和牛着物ブッチャー・渡邊麻莉夏 さん 和装で和牛カット、世界各地でPR活動

(Supplied/ Marika Watanabe, Wagyu Kimono Butcher)

(Supplied/ Marika Watanabe, Wagyu Kimono Butcher)

世界中に和牛を広めるため、着物を着て世界各地で和牛のカットのプロモーションイベントなどを行う「和牛着物ブッチャー」として活動する渡邊麻莉夏(わたなべ・まりか)さん。11月にはメルボルンで長崎和牛のプロモーションイベントを行い、着物姿で観客に和牛のカットを披露しました。渡邉さんに、和牛着物ブッチャーになった経緯や活動などについて、インタビューで詳しくお話を聞きました。


世界各地で、神戸ビーフを主に和牛のセカンダリーと呼ばれるヒレとサーロイン以外の部位の輸出拡大に向けて、カットの方法や調理の方法を伝える活動をする渡邉さん。「和牛着物ブッチャー」ということで、このカットのプロモーションイベントは和装で行います。

(動画:渡邊麻莉夏さんのメルボルンでの長崎和牛プロモーションイベント
Video: Wagyu Kimono Butcher, Marika Watanabe promotes Nagasaki Wagyu in Melbourne)
元々は、英語の教師を目指していた渡邊さん。教師を目指す傍らでいくつかアルバイトをしていたときに、肉に触れる機会があり、触れた瞬間「雷が落ちたような感じ」がしたと言います。作業の面白さや肌感覚的にそれが合っていたということ、また肉の部位についてだけに留まらず生きている牛の勉強にも興味が一気に興味が出たとのこと。勉強する手が止まらなくなり、それ以降知識や技術を身につけていきました。

(Supplied/ Marika Watanabe, Wagyu Kimono Butcher)
Marika Watanabe, Wagyu Kimono Butcher
渡邊さんの活動は8割が海外。精肉加工の知識があり、英語ができ通訳をつける必要がないということで、海外のプロモーションの専任としてやらないかと声をかけてもらい、昨年8月1日に兵庫県の食肉加工大手に入社しました。入社1ヶ月から海外を飛び回り、11月にメルボルンで長崎和牛のプロモーション活動を行ったのを含めて、着物ブッチャーとして訪れた国はすでに合計38カ国となります。

日本にいるときは、と畜場で生きた牛が食肉になるまでの工程の体験や勉強、海外のクライアントや海外で活動する日本のクライアントとの打ち合わせ、出張、せりや牧場、牧場直営のお肉屋さんに行ったり、また子供向けのキッズセミナーをしたり、北海道で和牛の将来性などについての講習会を行ったりしています。

強面だったり筋肉質な職人もいる中、肉を触っているようには見えない若く小柄な女性を見た観客に「この子は何をやるの、何ができるの?」といった「上から目線」な反応をされることも結構あると言う渡邊さん。しかしそのような態度も、渡邉さんが和牛を切って断面を見せると、これは凄いかも、と一変するそうです。そして渡邊さんが牧場やと畜についての予備知識などを付け加えていくと、職人として本物だと理解を示してくれるようになり、楽しそうだった目つきや軽視をしていた目つきが「絶対一個も見逃さないぞ」という目つきに変わると言います。

渡邊さんは現地に赴くごとに、イベントの対象者が職人か一般消費者かなど、そのイベントの特色を見極めてから重点を置く部分を変えると言います。今回のメルボルンでのイベントは一般の消費者を対象とした色が強かったので、カットの仕方を細かく教えるのではなく、日本で人気のある部位や、どのように食べられているのかなど、和牛の魅力を伝えたり、またお客さんに興味を持ってもらうような形で行いました。
(Supplied/ Marika Watanabe, Wagyu Kimono Butcher)
(Supplied/ Marika Watanabe, Wagyu Kimono Butcher)
一から始めたこの活動。現地に行くとイベントの企画に呑まれてしまったりと、本当に伝えたいことを伝えるのが難しかったり先方との意識の差があるときがある、と渡邊さんは言います。日本からはるばる赴くので、このような葛藤、またもどかしさはかなり応えるとのこと。しかしその一方、現地でお客さんの感覚や意見を目の前で聞いたり美味しいという笑顔を見せてもらうと、本当にしっかり和牛や神戸ビーフを伝えていきたい、もっとわかってほしい、と、やりがいを感じる、とのことです。では渡邊さんの言う、「本当に伝えたいこと」とは何でしょうか。

海外ではメインのヒレやサーロインはステーキ用として切ったり加工したりはできるが、ももやバラの部位はある程度分割をしたり少し手を加えなければならず、そのような技術や知識が浸透していないため全てミンチになってしまう、とのこと。その知識を広い範囲の人に伝えていくということです。
(Supplied/ Marika Watanabe, Wagyu Kimono Butcher)
(Supplied/ Marika Watanabe, Wagyu Kimono Butcher)
また渡邊さんは海外に伝えたい生産現場の情報として、環境整備の徹底加減、飼料の作り方や飼育の難しさなどを挙げます。

「私自身が和牛を食べることもお肉を切らしてもらうことも、牛を見ることも凄く大好きで、で、それが自分の人生の軸であり、仕事っていう意識ではあまり行っていなくて」と語る渡邊さん。
もうこれが自分自身の使命であり、人生だっていう気持ちでまず行っているということと、後は、自分自身が好きっていう思いだけではなくて、農家さん、卵を管理してくれる方々とか、お肉をカットしてくれる方、牛を解体してくれる方…って、お肉になるまでの工程って、物凄い沢山の人が関わってくださってて、その沢山関わってくれてる人たちの代表で海外に、現地に行かせてプロモーションさせてもらっている状態なので、そういう人たちの大変さを自分自身が知ってて、自分自身が見てるわけですから、そこをしっかりと余すことなく海外の人に伝えて、和牛を扱うことの特別さと緊張感をしっかり持ってもらいたいなというのが、今一番気持ち的には強いですね。
また渡邊さんが緊張感を持ってほしいと強めるのには、緊張感が無くお肉に触れている人達もある程度いるから、という理由があると言います。危険な状況に置かれることもあるなか休みなく管理をしたり、厳しい基準をクリアするといった現場の過酷さなどの背景があるということに触れ、和牛は私たち日本の誇りであり宝なので、その意識を再認識してもらい特別にしっかり扱う意識を高めてほしい、と思いを語りました。

渡邊さんのインタビューは下記からもお聞きいただけます。

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