日本で大学を卒業後、300年以上の歴史ある一部上場企業に就職し、キャリアウーマンを目指していたという井上美紀子さん。
しかし社内にける男女の格差や古い体制、さらには満員電車に揺られる日々の通勤にストレスを感じるようになったと言います。そんな中、彼女の人生の中に飛び込んできたのが「花」でした。
布を貼り合わせ、コテ(アイロン)を使って造花を創り上げる写真集と出会った井上さんは、あまりの衝撃から、その写真集を出した先生に直接連絡を取り、師範クラスに特別に入れてもらったと話します。
それから花を創り上げることに夢中になり、生花フラワーアレンジメントの免許も取得。3年後に会社を辞めてフローリストとしての人生を歩み始めました。
2014年に来豪した井上さんは、2019年、ブリスベンに『Kent Florist』を立ち上げ、苔玉や生花、テラリューム、ハーバリュームなど、あらゆるアレンジメントを販売するほか、ワークショップも定期的に開催しています。
中でも人気を博しているのが、苔玉のワークショップ。
近年オーストラリアでもよく耳にするようになった苔玉(Moss Ball)の発祥は「盆栽の根上」と言われ、根を地中から出し、特別な配合の土を球状につけ、その周りに苔を巻きつけて鑑賞するものだと、井上さんは説明します。

One of her popular class is the Kokedama Workshop Source: Mikiko Inoue
2014年に来豪したとき、苔玉はまだ知られていませんでしたが、ローカルフローリストに苔玉の作品を見せたことをきっかけに、ワークショップを開催するようになりました。
参加者は徐々に増え、最近では「Kokedama」という言葉が日常的に使われるようになったと話します。
バレンタインデーに向けては、カップルでラブハート形の苔玉を制作するワークショップを開催しており、とても人気だそうです。
フローリストとして活動するほか、日本のアンティークショップも営み、着物や帯、簪、和バッグ、扇子、コケシ、日本人形など、あらゆる日本のアンティークも販売しています。

Heart shaped Kokedama workshop for valentines day Source: Mikiko Inoue
「日本文化が大好き」という井上さんは、生花や琴、空手、古武道など、積極的に様々な活動に参加するほか、「Kimono Culture Club」を知人らと立ち上げ、日本文化に触れ合える場所も提供しています。メンバーは日本人だけでなく、あらゆる人種の集まりで、それぞれがあらゆる日本文化を極めているそうです。
「日本文化を将来につなげるのが私の使命」と話す井上さんは、日本文化を伝える上で大切にしているのは、日本文化をリスペクトしつつ、規則にとらわれず、応用を利かせ楽しんでもらえることだと話します。
着物を前後ろ逆に着てもよし、琴でボブ・マーリーを弾いてもよし。何よりも日本文化を絶やさず、「次のジェネレーションに繋げたい」と話します。

Kimono Culture Club、Brisbane Source: Mikiko Inoue
井上さんの音声インタビューは下記からどうぞ
READ MORE

日本の文化を子供たちに伝えたい 志賀愛子さん
火木土の夜10時はおやすみ前にSBSの日本語ラジオ!