SBS Japaneseシドニーチームの北田和代が先週、コロナウイルスによる旅行制限の中、両親の介護のために日本に帰国しました。以下はシドニー空港に到着してから、羽田空港を出るまでのリポートです。
リポートの内容は2020年6月下旬時点の、ある一個人の体験です。渡航に必要な手続きなどは、オーストラリア内務省や日本の大使館や領事館、航空会社などに確認して下さい。

Shops were closed at Sydney Airport Source: Kazuyo Kitada
シドニー空港での出国手続き
日本への夜便に乗るため、シドニー空港に午後6時半に到着。チェックインの「D」出入り口のみが利用でき、空港には乗客のみが入場できる。入り口では警備員がパスポートとチケットを確認する。
空港に入場後は全員がチェックイン「A」に移動。学生・ワーホリの人はそのまま通過し、市民権・永住権保持者はボーダーフォースからの渡航を許可するメールを提示し、書類を作成する。その後書類を受け取り、チェックインカウンターに進む。
チェックインの際、ほかの受付担当者が、書類の内容を確認する電話をかけていた。ずいぶん厳重にチェックするなと思ったが、多くの人が自国に帰ろうと必死な中で、書類を偽造する人がいるのかもしれない。
出国手続きの際にあらためて、永住権保持者であることを伝える。審査官に日本に住んでいるのかと聞かれたので事情を説明すると、「状況が良くなるよう祈っているよ」と言われ、オーストラリアの良さを感じる。本当に同情してくれているのが分かる。

Source: Kazuyo Kitada
日本へのフライト
その日の夜便は3便、羽田、ドーハ、ドバイ。空港内はほぼ全ての免税店やレストランが閉まっている。利用客がいないので当然だともいえるが、慣れ親しんだ空港の活気が失われ、まるでシドニーという街自体が世界から孤立したように感じる。
搭乗もソーシャルディスタンシングを守って行われる。機内ではマスクの着用が義務づけられ、座席ポケットには「安全のしおり」だけが入っている。免税品販売のカタログや機内誌はない。席は1人おきの着席で、希望者には消毒用のアルコープワイプが配布される。
それ以外は通常のフライトと変わらない。ただ乗客は皆静かで、ホリデーに行くなどの機内独特のうきうきした空気は全くない。
一人おいて隣に座るのは、シドニー在住のドイツ人。これからフランクフルトに向かうという。「親の具合が悪くて、3カ月は行く形かな」とか。私もそうだ。彼も妻をシドニーにおいて、単身で故郷に向かっている。
移民の多いオーストラリア。家族が違う国籍を持っていることも多い。コロナウイルスの影響で、すぐに帰れると思っていた故郷が、宇宙のかなたのように遠く感じる。まだインターネットが普及していない時代は、欧州からの移住者など、もっと不安だっただろう。
日本到着と待機
翌朝5時45分に羽田空港に到着。シートベルトの着用サインが消えたら荷物をまとめ始めるところだが、今回は全員着席していなければならない。
最初に国際線の乗り継ぎ客が降機し、乗客の半分以上がいなくなる。残るのは日本に入国する乗客だ。降りたところでまとめられ、コロナウイルスに関する書類を予備確認される。その後矢印にそって通路を進み、出口ではなく待機場所となっている別の搭乗ゲートに向かう。通路の途中に囲いがあり、ここでウイルス検査を受ける。
待機場所では、入国後の行動について検査官に報告をする。両親のいる故郷に帰る前に東京都内の民泊で14日間自己隔離することを告げると、ウイルス検査が陰性であることを確認するまでは、宿泊先への移動ができないとのこと。民泊も旅館と同じ扱いになるとのことで、当然ともいえる。
検査結果はいつ判明するか分からない。見通しを聞くと「明日までかかることはないでしょう」とのこと。朝6時に聞く質問としては、かなり幅のある回答だ。
空港から滞在先までの移動手段は、家族・職場からの送迎または厚生労働省が推奨する基準を満たしているハイヤーだ。公共交通機関は使うことができず、タクシーは公共交通機関となる。
私の場合、陰性結果が出て、ハイヤーの運転手の手配が確認されてからでないと、待機場所となっている搭乗ゲートから出られない。ほとんどの乗客はハイヤーを事前に予約していたが、私はしていなかった。
電話で問い合わせのできるハイヤー会社が1社しか見つからず、しかもきょうは混んでいるという。幸いにも配車担当者が同情的で、ウイルス検査の結果が出たら電話してほしいという。「その時に空きが見つかるか探します。絶対に見放しません」と。彼女はきっと、何人もの日本人帰国者の状況を聞いているのだろう。
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待ち時間の間は、ほとんどの乗客は距離を置いて座っているが、ときどき距離を詰めて座り、大声で話し出す人がいたので3回席を変えた。待機場所の椅子の清掃などは、待機していた間一度も行われなかった。座る場所を変えるたびに、自分で除菌シートで掃除した。
厚生労働省のホームページによると、毎日何人かは無症状のまま陽性の検査結果が出ている。

Warm message from airline staff after the flight from Sydney to Tokyo, 26 June 2020 Source: Kazuyo Kitada
待機を終え、空港から滞在先へ
午後12時半に、シドニー~羽田便の乗客のウイルス検査の結果がでる。陰性。ハイヤー会社にあらためて電話すると、午後2時半に予約が取れた。係官から、予約の1時間前の午後1時半に待機場所を出るように言われる。
待機場所には飲み物とスナック類の自動販売機しかなく、空腹感を感じていたので、まだ待機しなければならない人はどうするのかと考える。午後1時半に入国審査に向かうと同時に弁当が配布され始めた。
空港に到着してから8時間後に解放され、預け荷物を取りに行った際、航空会社のスタッフからの手書きのメモがタグについていて、涙が出た。
検疫ゲートは閉じられ、入国審査・税関は通常通りだった。ハイヤーに乗り、空港を出られたのは午後2時半だった。
リポートの内容は2020年6月下旬時点の、ある一個人の体験です。渡航に必要な手続きなどは、オーストラリア内務省や日本の大使館や領事館、航空会社などに確認して下さい。