新型コロナウイルスパンデミックにより、私たちの日常に欠かせなくなったQRコード。
ニューサウスウェールズ州では政府が8月12日にCOVID-セーフチェックインシステムを開始して以来、平均で1日244万件、これまで合計で11億件以上のQRチェックインが行われてきました(データは2021年11月8日時点のもの)。同州では2021年7月12日より、すべての職場や小売店へのQRチェックインが義務化されています。
デジタル・カスタマーサービス担当相のビクター・ドミネロ氏は、QRコードは「コンタクトトレーサーの仕事の効率化や、Dine and Discoverバウチャーによる経済の活性化など、変革をもたらした」とし、「QRコードは中心的な役割を果たしている」とSBS日本語放送に語りました。
QR コード開発者、株式会社デンソーウェーブAUTO-ID事業部の原昌宏さんは、開発当初、QRコードが一般市民によってこれほど使われるようになるとは想像していなかったと語ります。

COVID-19 QR check in code and safety signs are placed at the entrance of outdoor dining areas of pubs and cafes at The Rocks, Sydney, Sunday, October 17, 2021. Source: AAP Image/Bianca De Marchi
デンソーでバーコードリダーや光学文字認識(OCR)装置の開発に携わっていた原さんは、1992年、自動車の製造現場からバーコードの読み取りを速くできないかという依頼を受けます。
自動車業界では当時、ニーズの多様化により、部品が増加していた上、バブル崩壊により大量生産から多品種少量生産になり、情報のきめ細かやかな管理が求められていたと語ります。
実際に製造現場へ足を運んだ原さんは、最大20文字ほどの容量しか格納できないバーコードを補うため10個のバーコードを並べて利用しているのを目にし、それを一つ一つ読み込む効率の悪さを実感。「これから来る情報化時代にバーコードは限界」と感じ、QRコードの開発に踏み切ります。
バーコードの高さを低くして、積み重ね、どんどん小さくしていくうちに、白黒の格子状が多くの情報を取り込む上で最適であると判明。しかし情報量が増え、構図が複雑になることで、読み取り時間も増加しました。

QR codes were initially developed to relace bar codes in the manufacturing industry Source: DENSO WAVE INCORPORATED
従来のバーコードと同じスピードで読み取るために考案されたのが、QRコードの位置を示す「切り出しシンボル」。この切り出しシンボルにはあらゆる印刷物を研究して突き止められた、印刷物で最も使われていない白と黒の比率である1:1:3:1:1が施されていることから、周りに映るあらゆる文字にも惑わされず、すばやく正しく読み込むことが可能となりました。
QRコードは開発当初から、オープンソースとして公開されています。

Position detection pattern with black/white ratio of 1:1:3:1:1 allows instant scanning Source: DENSO WAVE INCORPORATED
これについて原さんは、当時はすでにバーコードの特許が切れて無料であったことに加え、QRコードをライセンス化することで価格競争が起こり、さまざまな2次元コードが氾濫することが予想されたからと説明します。
「いち早くQRコードだらけにして他のコードが市場に入らないよう」、誰でも使えるように公開したと言います。
原さんは今後、QRコードに色をつけるなどして、画像や動画などの大きな情報を取り扱えるようにしたいと考えています。
心電図やレントゲン写真をQRコード化し、それを常に携帯することで、倒れたときなども病状が正確にわかり、適切な治療や対応を受けることができるようになると語ります。
コロナ禍で身近な存在となったQRコードですが、デジタル・カスタマーサービス担当相のビクター・ドミネロ氏は、QRコードチェックインは「一時的な対策に過ぎない」とし、今後はヘルスアドバイスに沿っていずれは終了すると述べています。なお、具体的な時期については言及を避けました。
「QRコードの素晴らしさは、また必要に応じて、再びスイッチを入れることができ、すぐに利用できることです」
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