Key Points
- オーストラリアのロマンス詐欺による被害総額は昨年、2300万オーストラリアドルを超えました。詐欺の手口は一段と巧妙になっています。
- 誰もが被害者になり得ますが、特に狙われやすいのは、高齢者、未亡人、離婚経験者、先住民、障害者です。
- 詐欺師たちは速いペースで信頼を築き、感情を操りながら、金銭や個人情報を求めてきます
- 直接会えない、秘密主義、金銭の要求などの危険信号を知ることで、自分や自分の大切な人を守れます。
自分はロマンス詐欺には引っかからない、と思っていませんか。詐欺の手口は一段と巧妙になり、交際相手を探している人すべてが、詐欺の被害者になる恐れがあります。
詐欺に狙われやすいのは高齢者、未亡人、離婚経験者、移民、先住民、障害者ですが、誰もが被害者になり得ます。
「彼らは通常、精神的に孤立している人、経済的に安定している人またはオンライン・デートの経験が浅い人を狙います。とはいえ、若者を含めて、誰しもが被害者になり得ます。なぜなら、詐欺師たちは通常、個人それぞれの経歴やオンライン上での活動を基に、詐欺のアプローチを調整しているからです」。

Knowing the red flags (inability to meet in person, secrecy, and requests for money) can help protect you and your loved ones. Source: iStockphoto / SPmemory/Getty Images/iStockphoto
ロマンス詐欺の手口とは?
ロマンス詐欺は、詐欺師たちがオンライン上で偽の人物を作り出し、被害者と交際しているようかのように見せかけて騙す行為などを指します。詐欺の目的は、被害者の信用を悪用して、金銭や個人情報を盗み出すことです。
「ネットでいわゆる理想の相手を見つけ、その関係はあっという間に発展します。出会い系アプリではなくメッセージング・プラットフォームで話そうと誘われ、そこで親密な会話が始まります。詐欺師はそこからあなたが大切にしている価値観、好きなもの、嫌いなものを見つける。交際は非常に速いペースで進み、やがて、緊急事態が起こったとして、金銭的な援助を求め始めるのです」。
ロマンス詐欺での交際は速いペースで進むことがありますが、詐欺師の多くはあせらず、時間をかけて事を進めています。
「多くの場合、感情面で信頼できるつながりを確立することに、詐欺師たちは非常に長い時間をかけて投資します。被害者が交際関係を非常にリアルなものだと感じられるようになったときに、詐欺を実行に移すのです」。

Love bombing: is when the scammer professes love early on and floods you with messages and calls. Source: iStockphoto / Frank Brennan/Getty Images
ロマンス詐欺を示す危険信号
- 過剰な愛情表現(ラブ・ボミング、Love bombing): 早い段階で愛を宣言し、メッセージや電話で何度も連絡してくる。
- プラットフォームの素早い移動: 会話の場所を出会い系アプリやソーシャルメディアからWhatsAppなどの暗号化されたメッセージング・プラットフォームへと移すよう主張します。これによって追跡が難しくなります
- 秘密主義: 身近な人には分かってもらえないと主張し、交際を身近な人に教えることを思いとどまらせる。
- 対面で直接会うことを避ける: 海外での仕事や家族の緊急事態などを理由に、対面で会えない言い訳をよくする。
- 金銭の要求: 緊急な医療費や旅行費への経済的支援を求める。暗号通貨などを用いた投資話を持ちかける(investment opportunities, often involving cryptocurrency)。
ロマンス詐欺から身を守るには
- オンライン上で会った人に、個人情報やパスワード、経済的な情報を教えない。
- 親密な関係にあることを示す写真や動画を送らない。詐欺師たちがそれを使ってあなたを脅迫するかもしれません。
- オンライン上でしか知らない人に金銭を送らない。彼らが提案する投資話(investments)に応じない。
- AIで生成された画像や動画が詐欺に用いられていることを知る。ビデオ通話だけでは身元を確認できません。

Dr Ritesh Chugh, associate professor and socio-tech expert from Central Queensland University.
ロマンス詐欺の被害に遭ったら
被害に遭った可能性があったらすること:
- 銀行に直ちに連絡し、自分の口座の取引を止め口座を守る。
- さらなる被害を防ぐために、オンラインで使っているパスワードを変える。
- IDCARE に連絡してサポートを受ける
- 詐欺をScam Watch (National Anti-Scam Centre)に報告する。
「これまでのことから、詐欺師は信頼と感情を食い物にし、非常に熟練したスキルで人の心を操れることがわかります。被害に遭ったことで羞恥心や恥ずかしさを感じるのは自然なことですが、詐欺を通報することで、他の人が同じ罠にはまることを防げます。被害者が支援に値することは間違いありません。信頼できる人に相談し、家族や友人、あるいは専門のカウンセリング・サービスを利用してください。そして、通報してください。詐欺を通報することで、あなたは自分の主導権を取り戻し、詐欺との闘いに貢献できるのです」(リテシュ・チューグ博士)。
ロマンス詐欺の被害に遭ったら、あなただけではないことを知ってください。オーストラリア内外で数百万人が被害に遭っています。あなたのせいではないのです。詐欺師との連絡や関係を絶ち、通報してくださいリテシュ・チューグ博士

Romance scams cost Australians over $23 million last year, with scammers using increasingly sophisticated tactics to deceive victims. Source: Moment RF / sarayut Thaneerat/Getty Images
被害者をどうサポートするか
自分の身近な人が被害に遭っていると思った場合(a loved one is being scammed)、根気強く、優しく、繊細に、しかしきっぱりと対応しましょう。彼らが犯罪の被害者であることを心に留めておきます。
「詐欺師たちとの連絡をすべて絶つよう働きかけ、詐欺を通報する手助けをしてください。(被害者の)資産やオンラインアカウントを守る作業を手伝いつつ、感情面でのサポートも行います。被害者は事実を受け入れられなかったり、深い悲しみを感じたりします。そのためここでは忍耐を持つことがとても大切です」(チューグ博士)。
それでも対応が難しい場合は、ほかの友人や家族からの助けを借ります。
カイリー・デニス氏は、母親がロマンス詐欺の被害から抜け出す手助けをし、その経験をきっかけに、ロマンス詐欺の調査に特化したサービス、Two Face Investigationsを立ち上げました。母親からもらった交際相手の男性の写真をインターネットで検索した結果、写真が別人であることが分かりました。
「私の母親は半年間ネットでデートしていました。私は母と週に2、3回は話をしていましたが、母が私にネットでデートしていると話すことはありませんでした。詐欺師が、娘は理解しないだろうから交際を伝えないようにと母を操っていたからです…オンラインデーティングが悪いわけではありません。オンラインで理想の相手を見つけてください。ただ、相手にお金は送らないようにしてください」(デニス氏)。
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