オーストラリアの農産物、水でさっと洗うだけでは足りない?

市販の野菜や果物にはに農薬などの化学物質が散布されていることは知られていますが、収穫後にも塩素で除菌されていることはご存知ですか?

Fresh fruit and vegetables in a supermarket

Fruits and vegetables are sanitised in processing plants after harvest before being taken to shops for sale. Source: AAP / Diego Fedele

キーポイント
  • 多くの野菜や果物は収穫後、加工工場で塩素を使った除菌が行われている
  • 塩素が製品に含まれるすべての農薬を除去できるわけではなく、残留する場合もある
  • 汚染のリスクは低いものの、ご家庭で野菜や果物をしっかり洗うことは重要
多くのオーストラリア人は、購入した野菜や果物は「きれいですぐに食べられる」と信じていますが、細菌を取り除くために塩素で洗われ、また農薬が残留している可能性があることに気づいていません。

市販の野菜は、オーガニック認証を受けていない限り、農薬が散布され、それが残留している可能性があります。またこれら農薬の影響をより受けやすい野菜や果物もあります。

収穫後、野菜や果物は加工工場に送られ、残留する細菌や微生物を除去するために、塩素系漂白剤で消毒されます。

では、農薬や除菌剤は本当に有害なのでしょうか。また、私たちが買い物かごに入れた野菜にはどれくらい農薬が残っているのでしょうか。

農薬の影響を最も受けやすい野菜や果物

殺虫剤、除草剤、殺菌剤などの農薬は、害虫、雑草、カビなどの脅威から作物を保護し、作物の収穫量を増やすために一般的に使用されています。

オーストラリアでは、農薬の影響を最も受けやすい果物や野菜に関する情報は限られており、専門家は、アメリカのEnvironmental Working Groupが毎年発表している「Dirty Dozen」リストと、最もクリーンな「Clean Fifteen」リストから、影響を受ける可能性が高い農産物を選択しています。

2022年の「Dirty Dozen」では、農薬を含む可能性の高い果物や野菜として、イチゴ、ほうれん草、ケール/マスタード/コラードグリーン、ネクタリン、リンゴ、ブドウ、トウガラシ/チリペッパー、チェリー、桃、洋ナシ、セロリ、トマトが挙げられました。
Some tomatoes, one cut in half
Tomatoes are among the fruit and vegetables considered to contain some of the highest levels of pesticides. Source: AAP / AP
一方、「Clean Fifteen」リストには、アボカドやスイートコーン、パイナップル、玉ねぎ、パパイヤ、スイートピー(冷凍)、アスパラガス、ハニーデューメロン、キウイ、キャベツ、マッシュルーム、カンタロープメロン(ロックメロン)、マンゴー、スイカ、さつまいもが含まれています。

オーストラリアでは、Food Standards Australia and New ZealandとAustralian Pesticides and Veterinary Medicines Authorityが、果物や野菜の農薬濃度について最大残留基準値(MRL)を設定しており、残留量がMRL以下になるように国や州のレベルで定期的に検査を行っています。

クイーンズランド大学の農業・食品科学部副部長で食品微生物学教授のマーク・ターナー氏は、SBSニュースに対し、農家は収穫間際に農薬や除草剤を散布することはないと説明します。

「農家は収穫までの一定期間、農薬を散布しない期間を設けることで、それらの残留をできるだけ回避しています」

収穫後の農産物は、本当に漂白剤で洗浄されているのか?

加工工場では、野菜や果物は、微生物や細菌、土やその他の粒子を除去または殺すために、何段階かの洗浄を受けます。その後、回転させることで液体のほとんどが取り除かれます。レタスなどパッケージングされたものは、保存期間を延ばすために袋に炭酸ガスが加えられます。

NSW 大学・化学工学部の食品科学技術グループのジアン・ザオ准教授は、加工工場では通常、農産物の洗浄に塩素や漂白剤が用いられると説明します。

「業界では、野菜を洗浄し、細菌やカビを殺し、安全を保つために、塩素、または次亜塩素酸ナトリウム(漂白剤)を主に使用しています 」

「しかし、塩素の有効期間は比較的短いので、もし残留したとしても、ごくわずかです」

「家庭の人々は、消毒剤について心配する必要はありません」。
またターナー教授によると、一部の加工工場ではすでに塩素の使用をやめ、「過酢酸」を使用しているとのことです。過酢酸は「水と酢に分解される有機酸混合物」と教授は説明します。

また、過酢酸のように果物や野菜を洗浄するための新しい化学物質が登場しているものの、微生物や細菌を除去するためには「塩素ほど普及していない」とザオ准教授は言います。

しかし、塩素でさえも、すべての農薬を除去できるわけではありません。

「農薬の中にはすでに皮に浸透しているものもあるため、業界が使用するすべての除菌剤や洗浄剤が、青果物に含まれる潜在的な農薬を効果的に除去できるわけではありません」

ザオ准教授は、残留農薬が実際に健康上の問題にはならないとしながらも、人々が懸念しているということに理解を示しています。

「たとえ一部の化学物質が皮に浸透したとしても、洗浄・除菌後、さらに家庭で洗えば、一般的にはあまり残ることはありません」
Two shoppers browse the salad section of a supermarket
It's still advisable to wash packaged salad leaves labelled "pre-washed" at home, experts say. Source: AAP / Aaron Chown

果物や野菜の残留物を家庭で除去する方法は?

オーガニックを購入すれば、食品に含まれる化学物質の量を最小限に抑えることができますが、誰もがオーガニック農産物を購入する余裕があるわけでも、自宅で栽培できるわけでもありません。

では、農薬や塩素が散布された製品を安全に食べるには、どうすればよいのでしょうか?

ターナー教授によると、ほとんどの場合、水でしっかり洗えば十分だといいます。

「微生物は洗浄することでその数はおそらく90%減ります。しかし、大腸菌やサルモネラ菌のような病原体の除去を保証するものではありません。一度付着した微生物を除去したり殺したりするのは非常に難しいので、私たちは(農薬で)事前に汚染を防ごうとしています」
保健省は、果物や野菜は食べる前に水でしっかり洗うことを推奨しています。

例えば、西オーストラリア州保健省ウェブサイトでは、「Ready-to-eat」とされる果物や野菜は、たとえスーパーで購入したパッケージ済みのものでも、食べる前や調理する前に必ず流水で洗うことを推奨しています。

また栄養士は、果物や野菜の皮を適宜こすったり剥いたりすることを勧めていますが、皮を剥くことで栄養価が低下することもあるので注意が必要です。

また、リンゴ酢や重曹を使って、農薬だけでなくバクテリアも除去することを勧める人もいます。

これは、水1カップに対してリンゴ酢を大さじ1杯、水4カップに対して重曹を小さじ2杯入れ、果物や野菜を数分間浸してからすすぎます。

洗った後は、ペーパータオルで水分を拭き取り、残留物を取り除くことが重要です。

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Source: SBS

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