Key Points
- アボリジナルおよびトレス海峡諸島民の人びとは、何千年にもわたり、気候に適応しながら、文化やコミュニティ、そして物語を表現する衣服やアクセサリーを生み出してきました。
- 現在、ファースト・ネーションズのデザイナーたちは、世界の舞台でも誇りを持って活躍しています。
- ファースト・ネーションズ・ファッションには、先住民アーティストの作品が取り入れられることも多く、アーティストの名前が明記され、正当な報酬が支払われています。
- 伝統的な知識を土台に、サステナビリティの分野でも重要な役割を担っています。
植民地化以前、オーストラリア各地のファースト・ネーションズの人びとは、それぞれの気候や環境、暮らしに適した衣服を生み出してきました。身にまとうものは、その人が誰で、どこから来たのか、そしてどのコミュニティに属しているのかを示す役割も果たしていました。
こうした考え方は、今も多くのファースト・ネーションズのデザイナーに受け継がれており、ファッションは単なる装いではなく、ストーリーや文化、そしてカントリーへの思いを、日常の中に織り込むものだと捉えられています。

ファースト・ネーションズ・ファッションは、いまどこに?
アボリジナルおよびトレス海峡諸島民のファッションは長年、主流メディアで取り上げられることはほとんどありませんでした。ミッションや学校、政府の政策を通して西洋式の衣服が広まりましたが、その一方で、ファースト・ネーションズの人びとはコミュニティや儀式の場で、伝統的な装いを守り続けてきました。
しかし、この10年ほどで状況は変わり始めています。いまでは、ファースト・ネーションズのデザイナーたちが世界の舞台で誇りを持って活躍しています。
先住民のファッションは、オーストラリアン・ファッション・ウィークのような国内の主要イベントや、毎年開催されるファースト・ネーションズのランウェイショー「Country to Couture」で見ることができます。また、『Vogue』など主要ファッション誌の表紙を飾ることもあります。
さらに、「First Nations Fashion + Design」や「National Indigenous Fashion Awards」といった取り組みも、ファースト・ネーションズのクリエイターたちが自立したかたちで発信できる、より可視性の高いプラットフォームづくりを後押ししています。

ダンガッティとアナイワンにルーツを持つクリエイターで、オンラインコミュニティ「Aus Indigenous Fashion」の創設者でもあるヤトゥ・ウィダーズ・ハントさんは、シドニーで育った当時、先住民ファッションの表現や存在感がいかに限られていたかを振り返ります。
自分のルーツや、いまを生きるファースト・ネーションズのアイデンティティとどう向き合えるのかを探していました。そして、ファッションがその大きな手がかりになったんです。Yatu Widders Hunt
ワジュク・ヌーンガーのモデルで、「Mob in Fashion」の創設者でもあるネイサン・マクガイアさんは、モデルとして活動を始めた当初、撮影現場で自分が唯一のアボリジナルであることも少なくなかったと話します。
しかし現在では、業界で活躍するファースト・ネーションズの人材が増えてきたといいます。
「それは、私たちの存在がきちんと認められ、この国で私たちの美しさが評価されているということです。そして、それは本来あるべき姿なんです。」

ファースト・ネーションズ・ファッションの魅力とは
多くのファースト・ネーションズのブランドは、自らを「ストーリーを軸にしたブランド」や「カントリーとつながるブランド」と表現しています。ここでいう「カントリー」とは、土地や水、空、そしてコミュニティや文化を含む、深い意味を持つ言葉です。
デザインは、特定の場所や言語、文化的なテーマと結びついていることが多くあります。
プリントには、ファースト・ネーションズのアーティストによる作品が使われ、制作者の名前が明記され、正当な報酬が支払われています。また、多くのブランドが大量生産ではなく、規模を抑えたコレクションを展開することで、持続可能性や品質を大切にしています。
ヨルングのクリエイティブディレクターで、リゾートウェアブランド「Liandra」の創設者、リアンドラ・ゲイカマングさんは、自身のブランドについて、「文化を開かれた、親しみやすい形で伝えるために立ち上げた」と話します。
私たちはこれまでも、色彩や文化、そして喜びを大切にしてきました。ファッションを通して、コミュニティの外にいる人たちにも開かれた形で参加してもらい、ブランドを通じてオーストラリアの多様なアイデンティティや文化の豊かさをともに祝福できるようにしたいと考えています。Liandra Gaykamangu
彼女のコレクションは、立ち上げ当初から一つひとつに物語が込められてきました。
ドレスやシャツに施された模様は、単なるデザインではありません。文化や歴史、コミュニティについて語り合うきっかけにもなるのです。
ファースト・ネーションズ・ファッションは、持続可能?
多くのファースト・ネーションズのデザイナーは、自らの仕事を、「はるか昔から続く、土地や資源との関係の延長線上にあるもの」と捉えています。
伝統的な衣服づくりは、必要な分だけを使い、動植物に敬意を払い、季節の移ろいを理解することを基盤としていました。現代のブランドも、そうした考え方を今日のファッション業界に応用しようとしています。
ヤトゥさんは、気候変動や環境破壊に向き合おうとする業界にとって、ファースト・ネーションズの知識は欠かせないものだと話します。
「ファースト・ネーションズのデザイナーたちは、カントリーに配慮しながら、利益を生み出すビジネスを築く方法を示しています。」
消費者にとってそれは、文化を支えると同時に、より丁寧で長期的な視点に立ったものづくりを選ぶことを意味します。

ファースト・ネーションズのクリエイターに道を開く
アボリジナルおよびトレス海峡諸島民が手がけるブランドやスタジオは年々増えており、ファッション業界全体で有償の仕事につながる機会が広がっています。
リアンドラさんは、自身のブランドを通じて、遠隔地や地方のコミュニティと業界レベルのチャンスを結びつけています。プロジェクトやパートナーシップを通して、新進のクリエイターが経験を積み、それぞれのキャリアへと進む後押しをしてきました。
「私たちのモデルの中には、オーストラリアの大手エージェンシーと契約し、海外のランウェイを歩き、国内外の素晴らしいキャンペーンに起用された人もいます。そして、自ら経済的に自立する道を切り開いています。」
一方、ヤトゥさんは、ファースト・ネーションズのビジネスはすでに国内経済の重要な一角を担っており、さらに支援されるべきだと指摘します。
「ファースト・ネーションズのビジネス分野は、いま大きく成長し、活気にあふれています。デザイナーやアーティストは遠隔地を含む全国各地で活動しています。つまり、ファースト・ネーションズのファッションを購入することは、ファースト・ネーションズのビジネスを支えることにもつながるのです。」
アボリジナルのブランドを身につける前に
ファーストネーションズのファッションに、どのように敬意をもって関わればよいのか、迷う人もいるかもしれません。いくつかのシンプルなポイントを紹介します。
多くのファーストネーションズのブランドでは、デザインが「ally friendly」、つまり誰でも着用できるものであることを明記しています。
一方で、主に儀式用や特別な文化的役割に関連するアイテムの中には、アボリジナルおよびトレス海峡諸島民のみが着用するものもあります。こうした商品は、オンラインの説明やタグなどにその旨が明確に記されています。
また、多くのブランドが、デザインを手がけたアーティストや所属コミュニティ、作品に込められたストーリーについて、ウェブサイトやタグで紹介しています。
「多くのファーストネーションズのデザイナーは、先住民だけでなく、誰もが身につけられる作品を制作しています。ファーストネーションズのストーリーテリングは、オーストラリアのアイデンティティの中心にあるものですし、私たちの文化はとても寛容で温かいものです。多くの人に誇りを持って身につけてほしいと思っています。」(ヤトゥさん)

ネイサンさんは、ファッションは新しくオーストラリアに来た人たちが、ファーストネーションズの人々とつながるきっかけになると話します。
ファーストネーションズのブランドの商品を購入したり、ランウェイショーに足を運んだり、デザイナーをソーシャルメディアでフォローしたりすることも、その第一歩になり得るといいます。
「オーストラリア文化の一部として、私たちのコミュニティとつながる、とても良いきっかけになると思います。」
ファーストネーションズのファッションは、私たちが日々身につける服という身近なものを通して、敬意とつながりを築くきっかけを与えてくれます。





