国際捕鯨委員会(IWC)脱退 日本政府が表明

The Japanese government has announced it will restart commercial whaling next year.

The Japanese government has announced it will restart commercial whaling next year. Source: AAP

日本が国際捕鯨委員会(IWC)から脱退し、商業捕鯨を再開する方針を発表しました。 オーストラリアはその決断を残念なものとし、失望の意を表しました。


菅官房長官は「来年7月から商業捕鯨を再開することとし、国際捕鯨取締条約から脱退することを決定した」と述べ、来年7月からの商業捕鯨の再開に向けてIWCから脱退することを昨日表明しました。また、談話によれは、「日本は持続可能な商業捕鯨の実施を目指して30年以上に渡り収集した科学データを基に誠意をもって対話を進め、解決策を模索してきたものの、十分な資源量が確認されている種類に対しても持続的利用の必要性を認めない国々からの歩み寄りが見られず、商業捕鯨中断の見直しの義務があるにもかかわらず、その見直しがされていない。今年9月のIWC総会でも、捕鯨産業の秩序ある発展という目的が顧みられることはなく、鯨類に対する異なる意見や立場が共存する可能性すらないことが、誠に残念ながら明らかになった。」とし、IWC脱退の決断に至った経緯を述べました。

この発表は、海外メディアの高い関心を呼び、速報で伝えられた国々も多かった様です。
オーストラリアは反捕鯨国の中でも特に強い姿勢を示し続けており、国際的な非難に加わりました。

日本がIWCから脱退することに対し、環境保護団体のヒューマン・ソサイエティー・インターナショナルのニコラ・ベイノン氏は次の様に語ります。「IWCは鯨の保護と管理を行う団体として国際法で認められた団体で、日本が多国間との関係や法の秩序を守るということを放棄することを懸念しています。そして、日本の態度が他の国々の追従を奨励してしまわないか懸念しています。」

 メリッサ・プライス環境相は、オーストラリア政府は日本がIWCにとどまってくれることを望んでいるとしながらも、ペイン外相との共同声明では、決断を残念なものとし、失望の意を表しました。そして、IWCへの復帰へ向けて働きかけるという考えを示しました。しかし、一方で、商業捕鯨にも調査捕鯨にも反対していく方針を示しました。

グリーン党は声明を発表し、政府に日本の捕鯨プログラムに対しもっと圧力をかけることを呼びかけました。
元グリーン党党首で且つ環境保護団体シー・シェパード元代表のボブ・ブラウン氏は、オーストラリア与野党共に大きな役割があると述べます。「オーストラリア国民がこの事に対して行動をとって欲しいということは全ての世論調査でも明らかです。スコット・モリソン氏、ビル・ショートン氏、オーストラリア国民にどうするのか言って下さい。」とブラウン氏は述べています。

9月に行なわれたIWCの総会で、日本は鯨の数が増加していることを理由に商業捕鯨再開を提案しましたが、オーストラリアを筆頭とするEUやアメリカなどの反捕鯨国らから否決されました。これを受けて、谷合正明(たにあい・まさあき)農林水産省副大臣はこの様に発言しました。「もし。科学的調査に裏付けられた商業捕鯨が全く否定され、異なった立場や見地が相互理解や敬意を得られる可能性が全くないのであれば、日本は、自身が置かれた立場の根本的な見直しを強いられることになるでしょう。」
   
鯨類資源の保存及び持続的な利用を目的に1948年に設立されたIWCに、日本は3年後に加盟。
設立当時は捕鯨を行っている国が多数を占めていましたが、捕鯨反対の姿勢をとる国々が加盟したり、もともと捕鯨をしていた国々が乱獲反対、鯨の保護を訴える世論などにおされ、次第に捕鯨をやめるなどして、1982年には商業捕鯨の一時停止が決議されました。そして、日本は正式に1988年に商業捕鯨を停止します。一方、1987年に日本は鯨の資源を正確に把握する目的で調査捕鯨を開始しました。

これら日本の捕鯨に対し、オーストラリアの様な捕鯨反対の姿勢をとる国々やシーシェパードなどの反捕鯨団体は強く反発し、2014年、従来の調査捕鯨の中止が国際司法裁判所から命じられました。これを受けて日本は調査方法の見直しや捕獲量の大幅な削減を行い、2015年から調査捕鯨を再開。しかし、科学的な目的とされる日本の調査捕鯨も国際的な非難を浴び続けています。

来年1月1日までに脱退の意向を通告すれば、6月30日に脱退出来るとされていることから、日本政府は12月25日に閣議で決定し、26日にIWCからの脱退を正式に発表しました。そして、7月からの領海や排他的経済水域(EEZ)での商業捕鯨再開に向け、国内外での調整に当たる模様です。

国内の反応としては、商業捕鯨の再開に肯定的な姿勢を示す政党も多い中、鯨の保全と捕鯨に関する新たな組織作りを奨励する声も上がっています。また、30年間の中断を余儀なくされていた商業捕鯨関係者や伝統的な捕鯨団体などからは、今回の決定は歓迎されています。しかし、一方、これからの国際的な非難を懸念する声もあります。

1960年代にピークを迎えた捕鯨産業は現在6業者のみが操業しているにすぎません。、ピーク時には年間20万トン以上もあった消費量も、ここ数年は、調査捕鯨や輸入による鯨肉の消費量として年間3千~5、6千トンほどに留まっています。

政府は来年度予算案に捕鯨対策として51億円を計上しました。IWC脱退の決定を受け水産庁は、調査捕鯨の拠点である山口県下関市で沖合操業を復活させ、全国6カ所でミンククジラなどの沿岸捕鯨を構想しするなど手厚い支援を続けていますが、51億円予算を使っての捕鯨産業は決して自立した産業とは言えないのではないでしょうか。

昨日正式なIWC脱退を表明した日本。今後の鯨資源の保護や持続可能な商業捕鯨における日本の姿勢に、世界の注目が集まっています。

 

日本語版:Evan Young (英文部分)・野別まゆみ

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