実子4人の殺害で20年服役した女性に恩赦

かつて「オーストラリア史上最悪の女性殺人犯」と呼ばれたキャサリン・フォルビッグさんが恩赦を受け釈放されました。死亡した4人の幼い子供たちは自然死の可能性も。

Kathleen Folbigg in court

Kathleen Folbigg has been pardoned after 20 years. Source: AAP / Joel Carrett

4人の幼い子供を殺害した罪で、20年間服役していたキャサリン・フォルビッグさん(55)が5日月曜日、恩赦を受け釈放されました。

「オーストラリア史上最悪の女性殺人犯」と呼ばれたフォルビッグさんは、4人の殺害について常に無罪を主張してきました。

オーストラリアを騒がせたフォルビッグ事件とは?

2003年、ニューサウスウェールズ州の陪審は、1989年から1999年にかけて4人の実子を殺害したとして、フォルビッグに有罪判決を下しました。

フォルビッグは、パトリック君、サラちゃん、ローラちゃん3人の殺害、長男キャレブ君の過失致死で有罪となり、25年間釈放なしの懲役40年の判決を下されました。

4人の子供たちは生後19日から19ヵ月の間にいずれも急死しており、当時、医学的、科学的観点から死を説明するのは困難なものでした。

フォルビッグの殺人および過失致死罪の有罪判決に用いられた証拠には、彼女の日記のほか、論争を呼んだある理論、「メドウの法則」がありました。
Kathleen Folbigg walking with a woman outside court
Kathleen Folbigg was 35 years old when she was convicted of murder and manslaughter and sentenced to 40 years in prison with a 25-year non-parole period. Source: AAP / Mick Tsikas
イギリスの小児科医ロイ・メドウが提唱し、物議を醸した「メドウの法則」とは、「1つの家庭で3人以上の乳児の突然死は、他に証明されない限り、必ず殺人の結果である」というものでしたが、その後、メドウの法則は否定され、海外ではこの法則を根拠とした殺人事件における有罪判決の棄却が相次いでいました。

恩赦の理由

フォルビッグは月曜日、無条件で恩赦を受け、同日の午前にはニューサウスウェールズ州北部・グラフトン近郊のクラレンス矯正センターから自由の身になりました。

ニューサウスウェールズ州総督は、州司法長官の勧告に基づいて恩赦を与える権限を持っていますが、マイケル・デイリー司法長官は、「有罪判決に合理的な疑いを投げかける新たな科学的証拠」があるとして、マーガレット・ビーズリー総督にフォルビッグの恩赦を勧告。その後受理されました。
NSW Attorney-General Michael Daley at a table. There are microphones in front of him.
NSW Attorney-General Michael Daley said he wished Ms Folbigg well after she was pardoned. Source: AAP / Bianca De Marchi
「これは関係者全員にとって恐ろしい試練であり、今日の我々の行動によって、この20年にわたる問題に何らかの終止符が打たれることを願っています」

デイリー氏は、元ニューサウスウェールズ州最高裁長官トーマス・バサースト氏によるフォルビッグさんの有罪判決に関する調査の要約を事前に受け取っており、バサースト氏が、「フォルビッグさんが子供たちにとって思いやりのある母親でなかったという提案を受け入れることができない」と述べていたことも明らかにしました。

フォルビッグさんには今後、国を相手に民事訴訟を起こすか、恩給をもらうか、2つの選択肢があると、彼女の弁護団は説明。

しかし「彼女の準備ができるまで」何も押し付けることはないとしています。

調査で明らかになった新たな情報とは?

2019年に始まった1回目の調査では、フォルビッグさんとその娘たちに珍しい遺伝子変異が確認されており、それが引き金となり、2回目の調査が始まりました。

バサースト氏が責任者となった2022年11月に開始された2度目の調査では、「赤ちゃんが自然死した可能性」について、信頼できる証拠が聴取されました。

心臓と遺伝の専門家からの証拠が調査によって考慮され、法医学病理学者、小児集中治療専門医、神経学者からの証拠も考慮されました。また、心理学、精神医学、およびフォルビッグの日記に関連する他の証拠も考慮されました。

「この調査における一連の証拠全体から、フォルビッグさんの有罪には合理的な疑いがある」と、4月にソフィー・カラン弁護士は述べていました。

最後まで見捨てなかった友人に感謝

6日火曜日、釈放後初の公式声明を発表したフォルビッグさんは、最後まで彼女を見捨てることなかった家族や友人、特に親友であるトレイシー・チャプマンさんに「永遠の感謝」を伝えました。

「彼らなしでは、私はこの試練を乗り切ることはできなかったと思います」

浮き彫りとなった豪刑事司法制度の問題とは?

オーストラリア最高の科学機関は、フォルビッグさんの恩赦を受け、国の刑事司法制度の見直しを要求しています。

オーストラリア科学アカデミーは、2度目のフォルビッグ事件の調査において、独立したアドバイザーを務めました。

同アカデミーのアナ・マリア・アラビアCEOは、科学が意思決定に反映され、さらなる誤判断を防ぐための改革が必要であると述べています。

「キャサリン・フォルビッグが赦免されたことに、私は心から安堵しています」

「科学者をボクシングのリングに上げて、互いに戦わせる必要はありません。必要なのは科学が公正に、透明性を持って、司法制度から独立した意見を提供できる方法です」

神経科学者でもあるアラビアさんは、カナダやニュージーランドなど、志を同じくする他の国々が刑事事件審査委員会を導入していることを指摘しています。

「これは非常に成功したモデルであり、オーストラリアにとっても、このような制度や類似のものを導入するチャンスです」

-With additional reporting by the Australian Associated Press.


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Published

By Isabelle Lane, Yumi Oba
Presented by Yumi Oba
Source: SBS

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