写真撮影が趣味の人から、SNSコンテンツクリエイター、プロの写真家まで、写真を撮る際には「どこで撮影できるのか」「どこでは撮影できないのか」を知っておくことが大切です。オーストラリアで写真を撮る前に知っておきたい、法律上のルールや注意点を紹介します。
Key Points
- 公共の場所で人を撮影すること自体は認められていますが、その写真を商業目的で使用する場合は、本人の同意が必要です。
- 農地を含む私有地で撮影する際は、所有者の許可を得なければなりません。
- 軍事施設の撮影は禁止されています。
- アボリジナルの聖地や文化的に重要な場所、公的な慰霊碑などでは、撮影に関する案内表示や現地の指示に従うようにしましょう。
公共の場所で人を撮影してもいい?
街中や公園、ビーチなどで写真を撮るとき、「人が写っても大丈夫?」と疑問に思ったことはありませんか。
オーストラリア写真協会(Australian Photographic Society)の会長、ピア・イェッセン氏は、公共の場所での撮影ルールを正しく理解しておくことが大切だと話します。
「一般的に、オーストラリアでは公共の場所であれば、本人の許可がなくても写真や動画を撮影できます。つまり、公共の場所では『撮影されない権利』は基本的に認められていません。」
オーストラリアでは、公共の場所で人を撮影することは原則として認められています。ただし、その写真を商業目的で使用する場合は、本人の同意が必要となるのが一般的です。
一方で、プライベートな空間にいる人を撮影したり、相手に嫌がらせとなるような形で撮影した場合は、違法となる可能性があります。

また、商業・クリエイティブ分野を専門とする弁護士のシャロン・ギヴォーニ氏は、ほかにも注意すべき点があると話します。
「人を中傷したり傷つけたりするような形で写真を撮った場合、相手から法的措置を取られる可能性があります。」
また、撮影場所ごとに独自のルールがあることも忘れてはいけません。
「一歩家の外へ出れば、それぞれの場所にルールがあります。例えば、ジムや地域のプールには、それぞれ撮影に関する決まりがあるかもしれません。ですから、まずはルールを確認することが大切です。」
農地に入って写真を撮ってもいい?
菜の花やさまざまな作物が一面に広がる農地の風景は、SNSでも人気の撮影スポットとなっています。
SNSでは、色鮮やかな景色や、一面に広がる黄金色の畑が映える写真として見えてしまいます。そうした風景を見て『写真を撮って投稿しよう』と思うかもしれません。でも、その場所は誰かの仕事場であり、農家にとっては1年の収入を支える大切な畑かもしれないのです。」Sharon Givoni
SNSでは完璧な一枚だけが目に入りますが、その写真を撮るまでの経緯や、その後の影響までは見えてきません。許可なく私有地に立ち入れば不法侵入にあたる可能性があり、農作物を傷つけてしまえば、土地の所有者に経済的な損害を与えることにもつながります。

ビクトリア州バララット近郊で農業を営むジャスティン・ホブソンさんの農場は、美しい景観で知られています。
「このあたりは景色がいいので、菜の花が咲く季節になると、畑に入って写真を撮ろうとする人がたくさんいます。でも、それはバイオセキュリティ上のリスクになるんです。」
ここでいうバイオセキュリティ上のリスクとは、靴などに付着した土や種子が農地に持ち込まれることで、病害や雑草が広がる可能性があることを指します。
「もし誰かが写真を撮るために農場へ入り、けがをしたら、誰が責任を負うのでしょうか。それに、ごみを置いて帰ったり、牧場のゲートを開けたままにしたりする人もいます。」
結局のところ、私が勝手にあなたの家の庭に入って、家庭菜園をのぞいていたら、『何をしているんですか?』と思いますよね。それとほとんど同じことなんです。規模が大きいだけで、人の農場に無断で立ち入っている、つまり不法侵入なんです。Justin Hobson
そのため、写真を撮る際は農場のフェンスの外から撮影し、畑に入る必要がある場合は事前に許可を得ることが大切です。多くの土地所有者は、マナーを守る訪問者であれば快く受け入れてくれるといいます。
撮影が禁止されている場所はある?
文化的な理由から、撮影が制限または禁止されている場所もあります。例えば、アボリジナルの聖地や保護区域などです。
弁護士のシャロン・ギヴォーニ氏は、次のように説明します。
「こうした場所は、土地の伝統的な所有者が管理しており、誰でも自由に立ち入れる場所ではありません。写真を撮れるかどうかは、その場所ごとに異なります。」
「場所によっては許可証が必要で、立ち入り自体が禁止されているところもあります。こうした場所には文化的・スピリチャル的に重要な意味を持つものがあり、それを保護するための法律もあります。まずは土地の管理者に確認し、許可が必要かどうかを調べましょう。迷ったときは、事前に確認するのが一番です。」
また、宗教施設や慰霊碑などでも、撮影が制限されている場合があります。さらに、民間企業が所有する鉱山施設や政府の防衛施設を撮影する際には、安全保障上の理由から事前の許可が必要です。
防衛施設は、ほかの場所とは扱いが異なります。立ち入りは厳しく制限されており、施設の外から撮影した場合でも、内容によっては国家安全保障上の問題となる可能性があります。Sharon Givoni
また、ショッピングセンターや植物園のように一般に開放されている場所でも、商業目的の撮影を行う場合は、事前の許可が必要です。
ドローンで写真を撮ってもいい?
ドローンは写真撮影の手段としてますます人気が高まっています。
商業目的でドローンを使用する場合は、民間航空安全局(Civil Aviation Safety Authority・CASA)への機体登録と、必要なライセンスの取得が求められます。
一方、趣味で飛ばす場合は資格は必要ありませんが、安全に飛行させるためのルールを守らなければなりません。
オーストラリア写真協会のピア・イェッセン会長は、こう話します。
「何より大切なのは、飛行ルールをよく確認し、十分に理解しておくことです。ドローンを飛ばす際は、人や動物の安全を守ることが何より重要です。」
例えば、ドローンは地上120メートルを超えて飛ばしてはいけないほか、他の人から30メートル以上離して飛行させる必要があります。また、人や建物、航空機に危険を及ぼすような飛ばし方は禁止されています。
さらに、森林火災の発生現場の周辺や、クジラなどの野生動物の近くでは、ドローンの飛行が制限されています。

写真撮影で心がけたいマナーは?
何を撮影する場合でも、まずはその場所のルールを確認することが大切だと、オーストラリア写真協会のピア・イェッセン会長は話します。
「案内表示があれば必ず従ってください。表示がない場合でも、人や自然への敬意を忘れないことが大切です。」
また、自分自身の安全にも気を配り、環境を傷つけないこと、そして他人の土地や所有物を尊重することも重要です。
弁護士のシャロン・ギヴォーニ氏は、見えている場所や簡単に入れそうな場所だからといって、立ち入る許可があるとは限らず、安全とも限らない、と指摘します。
「まず許可を得て、それから写真を撮る。それが一番大切なルールです。」





