山火事のあとに必要な復興のステップ

Australia Explained: Bushfire Recovery

A resident walks away from her flood-damaged house in the bushfire-affected town of Cooma on January 5, 2020. Source: AFP / SAEED KHAN/AFP

オーストラリアは、暑く乾燥した気候と独特な自然環境のため、世界でも特に山火事が起きやすい国のひとつです。気候変動の影響で、気温はさらに上がり、乾燥も進むとみられていて、 これからは山火事がより頻繁に、そして激しくなると考えられています。もし山火事の被害に遭ったら、どのように生活を立て直していけばよいのでしょうか。


Key Points
  • 自宅に戻るのは、当局が「安全」と判断してからにしてください。 戻ったあとは、火の粉が残っていないかを確認するなど、十分な注意が必要です。
  • 被災後は、復興支援センターのほか、金銭的な支援や心のケアのための相談サービスも利用できます。 こうした支援を活用することで、山火事による生活面や精神面への影響に向き合うことができます。
  • 山火事からの復興には時間がかかります。 地域の人たちの支えを頼りながら、自分自身の心と体を大切にすることがとても重要です。

    山火事の被害から立ち直るまでの道のりは、気持ちの面でも大きな負担に感じられるかもしれません。

    それでも、支援はあります。

    自宅へ安全に戻るための注意点や、心身のサポートなど、山火事のあとに知っておきたい大切なポイントをご紹介します。

    山火事後、自宅にいつ戻れる?

    オーストラリアでは、山火事に備えた行動計画を立てることの大切さが、日頃から呼びかけられています。では、火が収まったあとには、何に気をつければよいのでしょうか。

    避難していた場合は、州緊急サービス(SES)から安全だという案内が出るまで、自宅に戻らないようにしてください。

    早く戻ってしまうと、倒壊のおそれがある建物や、垂れ下がった電線、まだ熱が残っているエリアなど、思わぬ危険にさらされるおそれがあります。

    Metropolitan Fire Service Firefighters in the front of the fire site house.
    Metropolitan Fire Service Firefighters in the front of the fire site house. Credit: mastersky/Getty Images

    被害を受けた自宅に戻る際の注意点

    帰宅が許可されたら、まずは非常時に必要なものを持参しましょう。保存のきく食料や飲料水、現金、懐中電灯、予備の電池などがあると安心です。

    建物がまだ残っている場合でも、中に入る前に、目に見える構造的な損傷がないかを確認してください。火災の影響を受けた建物に入る際は、防じんマスクや手袋、長袖の服、丈夫な靴を着用しましょう。可能であれば、最初は子どもやペットを近づけないようにしてください。

    また、火の粉やくすぶっている燃えかすが残っていないか、注意深く確認することが大切です。こうした火種は、主な火災が収まったあとでも、数日たってから再び燃え出すことがあります。

    ニューサウスウェールズ州ナナ・グレンで、地方消防隊(Rural Fire Service)の副隊長を務めるシャリフ・ベイティーさんは、こうしたケースを何度も目にしてきたといいます。

    オーストラリア全土では、ベイティーさんのように10万人以上のボランティア消防士が、地域への啓発活動や消火活動、復旧支援にあたっています。

    彼自身が初めて大規模な山火事を経験したのは、2019年でした。

    「火災のあと、約2週間にわたって出動が続きました。多くは、熱をまだ持っていた丸太が原因でした。」

    「火災から7日から8日ほど経っていても、強い風が吹くと再び火がつくのです。くすぶっている火の粉や、まだ熱をもっている場所があると、家の近くでは特に、再び火事が起きる危険があります。」

    山火事後に利用できる支援は?

    山火事時には、緊急避難所やリリーフセンターが設けられ、当面の安全と支援が提供されます。

    こうした施設では、寝泊まりできる場所のほか、食料や飲料水、携帯電話などの充電設備が用意されることが一般的です。

    また、心のケアに配慮したカウンセラーや、必要な支援につなぐ相談窓口が設置される場合もあります。

    州ごとの支援サービスも、今後の手続きや生活再建をサポートしています。ビクトリア州の「 Emergency Recovery Victoria」、ニューサウスウェールズ州の「Service NSW 」、クイーンズランド州の「Recovery Hotline」などがその例です。

    状況に応じて、政府による災害支援金などの経済的な支援が受けられる場合もあります。

    保険に加入している場合は、物を動かしたり片付けたりする前に、被害の記録を残すことが重要です。写真や動画を撮影し、失ったものを文章で書き留めておきましょう。

    保険会社によっては、仮住まいなど、生活に欠かせない費用について、迅速に支払いを行うケースもあります。

    Australia Explained: Bushfire Recovery
    Aerial view of the Australian bush fire destruction with a burnt home & property. Bell NSW 2020 bush fires - Blue Mountains Credit: mikulas1/Getty Images

    山火事の煙による健康への影響

    山火事の煙は、火災現場の近くだけでなく、離れた地域に住む人にも影響を及ぼし、空気の質や健康、日常生活に大きな影響を与えます。特に、心臓や呼吸器の病気を抱えている人は、影響を受けやすいとされています。

    救急医で、公衆衛生および災害医療の専門家でもあるライ・ヘン・フーン医師は、煙の影響は、目に見える煙が消えたあとも長く続く可能性があると指摘します。

    「ブラック・サマーの山火事でも見られたように、煙に長期間さらされることで、胎児の発育に影響が出ることがあります。また、心臓病や認知症、がん、脳卒中、糖尿病のリスクを高めるほか、メンタルヘルスの悪化にもつながります。」

    山火事後の、心のケア

    山火事などの災害が繰り返し起こることで、心への影響は大きくなります。気候変動により、山火事の発生回数や規模が今後さらに増すと考えられており、その影響は深刻です。

    「気候変動によって災害がより頻繁に、そして深刻になることで、同じ経験が何度も繰り返されます。そのたびに過去の体験がよみがえり、不安やうつのリスクが高まり、心的外傷後ストレス障害、いわゆるPTSDの症状が出やすくなります。」(フーン医師)

    心のケアに関する支援は、リカバリーセンターのほか、GP、また、ライフラインやビヨンド・ブルーなど、24時間対応の相談窓口でも受けることができます。

    Australia Explained: Bushfire Recovery
    A house belonging to Allan Lehepuu in the mountains near Michelago that was destroyed by bush fires, New South Wales, Australia. Allan is a volunteer fire fighted and went to help fight the fire at the bottom of the mountain. The fire spread rapidly and destroyed Allans and other houses in the area. Credit: Ashley Cooper/Getty Images

    災害後、親にできる子どもや若者への支え方

    災害のあと、子どもや若者への支援は欠かせませんが、親や保護者自身の心身の状態も、子どもたちが困難をどう乗り越えるかを大きく左右します。

    オーストラリア赤十字の、復旧・緊急支援部のナショナルマネージャー、エリン・ペリーさんは、災害後の子育てには、特有の難しさがあると話します。

    「災害のあとの子育ては、本当に大変です。考えなければならないことがたくさんあります。子どもたち全員が、災害に対して似たような感情や不安を持つこともあれば、それぞれさまざまな反応を示すこともあります。それはごく自然なことです。家族全員がつらい経験をしてきたからこそ、子どもを安心させ、寄り添い、あたたかく支えることが何より重要です。お子さんを最も理解しているのは保護者です。」

    もし、子どもの行動に気になる変化が見られた場合は、早めにGPや相談窓口に相談してください。キッズ・ヘルプラインでは、5歳から25歳までの子どもや若者を対象に、電話やオンラインでの秘密厳守のカウンセリングを提供しています。

    山火事の復旧を支える「地域の力」

    山火事からの回復のペースは人によって異なり、想像以上に時間がかかる場合もあります。

    オーストラリア赤十字のエリン・ペリーさんは、回復に向かう中で、小さな「ほっとできる時間」を意識的につくることが大切だと話します。

    たとえば、お茶を一杯いれること、家族と散歩に出かけること、近所の人とピクニックを開くことなど、ささやかなことで構いません。

    また、もし周囲を支える余裕があるなら、そばで寄り添うだけでも十分です。

    「誰かが自分を気にかけてくれていると感じること、自分の経験に耳を傾けてくれる人がいること、そして起きた出来事を受け止める手助けをしてくれることは、とても重要です。物やお金、時間を提供することだけが支援ではありません。相手の話に心を込めて耳を傾けることが、大きな支えになります。」

    山火事からの回復には時間がかかりますが、安全の確保や住まいの再建、心身の健康を支えるための支援が用意されています。

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