オーストラリアを象徴するビーチですが、誰もが心行くまで楽しめるとは限りません。 車椅子など、移動のための補助が必要な人々にとっては、ビーチで泳いだり遊んだりということができないことも多いのです。 しかし夏の到来を前に、ビーチをいわゆる「バリアフリー」にしようという動きが今、オーストラリア各地で起こっています。
シェーン・ハイホレックさんは2007年の事故で首を怪我するまでは、しょっちゅうビーチに通っていたものでした。
ハイホレックさんは現在車椅子を使っており、以前のように砂や水と接するというのは難しい状況です。
しかしだからといって諦めるシェーンさんではありませんでした。彼はAccessible Beaches という団体を設立した上に、障がい者用の器具を提供する Pushu Mobility という会社を作り、移動補助器具を使っている人たちが砂浜を楽しむ手助けをしているのです。
「事故に遭ってからは、自分ができないことじゃなく、できることについて考えるようになりました。そのひとつがビーチに行くことです。障がいをもった人たちがビーチに行くのが可能だと分かった時、オーストラリア中で誰もが一緒にビーチにアクセスできるよう広めていこうともっといろいろ調べ始めたんです」
ビーチへのアクセスを向上するのは、地元の自治体に責任があります。
車椅子を使っている人がビーチを利用しやすくする方法はいくつかありますが、そのための高い費用を当事者に追わせるべきではないと、障がい者支援団体は訴えています。
ハイホレックさんは、ビーチの改良を行った自治体はその利益を歓迎しているものの、まだまだもっと多くの自治体が出遅れていると話します。
「ビーチを誰もが楽しめるように改良することは、大変なことではないんです。自治体が使いやすくしてくれたという満足感と、ビーチを利用できるようになった障がい者の喜びを考えれば、やりがいのあることです。アクセスができたとたん、コミュニティーがとても誇りに思えるようになるんですから」
オーストラリアでもっとも有名で人気のあるビーチのひとつ、ボンダイビーチも、アクセスの向上を検討しています。
1月1日の元旦だけでも4万人の人で賑わうシドニーのボンダイビーチ。この内、体に障害を持つ人の数はおよそ20パーセントに上ると見られ、つまり8000人の訪問客が、お正月のビーチを健常者と同じように楽しむことができていないということになります。
ボンダイ・ライフセーバーのフェリシティー・マッカーサーさんは、2019年のニューイヤーズデーまでには、この数がもっと少なくなってほしいと話します。
「ビーチに下りるためのマットを敷くというのもひとつの計画です。ビーチへの傾斜がとてもきついので、町と話し合って改良させることも検討しています」
シドニー中心部はオーストラリア最大の人口を抱え、観光客の比率ももっとも多い場所であるにもかかわらず、人気の高いビーチは決してアクセスがいいとはいえません。
マッカーサーさんによると、2016年度、町が10メートルのビーチマットや砂浜用の椅子を購入したということです。しかし、こうした設備へのコミュニティーの認知度は低く、マットが敷かれるのは週にほんの2、3度しかないと、マッカーサーさんは話しています。
「長期的な目標としては、ビーチにマットを常設させることができるようになればと思います。オーストラリア中の他の地域で、たくさんのビーチがアクセスしやすくなっているのに、今のところシドニーでは本当の意味で利用しやすいビーチがないんです」
メルボルンのアルトナとウィリアムズタウンは、オーストラリアで2つしかない、常設のビーチ用マットが敷かれているビーチです。しかし、シェーン・ハイホレックさんは、ビーチへのバリアフリー化に求められるのは、マットだけにとどまらないと言います。
障がいを持つ人にとっても使いやすいトイレや駐車場、水や砂の上でも簡単に動かせる特別性の車椅子、傾斜の緩やかなタラップな度に加え、これらのサービスの間に通りやすい通路があることで、ビーチがほぼ完璧にアクセス可能になると、シェーンさんは話しています。
障がい者支援団体 Policy and Advocacy at People With Disabilities Australia のディレクター、ロモラ・ハリウッドさんは、各自治体やライフセービングクラブに対し、もっと定期的に障がい者のコミュニティーと関わってほしいと訴えます。
「障害を持つ人には、毎日の生活の全ての面で参加する権利がありますし、多くの人々が楽しむビーチは、オーストラリアの暮らしの非常に重要なポイントの一つですから」
オーストラリアでは現在、ますます多くのビーチで、様々なアクセス向上が図られているほか、そうでないビーチでも、ビーチの利用をしやすくする日を設けているところがあります。
問題はまだまだ山積しているものの、この夏は以前にも増して、もっと多くの人がオーストラリアのビーチを利用できるようになると見られています。
状況は少しずつよくなっている、と、シェーン・ハリホレックさんも楽観的です。
「今はまだ、家族とビーチに出かけて楽しむことから疎外されている人がたくさんいます。障がいをもつ人にとって、家族がビーチを楽しんでいる間車の中で座っていたり家に残っていたりしなくてもいい、一緒に楽しめるんだ、っていう一体感、僕もよく分かりますから」
オーストラリア国内のバリアフリーのビーチや、利用できる設備などについては、ウェブサイト、www.accessiblebeaches.com を参照してください。





