレッド
このホワイト・ソースのパスタ料理は多分北アメリカで1番人気のある料理の1つですが、イタリアでは全く知られていません。
実際、この「フェテチーニ・アルフレッド」は20世紀はじめのローマで生まれましたが、実際イタリア全土に行き渡ることは全くありませんでした。しかし、アメリカ国内でとても人気の料理となりました。
「パスタ・アルフレッドは高品質の材料を使って正しく料理されれば素晴らしい料理になります。黒胡椒がない伝統的なカチオデペペに似た感じになるでしょう。」とグロッシ氏は言います。
フラ・ディアヴォラ・ソース

Fettuccine Alfredo Source: Flickr/Matt Johnson CC BY 2.0
直訳すると「悪魔の僧」と言う意味のフラ・ディアヴォラはパスタや、得にロブスターを使ったシーフード・パスタ料理に使われる辛めのソースです。
こんなものはイタリアには存在しません。ただ、ニューヨーク・タイムズ誌によれば、20世紀前半にイタリアからニューヨークに渡った移民達が作り出した料理だということです。しかしながら、これは北アメリカのイタリアン・アメリカン料理の代表となりました。
ボロニア・シチュー

Fra Diavolo Source: iStockphoto
ボロニア肉と玉ネギ、ジャガイモ、ニンジンをケチャップと香辛料を混ぜたソースで煮込みます。ボロニア・シチューはカナダのニューファウンドランドやラブラドール地域で人気の冬の料理です。
ボロニアという言葉ということばとは裏腹にこの料理を実際はイタリア料理と考える人はあまりおらず、むしろカナダの伝統料理として知られています。

Bologna Stew Source: Timur Saglambilek from Pexels
あまり正統・伝統ではない他の料理
イタリア料理だけが世界的にこういう広がり方をした訳ではありません。
インド料理もそうで、人気のある幾種類ものカレーは実際インドのものでは無かったり、オーストラリアや他の世界中の中華レストランでも本場にはない料理を出しています。
チキン・ティッカ・マサラ
世界中のインド料理のレストランでとても人気がある料理の1つ「チキン・ティッカ・マサラ」もスコットランドのグラスゴー発祥と言われています。
フォーチュン・クッキー

Chicken Tikka Masala Source: Flickr/Lance Roggendorff CC BY 2.0
占いの言葉が入った「フォーチュン・クッキー」も1世紀前にカリフォルニアに渡った日本人移民達が広めました。
むしろ、伝統的な日本の甘煎餅を使っていて、中国の伝統とは殆ど関係がありません。

Fortune Cookies Source: Pixabay/hannahlouise123 CC0
伝統はどこから始まるのでしょうか?
全然伝統的・正統でないとわかった食べものを食べ続けるべきでしょうか?
イタリア料理を例にすると、イタリア料理を代表するのにトマトとモッツェレラチーズのピザほど象徴的なものはありませんが、その伝統はいつ始まったのでしょうか?
現在のピザは伝統的なパンに他のものを乗せた革新的なものとして19世紀終わりにイタリアのナプレスで生まれました。
ヨーロッパによるアメリカ大陸の植民地化後に初めてトマトがイタリアで知られることになりました。ヨーロッパに現れた当時はイタリアの伝統からは全く離れた見知らぬものでした。
ですから、トマトの伝統的なパンにのせたピザというものも、伝統的なイタリア食の崩壊になるのでしょうか?
「料理というものはずっと留まっていることはなく、変化していかなければならない。」とグロッシ氏は言います。伝統料理の継承をしなければならないとしながらも、一方でスタイルの変革を良しとしなければならないとも思っています。
「世界中には全種類の料理が存在出来る場所があります。しかし、イタリア料理は純粋なまま保存して行かなければなりれいません。そうした上で発展するものを開発することが出来るのです。もし料理が純粋にイタリアの精神を持ち、材料の質が高ければ、それはイタリア料理に属すると言うことが出来ます。」とグロッシ氏は言います。