Key Points
- 自宅やその周辺で野生動物に遭遇した場合は、距離をとり、ペットや子どもを近づけないようにしましょう。
- 必要であれば、地元の野生動物保護団体や市役所などの専門機関に連絡して助けを求めましょう。
- 自宅のまわりに野生動物が暮らせる環境をつくることは、動物たちにとって良いだけでなく、人間の健康にもプラスになります。
オーストラリアでは家に野生動物がやって来るのは一般的?
オーストラリアで暮らしていると、自宅で野生動物を見かけるのは珍しいことではありません。トイレにアマガエルがいたり、屋根裏にポッサムが隠れていたり、家の下にウォンバットが巣を掘っていたり――動物たちは水や食べ物、あるいは居心地の良い安全な場所を求めて、人の住まいにやって来ることがあります。
都市生態学者のジャシンタ・ハンフリー博士は、メルボルンに引っ越した際、家の屋根から妙な物音が聞こえてくることに気づきました。
「実はリングテイルポッサムの家族が住んでいたんです。4匹もいました! とても可愛かったんですが、少し臭いもありましたし、家にダメージを与えないか心配だったので、屋根裏に住まわせておくのは避けたいと思いました。」

A young Common Brushtail Possum riding on its mother's back. Source: iStockphoto / ZambeziShark/Getty Images/iStockphoto
自宅に野生動物がやって来たら?
ハンフリー博士は、専門業者に依頼し、ポッサムが出入りしていた穴にに一方通行のドアを設置しました。
「夜に外へ出ることはできても戻れないようにしたんです。そのうえで、庭の木に巣箱を設置して新しい住みかを用意しました。」
まずは、動物に近づかず、距離を取りましょう。抱き上げたり触ったりしないこと、そしてペットや子どもを近づけないようにしてください。次に、電話や実際現場に来て対応してくれる専門業者に連絡しましょう。Dr Jacinta Humphrey
ローカルのワイルドライフレスキューやローカル・カウンシルに問い合わせるのもひとつの選択肢です。

Australian magpie on a railing. Credit: Talha Resitoglu - Pexels
野生動物の種類を見分けるには?
生態学者で『Living with Wildlife: A Guide for Our Homes and Backyards』の著者でもあるタニヤ・ルース氏は、野生動物の種類を見分けたいときは 安全を確認したうえで写真を撮る よう勧めています。
「大切なのは落ち着いて、少し好奇心を持って接することです。距離を取っていれば、危険な遭遇になることはめったにありません。どんな動物なのか、そしてどう対応すべきかを知る時間は十分にあります。」
オーストラリアは毒ヘビを含む危険な野生動物がいる国として知られていますが、たいていの場合、こちらが手を出さなければ、動物の方から離れていくものです。
注意すべき危険な野生動物としては、毒ヘビ、大型のカンガルー、ヒクイドリと呼ばれる大型の鳥、そして一部のクモが挙げられます。基本的に、野生動物をなでたり、触ったり、抱き上げたりするのは避けた方が安全です。ポッサムでさえ、けっこうな引っかきをしてくることがあります。Ecologist Tanya Loos
多くの場合、自宅や庭で見かける野生動物は一時的な訪問者で、ただ通り過ぎていくだけのことがほとんどです。ポッサム、コアラ、ハリモグラ、カンガルー、そしてさまざまな種類の鳥や爬虫類も含まれます。
「十分な距離を保つことを忘れないでください。子どもやペットの犬・猫は、野生動物と離しておくことも大切です。」(ルース氏)
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野生動物との出会いは一瞬で終わることもあります。ですから、その体験を楽しむことを忘れないよう、ハンフリー博士は言います。
「オーストラリアの哺乳類の8割以上は、ここでしか見られません。それに、都市でもこうした動物に出会えるのは、本当に特別なことです。」

Possums on a nesting box. Credit: Nangak Tamboree Wildlife Sanctuary.
自分の地域の野生動物をどう守る?
都市部ではブッシュや森が少ないため、野生動物に適した環境を整えて守ることが大切だと、ハンフリー博士は話します。
「地元に自生する木や低木、草を植えたり、庭に石や丸太、マルチを置いたり、水場としてバードバスを設置したりすることで、都市部の野生動物をサポートできます。また、ポッサムやオウムの巣箱や、在来種のミツバチ用のインセクトホテルを設置することも有効です。さらに、農薬やネズミ駆除剤などの強い薬品を使わず、猫は安全に屋内で飼うようにしましょう。」
庭に果樹がある場合の注意点
果物を守りつつ野生動物への危険を避けるためには、適切な種類のネットを使うことが重要であるとハンフリー博士は話します。
「果樹に間違ったネットをかけると、オウムやコウモリなどさまざまな動物が絡まってしまうことがあります。もし絡まってしまった場合は、すぐに野生動物レスキューに連絡してください。ネットに絡まることは、動物にとって非常にストレスです。代わりに、目の細かいネットを使いましょう。」
また、野生動物に餌を与えないこと、ゴミ箱はの蓋は必ずしっかり閉めることも大切です。
思わず餌を与えたくなってしまうかもしれませんが、野生動物に餌を与えてはいけません。代わりにバードバスを設置しましょう。さまざまな動物が利用でき、特に熱波の時期には欠かせません。Ecologist Tanya Loos
オーストラリアで暮らしていると、庭にいろいろな鳥がやってきます。中には、花の蜜や昆虫を探している鳥が、窓にぶつかってくることもあります。
「もし鳥が窓にぶつかってきて、それがまだ生きていたら、ティータオルでやさしく包んで段ボール箱に入れ、野生動物レスキューや近くの獣医に連絡してください。」

Sulphur-crested Cockatoo gnawing on hand railing Source: iStockphoto / Ken Griffiths/Getty Images/iStockphoto
「多くの人は、庭でさえずるカササギや、色鮮やかで賑やかなオウム、そして可愛いポッサムを楽しんでいます。裏庭でカンガルーに出会ったり、パティオでニシキヘビを見かけたりできるのは、他ではなかなかありません。」(ハンフリー博士)
「これらの動物こそがオーストラリアを特別な国にしています。野生動物に出会ったときは、オーストラリア固有の動物について学ぶチャンスだと考え、野生動物レスキュー団体に相談して、安全に共存する方法を学びましょう。」
自宅やその周りに野生動物がいることは、人間の健康にも大切な効果があります。
「研究によると、身近に自然が多い環境は、人の健康や心の安定、そして社会的つながりにとても良い影響を与えることが分かっています。木や鳥、その他の動物が多い地域に住む人は、より幸せで健康的な傾向があります。」
ですから、自宅やその周りで野生動物に出会ったときにどう対応するかを知っておくことは、動物にとっても、人間にとっても良い結果につながります。
オーストラリアの各州・テリトリーには、野生動物のレスキューやケアを行う団体があります。
- NSW: WIRES 1300 094 737
- VIC: Wildlife Victoria (03) 8400 7300
- QLD: RSPCA QLD 1300 264 625
- NT: Various services
- ACT: ACT Wildlife 0432 300 033
- TAS: Bonorong Sanctuary 0447 264 625
- SA: SA Fauna Rescue (08) 8289 0896
- WA: Wildcare Helpline (08) 9474 9055
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