オーストラリアによる国外での難民取調べ制度のもと起こった、防げたはずの死だった。これが、クィーンズランド州検視官の結論でした。
元気で健康な24歳の若者だったハミッド・カーザイさんは、小さな傷が化膿し、マナス島で手当てを求めましたが、その後、耐え難い痛みに長い間苦しみながら亡くなってしまいました。
クィーンズランド州の検視官、テリー・ライアン氏は、パプアニューギニアとキャンベラ両方での、オーストラリアの公務員及び医療従事者による失敗の数々を、140ページに及ぶ報告書で克明に記しました。ライアン氏は個人を特定して非難することはせず、当時、また現在も、国外に移送された人々に対してはオーストラリア政府に全責任があると述べました。
「カーザイさんの死は防ぐことができたはずです。この件に関し協力してくださった専門家の証言にあるように、カーザイさんの病状悪化がもし、マナス島収容所の医療施設で確認され、適切に対応されていたなら、そして深刻な敗血症を起こしてから24時間以内にオーストラリアに移送されていたならば、彼は命を落とすことはなかったでしょう」
7日後、カーザイさんはブリスベンの病院で、敗血症と数回の心不全による脳死状態を宣告されました。
当時の移民相、スコット・モリソン氏は、カーザイさんがすばらしい医療を受けていた、と述べています。
カーザイさんはブリスベンに移送される前に、パプアニューギニアの首都、ポートモレスビーにあるパシフィック・インターナショナル・ホスピタルに送られましたが、ここでの手当ては不十分で、検視官はこの対応の遅れが死を招いたと、オーストラリア政府を非難しています。一方、病院側はこの調査への協力を拒否しました。
団体”Doctors For Refugees”に所属する医師、バリー・パタフォッド氏はこの調査結果を歓迎していますが、国外収容所に留め置かれている人々の状況について、「何も変わっていません。この防ぎえた死から何も変わらず、むしろずっとずっと悪くなっています」と語っています。
再発防止のために何ができるのか
ライアン検視官は、同じような死を防ぐためには亡命希望者すべてをオーストラリアかニュージーランドに移すしかない、と述べましたが、それは起き得ないだろうということは認めています。その代わりとしてライアン氏は、独立した監視のもと、国外での医療をオーストラリアの水準にまで徹底的に見直すための、8つの勧告を出しました。
「オーストラリア政府により国外の収容施設に移送された亡命希望者の死に関する独立した司法調査を確保するために、法的枠組みを設立し資金提供を行うよう、連邦政府の法相に対し勧告します」
カーザイ氏の家族は声明を発表し、「われわれの愛すべき息子であり兄弟である彼の命は取り戻せません。オーストラリア政府がこの勧告を深刻に受け止めるよう強く求めます」と述べました。
内務省は、この調査結果を検討しており、カーザイ氏の家族や友人に哀悼の意を表する、という声明を出しています。
一方、アムネスティー・インターナショナルのケイト・ショイッツアさんは、国連人権委員会のメンバーであるオーストラリアが、その義務を無視していると述べています。
「過去5年間ずっと言い続けてきましたが、オーストラリアは難民条約に定められた人権保護の責任を怠っていますし、それはマナスに留め置かれた人々が、残酷な状況で適切な医療も受けられないままでいる間もずっと続いています」
7月30日、西オーストラリア州の検視官が、3年前クリスマス島で死亡したイラン人亡命希望者、フェイセル・チェゲイニ・ネジャドさんに関する調査を始めました。2012年以来、オーストラリアの国外収容所で死亡した人は12人となっており、マナス島とナウルでは今も、男性、女性、子供を合わせ数百人が収容されています。



