ガーマ・フェスティバルは、オーストラリア最大の先住民文化の祭典です。毎年、数千人がノーザンテリトリーのアーネムランド北東部にある遠隔地ヌルンバイを訪れます。ガーマ・フェスティバルではどのような催しが行われるのか、また誰が参加できるのかを紹介します。
Key Points
- ガーマは、オーストラリア最大の先住民文化の祭典。
- フェスティバルは毎年8月に開催され、ヨス・インディ財団が主催しています。
- このフェスティバルは、伝統的な儀式と政治的な活動を結びつける場として、オーストラリアの主要な政治リーダーや企業幹部、活動家、アーティストらを一堂に集めます。
記事に登場する先住民の言葉とその意味:
- ヨルング(Yolŋu):ヨルング語で「人」を意味する言葉。アーネムランド北東部の町や周辺地域に暮らす複数のクランの総称でもあります。
- ヨルング語(Yolŋu Matha):ヨルングの人々が話す言語の総称。
- ガーマ(Garma):ヨルング語で「互いに学び合うこと」を意味します。
- アーネムランド(Arnhem Land):ノーザンテリトリー北部に位置する地域で、ダーウィンの東およそ500キロにあります。
- ヌルンボイ(Nhulunbuy):アーネムランド東部最大の町。ダーウィンの東約1,000キロに位置します。
- グルクラ(Gulkula):伝統的な集会の場。
- ガンブラプラ(Ganbulapula): イダキをヨルングの人々にもたらしたとされる祖先。
- イダキ(Yidaki):ディジュリドゥとしても知られる、アボリジナルの伝統的な管楽器。
- ミニィジ(Miny'tji):神聖な絵画
- マニカイ(Manikay):祖先から受け継がれてきた歌。
- ブングル(Bunggul):伝統的な儀式の踊り。
- ビルマ(Bilma):クラップスティックと呼ばれる木製の打楽器。
注意 以下の記事には、すでに亡くなったアボリジナルおよびトレス海峡諸島民の名前が含まれています。
ガーマ・フェスティバルとは?
ガーマ・フェスティバルは、オーストラリア最大の先住民文化の祭典です。毎年数千人が、ノーザンテリトリーのアーネムランド北東部にある遠隔地ヌルンボイを訪れます。
毎年8月に開催されるこのフェスティバルは、4日間にわたってヨルング(Yolŋu)文化を祝うイベントです。
ヨルングはアーネムランド北東部に暮らすアボリジナルの人々で、ヨルング語(Yolŋu Matha)で「ガーマ」は「互いに学び合うこと」を意味します。
これは、誰もが共有できる知識を持っているという考え方に基づくもので、一方的に教えるのではなく、互いに耳を傾け、質問し、多様な生き方を尊重しながら共に学ぶことを重視しています。
フェスティバルでは、伝統的なミニィジ(miny'tji、芸術)、マニカイ(manikay、歌)、そして有名なブングル(bunggul、踊り)が披露されます。
そして何より、ガーマは先住民コミュニティに関わるさまざまな社会的、政治的、環境的課題について議論するフォーラムとしての役割も担っています。
ガーマ・フェスティバルの始まり
ガーマ・フェスティバルは1999年、故ユヌピング氏と、バンド「ヨス・インディ」のフロントマンだった故M・ユヌピング兄弟によって立ち上げられました。
その目的は、ヨルング文化を守り、受け継ぎ、広く伝えていきたいという思いでした。
当時、地域の長老たちの間では、重要な文化的知識が失われつつあることへの懸念が高まっていました。そこでガーマは、文化の継承と政治的な議論が交わる場として始まったのです。
SBSの先住民問題担当編集者で、NITVの番組『The Point』の共同司会者を務めるジョンポール・ジャンキは、その目的は、文化的な隔たりを埋め、対話とヨルング文化の祝福を通じて先住民コミュニティの力を高めることだったと言います。
ガーマ・フェスティバルはどこで開催される?
ガーマ・フェスティバルは、アーネムランド北東部にあるグルクラ(Gulkula)で開催されます。
グルクラは、グマッチ(Gumatj)族、リラッチング(Rirratjingu)族、ジャプ(Djapu)族、ガルプ(Galpu)族、ワングリ(Wangurri)にとって伝統的な集会の場です。
グマッチ族にとって、グルクラは神聖な儀式の場所でもあります。
ヨルングの文化では、祖先のガンブラプラ(Ganbulapula)が、アボリジナルの管楽器であるイダキ(Yidaki、ディジュリドゥとしても知られる)をヨルングの人々にもたらした場所がグルクラだと伝えられています。
現在もグルクラは、ガーマ・フェスティバルの開催地として毎年多くの人々を迎えています。
ガーマ・フェスティバルはなぜ重要?
SBSで先住民部門ディレクターを務めるターニャ・デニング=オーマンは、ガーマは世界でも類を見ないイベントだと語ります。
「ガーマは、その地理的な環境だけでなく、この場に集う人々という点でも特別な存在です。何百年にもわたり、ここは協力的な対話や政治的な議論を育んできました。」
ガーマ・フェスティバルは、ヨルングの文化的知識を守りながら、先住民の強さやレジリエンスをたたえるために始まりました。
フェスティバルがヨルングのカントリーで開催されることには大きな意味があります。来場者は、何千年にもわたって文化や知識が受け継がれてきた場所で学ぶことができるからです。
また、異なる背景を持つ人々が互いに学び合える、文化的に安全で尊重し合える環境を提供しています。
多くの参加者にとって、ガーマは先住民の伝統的所有者の土地を訪れ、彼らから直接学ぶ初めての機会となっています。
文化プログラムに加え、アボリジナルおよびトレス海峡諸島民に関わる公共政策についての議論も行われます。こうした場では、先住民のリーダーたちが文化的な権威に基づいて議論を主導し、自決権の実現につなげています。
自決権とは、先住民の人々に影響を及ぼす問題について、当事者自身が意思決定に直接関わることを保障する継続的な取り組みを指します。
ガーマ・フェスティバルには誰が参加する?
ガーマ・フェスティバルは招待者だけが参加できるイベントだと思われがちですが、これはよくある誤解です。
ヨス・インディ財団のデニース・ボウデンCEOによると、ガーマは誰でもウェルカムで、ヨス・インディ財団のウェブサイトからチケットを購入すれば参加することができます。
「ヨス・インディ財団はスポンサーシップだけでなく、チケット販売による収益でイベントを運営しています。その収益の多くは地域に還元されており、イベントに携わるアーティストへの報酬などに充てられています。」
ヨス・インディ財団は政党を問わず政治家を招いており、過去にはオーストラリアの首相も参加しています。
また、研究者や教育関係者、活動家、アーティスト、地域団体の関係者らも訪れ、多様な背景を持つ人々がアイデアを共有し、協力関係を築き、政策について議論する場となっています。
ガーマ・フェスティバルの主なプログラム
ガーマは、世界最古の現存する文化の一つへの理解を深める機会を提供しています。
日中にはさまざまな文化ワークショップが開かれ、参加者はヨルングの長老やリーダーたちから、ヨルング語(Yolŋu Matha)やキンシップ(親族関係の仕組み)、芸術、歌などについて学ぶことができます。
日が沈む頃には、イダキ(ディジュリドゥ)やビルマ(クラップスティック)の演奏、そしてヨルングの歌い手たちの歌声に合わせて、伝統舞踊のブングルが披露されます。各クランが順番に、それぞれの物語を表現します。
ただし、ガーマは単なる文化フェスティバルではありません。
ヨルングの人々をはじめ、全国の先住民コミュニティが直面する重要な課題について話し合い、議論する貴重な機会でもあります。
フェスティバル期間中には、次の2つのフォーラムも開催されます。
- キー・フォーラム先住民と非先住民のリーダーが集まり、その年のガーマのテーマに沿った課題について議論する政策フォーラム。
- ユース・フォーラム8歳から18歳までの子どもたちを対象としたプログラム。全国の学校から参加者が集まり、さまざまな活動やワークショップを通じて知識を共有します。
こうした文化プログラムと議論の場が設けられていることから、ガーマは文化、学び、そしてリーダーシップが一体となるユニークな集いとなっています。





