アストラゼネカ社製ワクチンの接種を50歳未満には行わず、ファイザー社を使うことを推奨する。専門家より出た見解で、オーストラリアのワクチン接種計画は宙に浮いた状態になりました。ほとんどのオーストラリア国民はアストラゼネカ社のワクチンを打つ予定だったためです。
この見解はどのように出されたのでしょうか。
オーストラリア政府は ヨーロピアン・メディシン・エージェンシーの86件の血栓が出たケースを調査しました。
アストラゼネカ社のワクチンを接種した2500万人のうち、18人が死亡しています。
ほとんどの症例は60歳未満の女性でした。
オーストラリア国民は、アストラゼネカ社のワクチン接種を予定していました。
アストラゼネカ社製のワクチンについての見解、そしてオーストラリアのワクチン接種計画について疑問に答えます。
疑問1:なぜ50歳未満の成人は50歳以上の人と異なるワクチンを打たなければいけないのでしょうか
オーストラリア免疫アドバイザリーグループ(ATAGI)は先週、「まれではあるが深刻な」アストラゼネカ社製ワクチンの副作用(血小板減少症候群(TTS)を伴う血栓症としても知られる)について発表しました。
年齢が上がるほどCOVID-19の症状は深刻になるため、高年齢層ではワクチンの効果は期待されます。一方、若い世代ではTTSのリスクが高まります。
ただしこの見解は、ワクチンを禁止ということではなく、推奨であるということを知っておいてください。
ワクチンを受けることによる利益は、基礎疾患を持つ若い人たちのCOVID-19のリスクを軽減するでしょう。
先週モリソン首相は、オーストラリア国民はそれぞれの医師のアドバイスに従うべきだと、話しました。
保険相はアストラゼネカ社のワクチンは効果的であり、血栓症が発生するのは非常にまれだと強調しています。
疑問2:四十歳以下の健康な人たちがワクチン接種できるのはいつになるのでしょうか
オーストラリア政府がワクチン接種計画を白紙に戻したので、現在はっきりしたことは言えません。
最初の計画では全ての成人が今年10月までに一回目のワクチンを接種することになっていました。 ですが、今年末までにすべてのオーストラリア国民がワクチン接種を終了できないことを首相は認めています。
疑問3:ということは、今年中の国境閉鎖の解除はないということでしょうか
いつ国境閉鎖が解除されるか、まだはっきりはしていません 。
しかし金曜日の首相の発言によると、政府は国境閉鎖及びホテル隔離についてのルールを緩和するための必要な水準を専門家に求めています。
首相は可能性として、ワクチン接種を行ったオーストラリア国民はホテル隔離なしに、(または自宅隔離のみで)海外渡航ができるようになるかもしれないと話しています。Travellers adhere to social distancing rules as they check in for their flights at Sydney International Airport in March 2020. Source: AAP
また、オーストラリアと同様のワクチン接種を実施している国とのトラベルバブルを結べば、帰国困難になって海外に滞在しているオーストラリア国民が、同様にホテル隔離なしに帰ってくることができるかもしれないと話しています。 首相はすぐに実現できるとは断言できないが、専門家の意見を聞きながら 計画を立てていくと話しています。
一方、経済学者のクリス・リチャードソン氏は何らかの海外渡航規制は2024年まで続くだろうと話しています。
疑問4:経口避妊薬は アストラゼネカ社ワクチンと同様の血栓症のリスクがあるのでしょうか
セクシャルヘルス医師で、ニューサウスウェールズ大学の共同講師の テリー・フォラン医師は、経口避妊薬はワクチンよりもリスクがあるが それでも症例はとても少ないと話します。
フォラン医師は、経口避妊薬を使用している女性で、血栓症が見られるのは 1万人のうち5人から12人だと話します。経口避妊薬を使用していない女性で血栓症を患うのは 1万人のうち3人から5人です。 ヨーロッパの症例では、アストラゼネカ社のワクチン接種者のうち、25万人に対し1人に血栓症が見られました。
「経口避妊薬は、血栓症を発症したとしても死亡するのはそのうちの3%です。もちろんもし起こればそれは悲劇ですが、そのリスクはとても小さいのです」 フォラン医師は、SBS ニュースにこう話しました。
アストラゼネカ社製ワクチンに起因する血栓症は、まれに発生する場合に最大25パーセントの死亡率を引き起こす可能性があると、チーフメディカルオフィサーのポール・ケリー氏は話しました。
ですが、フォラン医師は経口避妊薬とアストラゼネカ社のワクチンが引き起こす 血栓症のリスクについて比較することについて警告します。経口避妊薬を飲んでいる時よりも妊娠した時の方が、ずっと血栓症のリスクは高いのです。
COVID-19の症状自体でも血栓症リスクが確認されています。
疑問5:基礎疾患がフェーズ1Bのリストに網羅されていますか
保険相のスポークスパーソンは、政府の発行する病状のリストがフェーズ1Bに該当するかどうか示すと話しましたが、これは基礎疾患を網羅していません。この1Bのカテゴリに入るかどうかは、医師に相談してください。 疑問6:ファイザー社のワクチンの供給が十分であることが分かった時には五十歳以上でも 受けることができますか
保健相のスポークスパーソンによると、「適切なワクチンの入手可能性と臨床ガイダンスに基づいて」投与されます。
疑問7:他の国ではすでに何千人もの人がワクチン接種を受けています。なぜオーストラリアは こんなに遅いんでしょうか
オーストラリアのワクチン接種はすでに百万人に行われています。
またスコットモリソン首相は、人口当たりの接種数にすれば他の国と同等だと話しています。
しかし、早く始まっている国もあります。あまりにも大きい感染拡大と格闘する必要があり、緊急にCOVID-19ワクチンを承認したためです。 しかし、オーストラリアでは政府が承認プロセスを省略しないという判断をしたため、通常の時間がかかりました。
欧州連合(EU)が、生産者は先に約束した地域への出荷を果たすべきだとして、オーストラリアへのアストラゼネカ社製ワクチン出荷を阻止した時に、オーストラリアは問題にぶつかりました。
首相は今月初めに、310万本のワクチンが海外から供給されるはずだったと話しました。しかし、供給が遅れたため、ワクチン接種プログラムが予想していたよりも遅く始まっりました。また、アストラゼネカ社のワクチンが、3月末から国内で生産され始めるのでこの計画は加速するはずだと思われていました
ほとんどのオーストラリア国民はアストラゼネカ社のワクチンを接種すると期待されていたため、年齢によるワクチンの推奨に関するこの変更は、ワクチン接種計画に対し大きな衝撃となりました。
With reporting by AFP and AAP.
オーストラリアでは、他人から1.5メートル以上離れていなければなりません。お住まいの州における集まりの人数制限をご確認ください。風邪やインフルエンザの症状が出ている場合は、家に留まり、医師に電話して検査を手配するか、1800 020 080のコロナウイルス健康情報ホットラインに連絡しましょう。ニュースや情報は、sbs.com.au/coronavirusで63カ国語で提供されています。