ニューサウスウェールズ州、クイーンズランド州、南オーストラリア州、ビクトリア州の数十軒の豚舎から、日本脳炎ウイルスが検出されたことから、保健当局は警戒を呼びかけています。
日本脳炎ウイルス(The Japanese encephalitis ・JEV) は通常、豚や鳥に感染するウイルスですが、人間も感染した動物や鳥の血を吸った蚊に刺されることで、うつる可能性があります。
大半の場合、感染しても発症することはありませんが、まれに致命的な脳感染症を引き起こすことがあります。
日本脳炎はパプアニューギニアやトレス海峡に広く分布していますが、オーストラリア本土ではこれまでごくまれに、クイーンズランド州北部で確認されてきました。
オーストラリアのチーフ・メディカル・オフィサー代理であるソニヤ・ベネット博士は、日本脳炎は「国家として懸念すべき伝染病」であると訴えています。
8日火曜日午後の時点で、オーストラリアでは、ニューサウスウェールズ州の男性1人と子ども1人が入院するなど、9人のJEV感染者が確認されているほか、多数の感染者が調査中です。
また同日夜には、ビクトリア州北部の60代の男性が日本脳炎により死亡したことが、ビクトリア州保健省によって発表されました。
保健当局は現在、この男性の感染経路を調査中です。
JEVはどれくらい危険なのか?
グリフィス大学の免疫学者アリ・ザイド博士によると、日本脳炎ウイルスはデング熱ウイルスや黄熱病ウイルスと同じフラビウイルス科に属するウイルスです。
博士によると、感染しても99パーセントの人間は無症状で終わる一方で、約1%のケースでは脳炎を含む病気に進行する可能性があると言います。

「発病した人の約20%は死に至る可能性があります」
脳炎とは、医学用語で「脳の腫れ」を意味し、ヒトの場合は、その他に頭痛、発熱、首のこわばり、場合によっては麻痺などの症状が現れます。
JEVはこれまでに、クイーンズランド州、ビクトリア州、南オーストラリア州、ニューサウスウェールズ州の約42の豚舎で検出されています。
感染経路は?
ヒトは蚊に刺されることで日本脳炎ウイルスに感染します。
このウイルスはヒトからヒトへ感染することはなく、また豚肉製品を食べても感染することはありません。
主な感染源は豚と水鳥で、ヒトは感染した豚や水鳥の血を吸った蚊に刺されることで感染します。
マレーシアでは1990年代後半に、JEVが大発生し、何十万頭もの豚が安楽死させられました。
通常、オーストラリアでJEVに感染した人は、クイーンズランド州北部に限られています。
クイーンズランド大学のウイルス学者ロイ・ホール氏は、JEVはパプアニューギニアまたはインドネシアからオーストラリア本土に持ち込まれた可能性が高いと説明します。
「オーストラリア中央部やマレー・ダーリング流域での大雨の後、ウイルスは感染した水鳥によって南東部へ運ばれ、水鳥が休息する水辺で蚊との間で循環することで南東部へ拡散していると見られます」
身を守るには?
ニューサウスウェールズ州保健局は、JEV感染のリスクを減らすために、蚊に刺されないように身を守ることの重要性を強調しています。
これには、外出時に素肌を隠すこと、露出した皮膚に蚊よけなどを塗ることが含まれます。
「DEETやピカリジン(イカリジン)入りの蚊よけを使うこと、夕暮れ時や明け方に屋外に出ないこと、家の周りに溜まった滞留水をなくすことが、蚊の繁殖を制限する最善の方法です」とザイド博士は述べています。
モナシュ大学感染症学部のカイン・レーダー教授によると、オーストラリアでは2種類のJEVワクチンが入手可能ですが、これらは通常、旅行者にのみ投与されるとのことです。
しかし、もし流行が急速に拡大し始めたら、この状況は変わる可能性があります。
「現地での日本脳炎感染者の数と範囲に関するさらなるデータが明らかになれば、公衆衛生当局は、感染する可能性のある人々へのワクチン推奨の拡大を検討する必要があるかもしれません」
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