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ドメスティック・バイオレンスやファミリー・バイオレンスとは? オーストラリアで助けを得るには?

ドメスティック・バイオレンス(家庭内暴力)をテーマにした画期的なドキュメンタリーシリーズ「See What You Made Me Do」がSBSで放送されるにあたり、女性に対するさまざまな暴力がどのように分類されているか、また、あなたやあなたの知り合いがどう支援を受けられるか、その方法をご紹介します。

Published

By Emma Brancatisano
Presented by Yumi Oba
オーストラリアでは毎週、平均して1人の女性が、現在または過去のパートナーに殺害されています

最近では、ロディ・ラマダンさんケリー・ウィルキンソンさんが、この統計が示すように、命を落としています。2人とも、現在のパートナーと元パートナーにそれぞれ自宅で殺害されています。

男性による家庭内暴力の撲滅活動を行っている団体、「ノー・トゥ・バイオレンス」のCEO であるジャッキー・ワット氏は、「オーストラリアでは最近、いくつかの恐ろしい例を目にしてきました」と語ります。「今こそ、家族や家庭内暴力を国家的な緊急事態として捉え、これ以上容認できないようにすべきだと思います」と述べています。

女性に対する暴力とは?

国の暴力防止機関である「アウア・ウォッチ」によると、女性に対する暴力はさまざまな形で存在します。交際関係における暴力、家庭内暴力、デート・バイオレンス、職場でのセクシャル・ハラスメント、街頭でのハラスメント、ネット上での虐待、強制的なコントロールなどです。

また、アボリジニやトレス海峡諸島民の女性が経験する人種差別的・性差別的な暴力、トランスジェンダーの女性が受ける性差別的・トランスフォビックな暴力、障がいを持つ女性が直面する制度上の暴力なども含まれます。
「アウア・ウォッチ」のCEO、パティ・キナーズリー氏によると、これは圧倒的に男性が女性に対して行うジェンダー的な問題であると述べています。オーストラリア統計局(ABS)の2016年のデータによると、オーストラリアの女性は、親密なパートナーからの暴力を経験する可能性が男性の約3倍であることがわかりました。
オーストラリアの女性は、親密なパートナーからの暴力を経験する確率が、男性の約3倍です。
「これは家庭、路上、職場、学校、オンラインなどで起こり、その多くは顔見知りの男性の手によって行われています」

「あらゆる形態の暴力を防ぐためには、この問題に対する『幅広い理解』が必要です」

「女性に対するあらゆる形態の暴力の防止にジェンダーに基づくアプローチを適用し、女性の生活に影響を与える多くの構造的不平等に対処することが、暴力を防ぐための鍵となります」

家庭内・家族内暴力とは?

ドメスティック・バイオレンス(家庭内暴力)やファミリー・バイオレンス(家族内暴力)は、親密なパートナー関係の中で、あるいは以前のパートナーに対して、あるいは家族や介護者の関係の中で起こります。

これには身体的、言語的、精神的、性的虐待をはじめ、社会的孤立、ストーカー行為、金銭的虐待、スピリチュアル・文化的虐待など、さまざまな形態があります。
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Source: Getty Images
オーストラリアの女性の3人に1人が、15歳以降、男性から身体的または性的虐待を受けていることが、2017年のABSデータで明らかになりました。

また、「アウア・ウォッチ」の調査では、オーストラリア人の2人に1人が、身体的ではない虐待を、「虐待」と認識することが難しいと回答しているほか、ABSのデータでは、女性の4人に1人が実際にパートナーから非身体的な虐待を経験していることも明らかになっています。
女性の4人に1人は、パートナーから非身体的な虐待を受けた経験があるといいます。
性的・家庭内・家族内暴力に関する全国ヘルプライン「1800RESPECT」の責任者であるフィオナ・モート氏は、これは最も重要な誤解であると述べています。

「以前、虐待とは身体的・肉体的なものであると理解されることが多くありました。しかし、実際には相手を支配しようとするあらゆる行動が含まれます」

「身体的・性的暴力の行為や脅迫を含むこともありますが、女性がやりたいことを阻止することも含まれます」

強制コントロールとは?

モート氏によると、強制コントロールには、女性が家族や友人と連絡を取ることを止めたり、宗教的・文化的な活動に参加することを止めたり、女性の居場所を追跡したり、仕事を続けることを困難にしたりすることも含まれます。

「どのような行動であっても、それは他人の人生を支配する心理的な影響があるのです」
これは通常、行動や虐待パターンとして発生し、非常に微妙で、長期間にわたって起こる可能性があることから、「被害者はそれに気づかないかもしれない」とワット氏は言います。

「これこそが、今私たちがオーストラリア全国に伝えないといけないメッセージです。人々が自分の置かれているリスクや危険な状況を認識し、その兆候や危険信号に対して、サービスが対応できるようにすることが求められます」。

危険信号とは?

家庭内・家族内暴力の経験はさまざまですが、虐待関係や強制コントロールに直面している人には、それを示すいくつかの兆候があります。その中には、目に見えないものもあり、特定するのは必ずしも容易ではありません。

キナーズリー氏は、身体的ではない虐待の兆候として、パートナーのオンラインでの活動を監視している、テキストメッセージをチェックしている、言葉の暴力を振るっている、お金の使い方をコントロールしている、などを挙げています。

「このような行動は、しばしば容認されたり、弁解されたり、軽視されたりしますが、このような行動は、対等で尊重された関係にはふさわしくありません」と述べています。
このような行動は、対等で尊重された関係にはふさわしくありません。
ワット氏は、虐待を受けている女性は、自分が自立した行動をとったときに何が起こるかを疑問視することで、虐待を認識できるかもしれないと言います。

「例えばあなたが『これから友達に会いに行く』と言ったらどうなるでしょう? 彼はあなたを友人や家族から孤立させていませんか? 彼はあなたの行動をすべてコントロールしようとしていませんか? 自分がキレたときに、あなたに責任を取らせようとしていませんか?」

モート氏も、「何かをするたびに、相手の反応を気にしているのであれば、自分の人生がコントロールされていることを意味するかもしれない」と同意しています。

家庭内・家族内暴力には「広い範囲」が含まれていることを心に留めておくことが重要だと彼女は強調します。

「あなたの経験が、一般的に認識されている虐待の説明やネーミングに当てはまらないからといって、それがDVではないということにはなりません。手を差し伸べて、相談にのることが、役立たないということにはならないのです」

またモート氏は、家族や友人、同僚の変化に気づけることも大切だとしています。

「もし社交的であった女性が、ある日そうではなくなったら、何か異変があることを示しているかもしれません」

助けを得るには?

もし身の危険を感じたら、000番で警察に通報するか、州やテリトリーの危機管理サービスに連絡してください。

どうしていいかわからない場合は、1800RESPECT(1800 737 732)に電話すると、必要なサポートを受けるための地域サービスに繋げてくれる、とモート氏は言います。

「これは、被害者の女性本人だけでなく、家族や友人、職場の同僚にも当てはまり、連絡することで、何をできるかを相談することができます」

「自分の直感を信じましょう。私たちが提案したいのは、たとえ自信がなくても、1800RESPECTのようなサービスに連絡して会話をすることが大きな一歩となることです」
また、1800RESPECT のウェブサイトや、その他の地方自治体のウェブサイトにもいくつかのサービスを確認することができます。

男性の行動や人間関係の悩みについて助けが必要な場合は、Men's Referral Line(1300 766 491)に電話することをワット氏は勧めています。ノー・トゥ・バイオレンス社のこのサービスは、女性に暴力をふるう男性を支援するための援助、情報、カウンセリングも提供しています。

「私たちは、すべての会話が行動を変えるための潜在的な機会であると考えているので、より多くの男性に頻繁に電話を取ってもらいたいのです」

プロテクション・オーダーとは?

家庭内暴力や家族内暴力を受けている人が、さらなる虐待から身を守るために利用できる手段に、プロテクション・オーダー(保護命令)が挙げられます。

プロテクション・オーダーは、各テリトリーで異なる名称で呼ばれており、その手続きも、拠点とする地域によって異なります。

オーストラリア法律評議会のジャコバ・ブラッシュ会長によると、手続きを開始するには、主に2つの方法があると述べています。

「一般的な方法は、警察が呼ばれるか、またはあなたが警察に通報するかのどちらかで、警察は状況を判断し、彼らは、あなたに代わって保護命令であるAVO(Apprehended Violence Order)またはDVO(Domestic Violence Order)を出すことができます」

「あるいは、自分で裁判所に行き、用紙に記入して(多くはオンラインでできます)、個人的に申請することもできます」
この分野に携わる人たちは、個人的な申請をする前に、最も安全な行動であることを確認するために、サポートサービスにアドバイスを求めることを勧めています。

リーガルエイド・ニューサウスウェールズのトライアル・アドボケートであるトーマス・スフォー氏は、すべての介入命令には、被告がどのように行動すべきかという条件が含まれていると述べています。

彼は、2017年の変更により、ほとんどのドメスティック・バイオレンス保護命令は、すべての州とテリトリーで認められ、執行可能で、加害者が命令の条件に違反していることが証明された場合、罰金や禁固刑が科せられます。

文化的・言語的多様なバックグラウンドを持つ場合は?

アボリジニやトレス海峡諸島の女性、難民、移民、留学生など、文化的・言語的に多様なバックグラウンドを持つ女性は、さらなる被害や差別、さらには助けや支援を得ることを困難にするような障壁に直面することがあります。

モート氏は、英語を母国語としているかどうか、滞在年数、利用可能なサービスにどれだけ精通しているかなどが問題になることもあると言います。

「来豪間もない人のなかには、母国で特定のタイプの暴力を経験していることがあります。そのため、彼らが経験していることがドメスティック・バイオレンスであると理解することは、彼らにとって時間を要するものであり、私たちが取り組むべきことでもあります」。

「彼らはどこに助けを求めたらいいのかわからないかもしれませんし、母国とは違う政府のサービスを恐れているかもしれません。私たちは、コミュニティのリーダーを通じて彼らとつながり、私たちのサービスを知ってもらうと同時に、ドメスティック・バイオレンスは許されないというメッセージを広める必要があります」。

モート氏によると、ほとんどのドメスティック・バイオレンス、ファミリー・バイオレンスのサービスは、翻訳サポートサービスにアクセスできるそうです。

またキナーズリー氏は、以下のような専門的なサービスが全国で利用できると付け加えました。 

  • InTouch, Multicultural Centre Against Family Violence - ビクトリア州の移民・難民の女性を対象としたサービス (03 9413 6500)
  • Immigrant Women's Speakout - ニューサウスウェールズ州の移民・難民の女性を対象に、ドメスティック・バイオレンスのサポート、アドボカシー、情報提供、紹介、調査を行う地域密着型の団体 (02 9635 8022 or women@speakout.org.au)
  • Dijarra - すべてのアボリジニー女性、特に現在家族からの暴力を受けている、あるいは過去に受けたことがあるアボリジニーの人々が、文化を共有し、称賛し、実践的なサポートを受けられる場所 (1800 105 303 or infor@djirra.org.au)
  • Wirringa Baiya Aboriginal Women’s Legal Centre - ニューサウスウェールズ州のアボリジニの女性、子供、若者のためのリーガルセンター
詳しいサービスについては、Department of Social Servicesの「Family Safety Pack for Men and Women coming to Australia」をご覧ください。

「See What You Made Me Do」は、5月5日(水)午後8時30分にSBSとSBSオンデマンドで初放送されます。詳細はsbs.com.au/seeをご覧ください。

この記事やドキュメンタリーが問題となる場合は、1800RESPECT(1800 737 732)までご連絡いただくか、1800RESPECT.org.auをご覧ください。

 

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