「ここでBFR ビッグ・ファルコン・ロケットの最初のお客さんをご紹介します。前澤友作さん、前へどうぞ」
ロサンゼルスでの記者会見の席で大勢の聴衆を前に、月周回旅行の最初の民間人乗客として、前澤友作氏を紹介しました。
およそ38万2000キロの月への旅はまさに約半世紀ぶりで、前澤氏はその最初の人物となります。
前澤氏は今年42歳、日本国内最大のファッション通販サイト「Zozotown」を運営するスタートトゥデイ社の社長として、億万長者になったことで知られています。今回前澤氏はこの富によって、これまでお金では買えなかった経験を手にすることになりました。
4日から5日の行程になると見られるこの宇宙旅行は、2023年の実施を予定しており、この旅を可能にするロケットの開発までスペースX に5年の期限が与えられることになります。
記者会見の席で 前澤氏は、月へ行く喜びを英語で語りました。
「やっとお話できます。ここにいることが非常にうれしく、わくわくしていますし、光栄なことだと思います。この発表を皆さんと共有できることに感謝します」
今回の発表はスペースX の創設者イーロン・マスク氏にとって、またとない広報拡大のチャンスとなりました。昨今取りざたされているスキャンダルのため、世界有数のテクノロジー起業家としての評判に陰りが出ているからです。
マスク氏は先ごろ、ポッドキャストのインタビューの席でマリファナを吸ったことで批判を呼び起こしました。
またマスク氏は先月、電気自動車企業テスラの株式を非公開化する計画がある、と突然ツイッター上で発表しました。その後彼はこの計画を撤回しましたが、この件に関してアメリカの証券取引委員会は、証券取引法違反の疑いで捜査を始めました。
そして更なる打撃は、イギリスのダイバー、ヴァーン・アンズワース氏による訴訟でした。
アンズワース氏は、タイの洞窟で11人の少年とコーチが10日間にわたり立ち往生していた際に、救出作戦に参加した人物です。
マスク氏は、自社の小型潜水艦が少年たちの救出に使えると考え、救出チームの関心を引こうとしていましたが、アンズワース氏はそれを売名行為だと退けました。その返答として、マスク氏は一連のツイートで反撃し、何の証拠もないにもかかわらず、アンズワース氏を小児性愛者だと決め付けました。
アンズワース氏はこの言いがかりは事実無根だとして、名誉毀損で訴えると警告し、現在裁判が進行中です。
今回の宇宙旅行計画の発表が、マスク氏と彼のビジネスの混迷を救うことになるのか、今後の動向が注目されています。
