オーストラリアの選挙法には抜け穴があり、正式な選挙キャンペーン期間中でなければ、誤解を招くような内容の広告も許されます。
これについて専門家からは、標的となった候補者個人だけでなく、選挙プロセスに対してもダメージを与えるとの懸念が上がっています。
前回総選挙が行われた2022年、ACT選出のデイビッド・ポーコック上院議員（無所属）は、オーストラリア選挙委員会（AEC）に正式に苦情を申し立てました。選挙が公示されてから１カ月後に、デジタル加工処理された自身の画像が選挙広告で使われたからです。
画像ではポーコック氏がシャツの胸を広げ、中に着ているグリーンズのロゴが書かれたTシャツを見せているものです。道路脇に置かれた看板や、投票所の近くに駐車しているトラックで表示されていました。
この広告は、保守的な政治ロビー団体アドバンス・オーストラリア（Advance Australia）が認可したものです。
AECはこの画像について、誤解を招くものであり、選挙キャンペーン中に人目に触れるべきではないとの決断を下しました。アドバンス・オーストラリアはAECの判断に同意しませんでしたが、広告を取り下げました。
Digitally altered flyers of Alex Dyson, authorised by Advance Australia, were placed in voter's mailboxes throughout the candidate's electorate of Wannon. Credit: Supplied
そして今年３月31日、2025年の総選挙を実施するための令状が発行され、正式に選挙キャンペーンが始まりました。
アドバンス・オーストラリアは同じような選挙広告を展開しました。今年２月、今回はポーコック議員ではない別の候補者について、デジタル加工処理した画像を拡散しましたが、この行為は違法ではありませんでした。
ビクトリア州ワノン選挙区では、デジタル加工処理された無所属のアレックス・ダイソン候補のチラシが配られました。ポーコック議員と同じく、シャツの胸を広げ、中に着ているグリーンズのロゴのついたTシャツを見せているものです。
ダイソン候補は、この画像を見た人からさまざまな反応があったと語ります。
「小さく書かれた文字を見てこの広告がアドバンス・オーストラリアによるものだと見破り、大きくショックを受けた人もいます。文字を見逃した人や視力の悪い人などはまた違った理由でショックを受けました」（ダイソン候補）。
モナシュ・ロースクールのイーフォイ・エング（Yee-Fui Ng）准教授は、アドバンス・オーストラリアは「以前やってはならないと言われたことを、法の抜け穴を見つけて再びやっている」と指摘します。
一方アドバンス・オーストラリアの報道担当者は SBS Examines に対し、ダイソン候補の画像を使ったチラシなどは「選挙法に違反していない」とアドバイスされたと答えています。
選挙法第329条では、有権者が投票を行う際に誤解を招いたり、だますような内容を発表・出版することを禁じています。しかしこれが適用されるのは、令状が発行され、正式に選挙キャンペーンが始まってからです。
オーストラリア・インスティチュートのデモクラシー＆アカウンタビリティープログラムでディレクターを務めるビル・ブラウン氏は、政治広告が誤解を招くものであるかどうかを判断するのは、その広告を見た人にかかっていると語ります。
「（一般的に）広告を見る際に、適度に懐疑的な見方を持つのは良いことです。そして政治広告を見る際には、その注意を二倍にして行います」（ブラウン氏）。
その情報、どこで知ったものですか？
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