人種差別を「非常に大きな問題」と考えるオーストラリア人 著しく増加

スキャロン財団が毎年実施している「社会的結束マッピング」の最新調査によると、オーストラリア人は引き続き移民を支持する一方で、人種差別を「非常に大きな問題」と考える人が20%増加していることがわかりました。

Gary Zhai

Brisbane resident Gary Zhai says a neighbour has been racially abusing him. Source: Supplied/Gary Zhai

移民、文化的多様性、差別を調査する新たなアンケートによると、多くのオーストラリア人が人種差別を「非常に大きな問題」と考えていることがわかりました。

スキャンロン財団は2020年7月と11月、2021年7月の3回にわたり、3,500人以上を対象に110以上の質問を含むアンケート調査を実施しました。

このほど発表された2021年の「社会的結束マッピング調査」の結果では、オーストラリアにおける人種差別の回答の変化が浮き彫りになりました。

人種差別を「非常に大きい」問題だと考える人は、昨年40%でしたが、今年はその数字が60%までに跳ね上がっています。

「これは非常に注目すべき結果です。人種差別のような一般的な質問でこれほどの変化が見られることはありません」と、報告書の著者であるアンドリュー・マーカス名誉教授は、SBSニュースに対して述べました。

しかし、誰もがこの結果に驚いているわけではありません。
Gary Zhai
Gary Zhai says he has reported numerous instances of racism to police. Source: Supplied/Gary Zhai
博士号を取得するため中国からブリスベンに来豪したゲイリー・ザイさんは、2020年に入ってから近所の人に挑発的な言葉をかけられてきたと話します。

近所の女性は、中国系の人を指す中傷的な言葉で、ザイさんに話しかけてくると言います。

「車を動かしなさい、あなたはコロナウイルスの運び屋よ」、「国に帰れ!」と彼女に言われ、ザイさんはショックを受けたと話します。
彼女は私に、車を動かしなさい、あなたはコロナウイルスの運び屋よと言い放ちました - ゲイリー・ザイさん、 ブリスベン
ザイさんはこれまでに、暴言や不法侵入、車の破損、人種差別など、35件のいやがらせについて警察に報告してきましたが、ほとんど対応されていないと言います。

「オーストラリアにはCOVID以前から人種差別がありました」と話すのはマルチカルチャル・ユース・アドボカシー・ネットワークのカーメル・ゲラ氏です。

「多くのことがそうであるように、COVIDによって人種差別が前面に出てきたため、目に見える形で人々が話題にするようになったのです。私たちは対応しなければなりません」

移民と多文化主義には肯定的な姿勢

人種差別に対する懸念が高まる一方で、調査では外国人嫌いや人種差別的な姿勢が多数派ではないことがわかりました。

「移民は一般的にオーストラリアの経済に良い影響を与えるか?」という質問では、86%が同意。2019年の回答は76%でした。

オーストラリア民族コミュニティ協議会連盟(FECCA)のメアリー・パテソス議長は、「移民や難民はこの国で繁栄し、多大な貢献をしている」と述べています。
「しかし特定のグループや個人に対して人種差別的な態度をとることで、それを困難にしている個人はいます。また、移民コミュニティのためのネットワークがないというシステム的・構造的な不利により、例えば就活の際にあまり注目されないということもあると思います」

「多文化主義はオーストラリアにとって良いか」という質問に対しては、参加者の89%が賛同しました。

マーカス教授によると、外国人嫌い、人種差別、偏見といった感情に関しては、大多数がオーストラリアで「問題になっている」と認識している一方で、大多数はそのような否定的な態度を「支持していない」ということが明らかになったと言います。

懸念を引き起こしている理由は?

メルボルン大学で社会学の教授を務めるカレン・ファーカーソン氏は、いくつかの要因が関係している可能性があると話します。

「ブラック・ライブズ・マター運動がオーストラリアにやってきたことや、アボリジニの拘留中の死に大きな注目が集まっていること...そしてCOVIDにまつわる反アジア差別のせいでもあります」

「逸話として、COVID以前は路上で嫌がらせを受けたことがなかった人が路上で嫌がらせを受けるようになったという話を聞いたことがあります...そういった全てのことが重なり、増加につながっているのだと思いますが、20%というのは本当に大きな増加だと思います」。
この調査では、非英語圏出身者の34%が高いレベルの差別を受けたと回答したのに対し、オーストラリア生まれの人は11%、海外の英語圏で生まれた人は12%でした。

「自分が経験していることが不適切であり、どうにかしたいと、私たちに連絡する人が増えている」とパテソスさんは言います。

「彼らは非常に傷づき、とても怖がっており、情報を求めるとともに、親身になって話を聞いてほしいと思っているのです」。

特定のグループに対する否定的な考え

一方で、この調査では逆説的な「人種優遇ヒエラルキー」について言及しています。

多文化主義や移民には肯定的な考えがある一方で、異なる国籍のグループに対して肯定的、否定的、中立的な感情を持つかどうかを尋ねたところ、イラク系、中国系、スーダン系のオーストラリア人に対する否定的な意見が高いことがわかりました。

回答者の42%がイラク系オーストラリア人に対して「非常に否定的」または「やや否定的」と感じており、オーストラリアに住む中国系の人々に対しては43%、スーダン系の人々に対しては46%が否定的な意見であることがわかりました。
「人種的、民族的なヒエラルキーの観点から見ると、中東やアジア系オーストラリア人に対して、より否定的であることは明らかです」

「しかし、パンデミックによりその割合は、よりネガティブなものにはなっていない」と述べています。

昨年と比較すると、中国系オーストラリア人では1%、インド系オーストラリア人では6%、レバノン系オーストラリア人では7%、スーダン系オーストラリア人では10%、否定的な回答が減少しています。

マーカス教授によると、これらは人種差別的で、外国人嫌いという強い考えを抱く少数派によるもので、今回の調査が示すように、そのような少数派の人々は、「実際には増えるどころか減っている」と述べています。

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Published

By Hannah Kwon
Presented by Yumi Oba
Source: SBS News

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