今年のプログラムで唯一、日本からの作品となるミュージカルアニメーション『犬王』は、室町時代に実在し、人々を熱狂させたといわれる能楽師、犬王を描いたストーリー。
メガホンを握ったのは、『マインド・ゲーム』(04)や『夜は短し歩けよ乙女』、(07)『きみと、波にのれたら』(19)、『DEVILMAN crybaby』(18)など、数々の話題作を世に送り出し、世界を魅了してきた湯浅政明監督です。
シドニー・フィルム・フェスティバルに、このほどゲストとして来豪する湯浅監督が、SBS日本語放送の取材に応じてくれました。
日本では5月28日に劇場公開されたばかりの『犬王』。原作は古川日出男さんの小説『平家物語 犬王の巻』です。

Based on The Tale of the Heike, Inu-Oh depicts a legendary figure in Japanese history. Source: Sydney Film Festival
「室町時代のポップスターの姿を描きたい」と、プロデューサーからオファーを受けた監督。
犬王についてはほぼ無知であったと言いますが、当時絶大な人気をを誇るも、語り継がれることがなかった異形の能楽師と盲目の琵琶法師にスポットライトを当てた物語に興味をそそられたと話します。
「歴史で想像する昔が狭い、もっといろいろあったはず」
「名前しか残っていないけど、名前が残っている人以上にすばらしい人だったのではないのか」
また監督は、混沌とした、生きるのが難しい時代に、素直に自分のやりたいことをやりとげようとしている主人公の姿に魅了されるようになり、次第に「自分もうこういう人であれたら」と思いを重ねるようになります。
「真直な表現者」を描きたかった、と振り返る監督は、主人公をできるだけ役者に近づけようと、制作チームとともにキャラクター像をすり合わせていったと言います。
犬王役にはバンド嬢王蜂のアヴちゃん、琵琶法師の友魚(ともな)役には森山未來さんが抜擢され、ふたりのエネルギッシュな才能が見事、主人公に反映されています。
海外では「ロックオペラ」などとも評されている、当ミュージカルアニメーション。
作品の核とも言える音楽を担当したのは、『あまちゃん』や『いだてん〜東京オリムピック噺〜』で知られる大友良英さんですが、先に「振り付け」(絵コンテや動画)を提供し、そこから曲を創りだすという、通常のミュージカルとは逆のプロセスであったとし、一番苦労した部分であったと明かしました。
しかし何度も意見を交わし、時間をかけながら創りあげたからこそ、「良い作品ができた」と監督は語ります。
まるで野外ロックフェスのようにパフォーマンスを繰り広げる犬王と友魚を「体感」してほしいという監督。
映画『犬王』は6月9日と10日、シドニー・フィルム・フェスティバルの一環として上映されます。また湯浅監督も、ゲストとして上映会に登場します。
詳しくはシドニー・フィルム・フェスティバルのホームページから。
監督のフルインタビューは下記からどうぞ

Inu-Oh is a fusion of Japanese Noh and contemporary rock anthems Source: Sydney Film Festival
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